研究例会活動記録

■2003年11月~
※ドクター敬称略
第155回 第155回研究例会報告
日時:2024年(令和6年)9月1日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
招待講演Ⅰ
座長:阪本貴司先生
演者:大阪大学大学院歯学研究科 クラウンブリッジ補綴学・顎口腔機能学講座 教授
西村正宏先生
演題:歯科インプラント治療にまつわる未知なる領域
 招待講演Ⅰには,大阪大学大学院歯学研究科 クラウンブリッジ補綴学・顎口腔機能学講座の教授西村正宏先生をお招きし,「歯科インプラント治療にまつわる未知なる領域」と題して講演頂きました.
 西村先生は,九州歯科大学を卒業された後,様々な大学にて研究・教育・臨床に携わられました.そのキャリアを通して,一貫して骨再生とインプラントについての研究をされてきました.
今回は,先生が関わって来られた研究のうち臨床に関連する,1)顎骨再生について,2)インプラントと上部構造の連結について,3)インプラント治療が口腔機能に与える影響について,の3つのテーマについて講演されました.
 顎骨再生については,先生が卒業直後から研究に取り組まれた課題の一つです.骨補填材料は,人工骨材料の開発が進んでおり,広範囲の骨増生に必要な高い骨誘導能を持つ材料の開発が求められています.顎骨増生の重要点について,①材料の溶解性・吸収性の理解,②成長因子の原理の理解,③細胞移植と血液濃縮液の効果の理解,の三つに分け,それぞれについて具体的に述べられました.現在インプラント治療におけるGBRについて厚労省認可が取れているサイトランスやボナークなどの材料についても詳しく説明頂きました.
 インプラント体と上部構造の連結については,上部構造装着後の予後を左右する重要な部分です.
 これについては,様々な角度から検討が加えられていますが,先生は,①ボーンレベルとティッシュレベルのインプラントの比較,②ボーンレベルインプラントの各社連結部分の形状比較,③中間アバットメントの利点欠点とその詳細について説明されました.中間アバットメントの有用性については,複数連結症例において提唱されているにもかかわらず,各社の製品比較にまで踏み込んで詳細にご教授頂ける機会は少なく,非常に分かりやすく説明頂きました.
 最後のインプラント治療が口腔機能に与える影響については,インプラント治療は,時機能の維持・回復に大きな効果を発揮する事は周知のことです.しかし,固定性のインプラント補綴治療が,可撤性義歯治療と比較して,口腔機能の維持にどれだけ寄与するのか,明確なエビデンスは見当たりません.今回の講演では,先生が多施設臨床研究を行った結果を供覧いただきました.その結果,固定性インプラント補綴は可撤性義歯に比べて口腔機能低下症の有病率が有意に低く,QOLの観点からも有意に自覚症状が少ないということを示唆されました.
 今回,様々な話題についてご教授頂きましたが,西村先生は一貫してご自身の豊富な臨床や研究のもとにご講演くださり,会員からも多くの質問もあり,非常に実りのある講演となりました。

招待講演Ⅱ
座長:阪本貴司先生
演者:総合インプラント研究センター施設長
植松厚夫先生
演題:デジタル技術からみた歯科・インプラント治療の現在と未来
 招待講演Ⅱには,総合インプラント研究センター施設長の植松厚夫先生にお越しいただき,「デジタル技術からみた歯科・インプラント治療の現在と未来」をテーマに講演頂きました. 植松先生は2008年にシンガポールの歯科医師免許も取得されていらっしゃいます.日本は,シンガポールや他の海外諸国に比べて,同じディバイスでも出来ることが限られており,シンガポールのようデジタル化が進んでいません.植松先生は,シンガポールで経験された新しいデジタル歯科の機器や考え方を何度も講演されてきました.
 講演の初めには,光学印象の利点やどういったIOSが診療に使いやすいのか説明されました.光学印象は従来の印象と違い,石膏や印象剤を使用せず廃棄物が出ないという利点があります.しかし,様々なIOSが販売されていている中,まだまだ高額だという欠点もあります.各社のIOSには,それぞれ得意とする分野があり,多くのIOSの中で自分の診療にあったIOSを選ぶ事が重要です.光学印象しやすい形成方法や形成のポイントなども解説して頂けました.Drが使用するだけではなくDHがプラークを染め出しした口腔内をスキャニングして患者指導に使用する方法がある.しかし,色合いは従来の写真の方が良い面があると,IOSにはマイナス面もあります.
 後半はIOSとCBCTと3Dプリンターを利用した複合的な診断方法について話されました.補綴物作製のために顎骨の基準点を可視化した咬合再構成の治療計画の立て方です.従来のフェイスボートランスファーや調節性咬合器を使用しても患者固有の生理的な顎運動を再現することは出来ません.IOSとCBCTを重ね合わせる事で患者固有の顎運動にあった咬合再構成が可能になることについて症例を供覧しながら説明されました.安全なインプラント治療のためには軟組織のある顎模型と顎骨のみの模型を3Dプリンターで作成され,IOSとCBCTで作成したガイドシステムで,実際の埋入手術の前に,模型にドリリングを行い確認されているそうです.講演前に演題を聞いたときは,CAD/CAMインレーの光学印象が保険適用となり非常に興味深い話題と思いました.実際に講演が始まると,IOSだけの話ではなく,これから先もディバイスの使い方や新しい機器によって出来ることが無限に増えていくと思えるような講演で,私たち臨床医にとって非常にわかりやすい内容でした.

 西村正宏先生と植松厚夫先生の両講演とも,質問も多く活発なディスカッションが出来ました.講演後の懇談会にもご参加いただき,朝早くからの例会での熱い議論で乾いた喉を潤すことが出来ました.会場参集での生の意見交換を信条とする,例会を開催することができました.




155回例会後の意見交換会 大阪国際会議場12階特別会議室前ホワイエにて

第154回 第154回研究会報告
日時:2024年(令和6年)5月26日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
招待講演
座長:阪本貴司先生
演者:九州歯科大学歯学部 口腔再建リハビリテーション学分野教授
細川隆司先生
演題:臨床医が知っておくべきインプラント治療の隠されたリスク
 154回例会には,九州歯科大学歯学部 口腔再建リハビリテーション学分野教授,日本口腔インプラント学会理事長の細川隆司先生をお招きしました.細川先生は,長年に渡り口腔インプラント学の教育,研究,臨床に携わってこられました.本日はその経験から,「臨床医が知っておくべきインプラント治療の隠されたリスク」について,様々な観点からお話をいただきました.
はじめにインプラント体の形状について話されました.現在,多くのインプラントシステムが開発,市販されていますが,開発のコンセプトに違いがあり,これを認識していないと予期せぬトラブルになります.インプラント本体は,無歯顎用に開発されたものと有歯顎用に開発されたものでは,根本的に違いがあります.開発のコンセプトまで理解を深め,そのインプラント体の形状やシステム,そして何よりも埋入ポジションを考慮してプランニングする必要があります.また近年,骨との結合を高めるためインプラントの先端やスレッドの形を工夫しているインプラント体が市場に出回っています.このようなインプラント形状によっては,皮質骨の破壊やインプラント周囲炎を起こした場合の炎症の波及など,使用上の注意が必要な場合があると指摘されました.
 次に、全身状態とインプラントの関係について話されました.特に糖尿病とインプラントの関係については,エビデンスに基づき講演されました.糖尿病は,我々は無条件にインプラントの生存率に悪影響を及ぼすと考えがちです.しかし意外にも,初期固定に時間はかかるものの,インプラントの生存率に差があるというエビデンスは示されていないとのことです.健常者に比ベインプラント周囲組織の歯周病学的臨床パラメータ(辺縁骨レベル,BOP,PPD)に差を認めるとのデータはあるため,注意が必要なことには変わりはありません.その他にも,糖化と骨の脆さの関係性,ビタミンKと骨代謝の関係性などのエビデンスをご提示されました.総じて,インプラントのメンテナンスにおいては,従来のプラークコントロールだけではなく,栄養管理が大きなテーマになりつつあることを提唱いただきました. 3つめのトピックは,インプラントの撤去についてでした.インプラントは極めて長期間機能する可能性が高く,インプラント周囲炎の罹患リスクも加齢とともに増加します.残存歯の状況も考えて,上部構造を再設計・再製作し,咬合関係を再構築する時期が来ます.
 インプラントの安全・確実な撤去と再理入についてもお話しいただきました.詳細な方法論もさることながら,埋入前から,撤去の可能性や,その時の対処法などを患者に明示しておくことの重要性を強調されました.撤去まで見据えた患者カウンセリングは医科では標準であると伺いました.我々も埋入前の患者説明に活かしていかなければいけないと考えさせられました.
 最後に,歯科医療とAIについて最近の動きをご紹介頂きました.日本では,2021 年に政府により閣議決定された骨太の方針 2021 や成長戦路実行計画においても,いわゆる「プログラム医療機器」の開発・実用化を促進する方針が示され,医療における次世代の成長分野として注目されてきています.このデジタルヘルスの中でも特に注目されているのがデジタル医薬(DigitalTherapeutics; DIx)です.我々は,日々の食生活や運動などが健康に寄与するとわかっていても,「行動変容」により病態の改善を図ることは難しいと感じます.歯科分野では,歯科衛生士による様々な口腔衛生指導がこれに当たると思われます.Dixは,人間のカウンセリングなどによる行動変容を,アプリケーションなどの力を借りてエビデンスに基づいて行おうとするもので,欧米では,医薬品のように「処方」されるようになっているとのことです.今回のご講演では,その実例と,実際の先生と企業との共同開発の事例も含め解説されました.
 このように,インプラント治療について,様々な角度から考察いただいた講演でした.参加者も250名を超え,会の盛り上がりを大いに感じることができました.この日は例会後の懇親会も行われ,非常に充実した例会となりました.


250人越えの参加者で大阪国際会議場12階の会議室も満席です。

第153回 第153回研究会報告
日時:2024年(令和6年)2月18日(日)
場所:新梅田研修センター2階 グランドホール
招待講演
座長:勝 喜久先生
演者:朝日大学歯学部 口腔感染医療学講座 歯周病学分野 教授
辰巳順一先生
演題:インプラント周囲疾患の診断・予防・対処法
 2024年最初の例会には,朝日大学歯学部口腔感染医療学講座歯周病学分野 教授 辰巳順一先生をお迎えし,「インプラント周囲疾患の診断・予防・対処法」と題して講演頂きました.
 2017 年に欧州歯周病連合(EFP)と米国歯周病学会(AAP)により定義された歯周疾患についての新しい分類が定義されました.その中において,インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎についても,本疾患が「プラークバイオフィルムによる感染症」であることが明確化されました.インプラント周囲炎をめぐるコンセンサスは、以前に比べ格段に進歩したと言えます.一方,口腔内で機能するインプラントがおかれる環境は複雑で解決すべき問題点はまだ多いと考えられます.今回の講演では,1)インプラント周囲疾患の検査・診断,2)インプラント周囲疾患の予防法,3)インプラント周囲疾患の治療法,4)インプラント患者のメインテナンスについてお話いただきました.
 まずは,インプラント周囲炎の定義を知るうえで,インプラントと天然歯の比較などの基本的な解剖の話から始まり,診断においては,実際に教授が主導して構築された,朝日大学の検査診断システムについても解説頂きました.具体的には,インプラントのプロービング時の注意点,疾患のリスク分析,骨欠損の分類,細菌検査の方法など,様々な事項について詳細に説明いただきました.特筆すべきは,歯周病科のみならず,朝日大学歯学部附属病院全体でこのシステムを採用されていると言うことでした.大病院にて規格を統一して,実際に運用する事は理想ですが,非常に困難なことだろうと想像できます.辰巳教授は強い情熱と,こだわりの姿勢をお持ちで,それらがすばらしいシステム構築の礎となっているのだと思います.一例としては,細菌検査の様々なシステムが国内でも販売されていますが,辰巳先生は,すべての製品を実際に使用して比較されるなど臨床現場に即した研究を進められています.
 インプラント周囲炎の予防に関しては,インプラントの角化粘膜の必要性について,強調されました.角化粘膜の口蓋側からの移植についての手技や注意点を症例を供覧しながら解説されました.治療法に関しては,ご自身が提案されたストラテジーや歯周病学会が提唱する,歯周病患者におけるインプラント治療指針に則り,具体的にご教示頂きました.またキュレットやニッケルチタンブラシ,唾液検査,細菌検査などの製品の特長を具体的な製品名を交えての講義は,これから臨床を始める若手の歯科医にとって非常に役立つ内容でした.インプラント周囲疾患の基礎から臨床まで,幅広く講演頂き貴重な例会となりました.通常よりも多くの歯科衛生士も参加され,有意義な講演会となりました.
教育講演
座長:木村 正先生
演者:杉岡 伸悟先生 神戸市開業
演題:役に立たないとうれしいインプラント手術時の気道管理と緊急対応
 教育講演では,当会役員の杉岡先生にご登壇いただき,インプラント手術時の気道管理と緊急対応について講演いただきました.先生は,長年大学病院の歯科麻酔学講座において准教授として臨床教育に携われたご経験があり,それをもとに大学病院と開業医の両方の視点からのお話を伺える貴重な機会となりました.
インプラント手術時に生じる全身的偶発症には様々な病型がみられます.中でも最も迅速で緊急性の高いものに気道トラブルが挙げられます.気道の完全閉塞をきたした場合,数分間の初動の対応が非常に重要となり,救急車の到着を待っている余裕はありません.その際に必要となる,気道管理の重要性,気道の解剖,困難気道の考え方,インプラント手術における気道の問題点,さらに気道管理の評価・方法や緊急対応について解説頂きました. 臨床においては,予期せぬ痛ましい事故や普段では遭遇しない事故が生じることがあり,そのような事象に遭遇すると取り返しがつきません.我々も,日ごろからこれを意識し,薬剤や機器を準備すること,そしてそれらを使いこなす知識を持たねばなりません.また日々のトレーニングと器材を用意しておけば,対処できることも多いことがわかりました. 基本的な救急救命処置についても,頭部後屈-あご先挙上法による気道閉通,パッグマスク換気,また気道確保については外科的なアプローチ方法の実際についても詳細にお話しいただき,有意義な講演になるとともに,日ごろの備えについて,改めて見直す機会となりました。 2023年度最後の例会となりましたが,今回も興味深い講演でした.参加者も年々増加し盛況となっています.今後も有意義な講演会を準備し,自己研鑽と会員の交流の場を継続出来ればと考えています.



153回例会 質疑は学会に準じて会場のマイクで

第152回 第152回研究会報告
日時:2023年(令和5年)11月5日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
招待講演
座長:小室 暁先生
演者:大阪大学歯学部歯学研究科顎顔面矯正学教室教授
山城 隆先生
演題:矯正歯科治療の現状と未来
 招待講演には、大阪大学歯学部歯学研究科顎顔面矯正学教室教授の山城隆先生をお招きし“矯正歯科治療の現状と未来”と題してご講演いただきました。
現代社会はテクノロジーが急速に進化しており、私たちの生活のあらゆる側面に影響を及ぼしております。矯正治療でも例外ではなく、講演では主に1)アンカレッジデバイス(TADs)、2)3次元解析を使った矯正治療解析、3)アライナー矯正治療について講演されました。
TADsは、チタン製のスクリューを顎骨に埋入し固定元として用いる方法ですが、臨床応用されてからすでに30年近く経過します。その間装置の簡略化や応用範囲の拡大が大いに進んでいるとの事でした。TADsの基本的な考え方をご教授いただいた後、外科的矯正治療でなければ改善が困難であった骨格性の開口症例の治療や、外科的矯正治療の術前術後矯正治療にも用いることができることを実際の症例を供覧し説明されました。このような難易度の高い矯正歯科治療や外科的矯正歯科治療においては、従来のセファログラムなどの二次元レントゲン上の活用から、MDCTやCBCTを用いた3次元解析へと移行しつつあります。3次元解析にて用いるデジタル情報を、情報工学の進歩により外科手術のシミュレーション、また顎間スプリントも3次元プリンターを用いて作成することが可能になります。一方、このような3次元データは非常に膨大なデータであるため、それらを解析に用いる時に、どのようにデータを加工が必要かについても詳しくご説明くださいました。
最後に、このようなデジタル技術を使用した最新の矯正の治療方法であるアライナー矯正の現状について述べられました。アライナー矯正は、急速に広まっている治療法ではありますが、ワイヤーを使用した矯正と比較して、利点欠点を十分に踏まえた上で使用するべきことを強調されました。また、将来像として、デジタル診断技術、加工技術の進歩により、このようなアライナーやワイヤー矯正に使用するブラケットなどをメーカーに頼るだけではなく自分の医院で作成する可能性について、海外の事例も含めご教授いただきました。このほか大学病院で行われている先天性疾患の患者に対する骨延長術の応用についてなど、教室で行われている多くの研究や、臨床例等について多くの内容をご講義いただき、普段我々が耳にすることが少ない矯正学分野についての最新の知見を十分に得ることができる3時間となりました。

教育講演
座長:久保茂正先生
演者:藤本佳之先生
演題:インプラントのための口腔外科の基本
 教育講演は、本会役員の藤本佳之先生に“インプラントための口腔外科の基本”についてご講演いただきました。藤本先生の長年にわたる口腔外科のご経験を踏まえ、口腔外科の基本的な手技と全身疾患への理解についてご教授いただきました。
藤本先生が強調されていたのは、インプラント治療において、高度な外科手技は必要ではあるものの、患者が望んでいるのは、大掛かりで華々しい手術テクニックではなく、安心して楽に治療が受けてられて、きれいな仕上がりになることであると言う事です。そのために安全に治療を進めていくための基本的な外科手技、全身疾患への理解などを丁寧に説明されました。全身疾患の知識、切開、剥離、縫合などの基本的な外科的ステップのポイントを的確に、開業医目線に立った、明日から役立つ知識として具体的に述べられました。改めて知識を整理することが出来ました。外科手術の上手な先生の共通点は、手術の流れに無駄がなく淀みがない、早くて綺麗、トラブル遭遇時に即時に方向転換する、そのため術後のトラブルが少なく対応も速いことを強調されました。我々もこの言葉を胸に、日々の外科技術の研鑽に努めたいと思います。

本日も、両先生から興味深い講演が行われましたが、今回も対面で多くの会員が出席し、交流を深めることができました。今年の例会はこれにて終了となりますが、2024年も引き続き対面にて活発な研修、交流ができることを切に祈っています。



山城 隆教授に講演頂きました。


大阪国際会議場は満席です。

第151回 第151回研究会会報告
日時:2023(令和5)年9月10日(日)
場所:大阪国際会議場12階特別会議室
依頼講演Ⅰ
座長:山野総一郎先生
演者:鈇田 豊和先生 題名:サイナスリフト後に生じるトラブルシューティング
 会員の鈇田先生からは、”サイナスリフト後に生じるトラブルシューティング“と題して講演頂きました。自身で行っているサイナスリフトの治療方法について、術中の写真など分かりやすく供覧しながら、症例を提示されました。それぞれの症例において、工夫した点、苦労した点などを示され、成功した症例だけではなく、トラブルとなった症例に関しても考察されました。それぞれの症例に対して、会場から多くの質問があり非常に有意義な症例発表となりました。

依頼講演Ⅱ
座長:山野総一郎先生
演者:遠山雅好先生 題名:当院におけるサイナスフロアエレベーションの取り組み
 遠山先生は当会の会員として、“当院におけるサイナスフロアエレベーションの取り組み”と題して講演されました。自身が勤務されている診療所において、サイナスリフトを行うにあたって、特に取り組まれているポイントを2つご提示いただきました。1つは、術前CBCTを利用し、難易度判定を行った上で、必要に応じて3Dプリンターにて模型を作成し、上顎洞内部の立体的な分析を行う試みです。画像診断と組み合わせると、解剖学的な形態などを確認しやすく、より安全な手術の一助となると考えます。2つ目は、骨補填剤に関して、従来のものに加え、CGF、ATBを用いた自己組織による再生療法の使用です。ATBは、抜歯した歯から、骨補填剤を作成する方法です。人工合成の骨補填剤よりも安価であり、また自身の歯牙より作成することから、より安全であることが特徴です。今後の臨床応用が、期待される分野だと思われました。

依頼講演Ⅲ
座長:山野総一郎先生
演者:木村正先生 題名:サイナスリフトの術後管理におけるセファロ画像の有用性について
 木村正先生は当会の会員であるとともに、セミナーの講師も兼ねておられますが、今回は“サイナスリフトの術後管理における、CBCT検査とセファロ画像検査の有用性について”講演されました。サイナスリフト検査では、一般的にCT画像により分析及び術後の診断を行います。しかし、CT画像は、3次元構造を把握できるが、湾曲部の画像が不明瞭になります。そこで、今回、輪郭描写に優れるセファロ画像を組み合わせることにより、より低線量で、確実な画像診断に役立つのではないかと思われました。CT画像とセファロ画像のそれぞれの特徴と優れている点、劣っている点を分かりやすく、症例を供覧しながら解説されました。インプラント治療における術前の画像診断の重要性を改めて知る講演でした。

招待講演Ⅰ
座長:久保茂正先生
演者:菅井敏郎先生 東京都開業
題名:サイナスフロアエレベーション究極ガイド
-サイナスフロアエレベーションをより安全で確実に行うための難易度分類と手術手技-
 菅井敏郎先生が当研究会で講演されるのは4回目となります。第1回は30年前になり、日本では最先端であったサイナスフロアエレベーション手術を、我々が知るきっかけになりました。30年間にわたり、サイナスフロアエレベーションの臨床に取り組まれた、まさに先駆者的な先生です。先生が本年出版された、サイナスフロアエレベーションアルティメットガイドに基づき、本日は、“サイナスフロアエレベーションを行うための難易度分類と、分類に基づく手術手技について”ご講演いただきました。 難易度分類は、ST分類と呼ばれ、菅井先生が自身の長年の経験と研究から提案され、日本口腔インプラント学会雑誌にも掲載されています。上顎洞のCT画像を、①上顎洞側方面観、②洞底部の角度、③洞底から内側角の形態・陥凹、骨窓を設ける部位の骨壁の厚み、④隔壁の有無、⑤骨窓を設ける部位の血管、で分析します。我々臨床家にとって取り入れやすい分類で、講演では症例を供覧しながら、それぞれの診断項目のポイントについて解説されました。そして臨床に取り入れる際に必要な、解剖学、CT分析、トラブルシューティングについても詳細にご教示いただきました。 これからサイナスフロアエレベーションを始める先生方にとっては、基本を勉強する非常にいい機会となりました。

招待講演Ⅱ
座長:久保茂正先生
演者:草野 薫先生
大阪歯科大学歯学部 口腔インプラント学講座 教授
題名:インプラント治療に用いる既承認骨補填材を考える
 草野 薫先生からは、“インプラント治療に用いる既承認骨補填材を考える”をテーマに講演頂きました。先生は長年、骨移植に用いられる骨補填材について、人工合成材料の開発と、薬事承認について尽力されてこられました。これまで骨補填材は、β-TCP、HA、牛骨由来HAなどが適応外使用として使用されてきました。しかし近年、インプラント治療に使用可能な骨補填材として、炭酸アパタイトや、OCP/コラーゲンが薬事承認されるようになり、骨造成手術が行いやすい環境が整備されてきています。また、GBR用の吸収性メンブレンも薬事承認されました。草野先生は、現在日本で使用されている骨補填材について、整理されるとともに、認可された骨補填材、吸収性メンブレンについて、実際の臨床術式を供覧しながら、その経過をご教授くださいました。各補填材の特徴や扱いやすさなどを、具体的に示され、これから導入しようと考えている先生方には、非常に参考になりました。

今回は、サイナスリフト手術をテーマに、朝から夕刻まで1日の例会でした。サイナスリフト手術は、以前から一部の先生の下では施行されていましたが、実際に臨床広く行われるようになったのは、まだ10年ぐらい前です。広まったと言っても、サイナスリフト手術を実際に臨床に取り入れている歯科医は、いまだ少ないのが現状です。そういう意味でも、本日の例会は、これから導入しようと考えている先生にとっては、教育的な観点からも有意義な一日であったと思います。耳鼻科医ではできない、歯科医にしか担えないこの素晴らしい治療手技を後世に伝えたいと思います。
参加した会員からは、今日は勉強になった!楽しかった!などの声が多くありました。例会後の情報交換会も含め、活発な議論がなされました。


第151回例会 大阪国際会議場12F特別会議室にて


第150回 第150回研究会会報告
日時:2023(令和5)年6月25日(日)
場所:大阪国際会議場12階特別会議室
招待講演
座長:大阪市開業 阪本貴司先生
演者:岡山大学学術研究院 医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野 教授
   窪木拓男先生 演題:第一部 「ライフステージに合わせた口腔インプラント治療の考え方」
   第二部 「顎関節症の既往がある患者において咬合位を変化させる場合の考え方」
 150回研究会例会には、岡山大学学術研究院 医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野 教授 窪木拓男先生をお迎えし、ご専門分野から2部に分けてご講演をいただきました。
 第一部では、「ライフステージに合わせた口腔インプラント治療の考え方」として、ご講演いただきました。日本は、超高齢社会に突入しており、我々が行う口腔インプラント治療も、その場での治療の成功のみならず、人生の長期にわたって患者に満足を与えるものでなければならなくなってきています。今回の講演では、患者のライフステージを介護予防・虚弱予防・認知症予防期、要介護・要支援(前期)、要介護・要支援(後期)、の3つに分け、それぞれのステージでのインプラント、補綴治療のあり方と目標について詳しく述べていただきました。
 要介護・要支援になる前の時期では、補綴歯科治療の主眼は、口腔関連QOLの向上はもとより、介護予防、フレイル予防、認知症予防であり、歯列欠損の修復治療による口腔機能の維持は、多様な植物や栄養素を摂取すると言うことに重点が置かれることとなります。つまり、これまで我々が外来治療で行ってきた、「よく噛めるようにする」治療となります。一方、要支援および要介護者においては、欠損の修復処置に加え、口腔機能訓練としての摂食嚥下リハビリテーションが重要な意味を持つこととなります。この局面での補綴、インプラント治療のあり方については、日々の外来診療においては気づかない観点も多く、具体的な対応例を提示された今回の講演は非常に学びとなりました。ライフステージの変化に備え、インプラント治療においても、補綴設計を変更できるように、あらかじめ補綴物を製作しておく事は、近年言われていることです。しかし、我々の最善と思う設計変更を、家族の意見や、経済的な理由から必ずしも受け入れていただけるケースばかりではないという事です。また、本人や家族の死生観にまで踏み込み治療に対する意思確認が必要だと言うことを、述べられました。我々は、患者の死生観にまで寄り添うことにまだ慣れてはおりません。ですので、岡山大学を主幹として、死生観や地域包括ケアモデルを導入した、医科歯科連携教育改革プログラムには驚かされました。窪木先生も積極的に推進されているそうです。ただ大阪のような大きな都市では、より複雑で難しいとも言われました。インプラント治療を、とかく治療技術などの観点から捉えがちな我々歯科医師ですが、また違った観点から重要な示唆をいただいた時間となりました。

 第二部では、「顎関節症の既往がある患者において咬合位を変化させる場合の考え方」、として、現在の顎関節症の診断と治療に対する考え方をご教授いただきました。
 窪木先生は、日本顎関節学会の認定医・指導医でおられ、一貫して顎関節の研究をされております。
 今回の講演では、“米国歯科研究学会(AADR)によるTMD基本声明に対する日本補綴歯科学会の基本姿勢”、に基づいて話されました。まず、これまでの顎関節治療の考え方をまとめられました。その上で、従来の治療との違いは、現在は基本的に咬合再構成等の非可逆的治療よりも、保存療法を優先させることです。
 次に、下顎位の変化を与える必要がある際の考え方について、現在の知識をまとめて紹介いただきました。インプラント治療に限らず、矯正治療も含め、我々が一口腔単位で治療を行う場合、症状が消退した患者に対して、治療にどの程度まで対処していくのか悩むことがあります。今回のご講演では、治療して良いケースと悪いケースの判別についてもお話しいただけ、大変参考になりました。
 インプラント治療についてのライフステージを考慮した考え方は数十年前にはなかった考え方です。また顎関節症治療については、方針が変化し続けていることをご教授いただきました。継続学習の重要性を改めて感じました。
 本例会は、新型コロナウィルスの扱いが五類に変更されて初めての例会とあり、いつもにも増して参加者が多く、質問時、休息時も含め活発な議論が行われました。
 終了後の情報交換会も、感染対策の特別な制限なく行われ、窪木教授のお人柄もあり、誠になごやかな会となりました。当会には、岡山大学の出身者も多数所属しており、窪木先生を囲んで、さながら、岡山大学のミニ同窓会のようなものも開かれました。改めて人が出会い、交流することの大切さをかみしめることができた1日となりました。


アフターコロナの例会、大阪国際会議場も満席です。

第149回 第149回研究例会報告
日時:令和5年2月19日(日)
場所:大阪国際会議場12階1202会議室
招待講演
座長:大阪市開業 阪本 貴司先生
演者:長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科歯学系 口腔インプラント学分野教授 澤瀬 隆先生
演題:オッセオインテグレーションについてあらためて考えてみませんか?
 招待講演には長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科歯学系 口腔インプラント学分野教授の澤瀬 隆先生をお招きして,“オッセオインテグレーションについてあらためて考えてみませんか?”と題して講演して頂きました.
 澤瀬先生は,ご自身の骨質の研究から導き出した,従来のインテグレーションより良好なインテグレーションに有利なインプラントスレッドデザインについてお話して頂きました.
 ブローネマルクがインテグレーションを発見して以来,インプラントのデザインは進化してきました.インプラント周囲の骨が早期にできれば,早く荷重させる事が出来ます.そのためにはフィクスチャーには表面性状特性,化学的特性が重要であることを教えて頂きました.
 口腔内で長期間インプラントが機能すると,Functional LoadingやOver loadingが起ります.これらを早期に評価するには骨質の評価が必要であり,術者の感覚で判断するLekholm&Zarbの分類,CT値で術前評価するMischの分類では不十分で,現在医科では他の評価法がなされていると紹介して頂きました.
 ブローネマルクのオッセオインテグレーションの本来定義されているものは荷重がかかった状態を指します.荷重によるひずみが骨組織の増加と減少を引き起こし,骨組織構造は荷重によって適応変化します.繰り返し加重によって骨形成が促進され,骨梁とコラーゲン繊維の方向変化,骨細胞数の増加が起こります.そのコラーゲンの走行からフィクスチャーのグルーブの角度をデザインされるそうです.埋入後にどのようにして継続的な荷重をかけてより良好な骨質に変化させていくか,今後の研究も興味深々です.
 最後にマージナルボーンロスとインプラントアバットメントデザインについて解説して頂きました.マージナルボーンロスはインプラントとアバットメントの接合部の微小漏洩が原因で生じます.インターナルでコニカルジョイントのデザインのフィクスチャーが,一番微小漏洩が少ないが,ラチェットでネジを締めた後に生じる咬合の低下などの欠点についても解説された.治療前にどのような欠損か,それをどのように治療していくか,それによってフィクスチャーやアバットメントのデザインを選択する必要があります.
 講演後に会場から多くの質問があり,満員の会場も熱気で大いに盛り上がりました.

教育講演
座長:箕面市開業  寺嶋宏曜先
演者:東大阪市開業 飯田 格先生
演題:Look back on implant clinical ~自己臨床を振り返る~
 教育講演では当研究会の理事の飯田 格先生に,“Look back on implant clinical ~自己臨床を振り返る~”という演題で講演して頂きました.御自身の臨床を通じて,経験の少ない先生方が失敗もしくは危険なインプラント治療を行ってしまう事がないように,多くの症例を口腔内写真やエックス線写真を使い,症例に合わせて解説して頂きました.
 日本口腔インプラント学会の専修医や専門医を取得するための資料採取の重要性,症例の選択のポイントから始まり,解剖学的に危険なケース,抜歯即時埋入を成功させるポイント,ソケットシールドテクニックの解説,ラテラル,クレスタルアプローチ,上顎洞炎を併発してしまったケース,そのリカバリーの方法,など様々なケースを供覧させて頂きました.
 聴講されていた先生方にとっても自己臨床を振り返る非常に有意義な時間であったと思います.

会場の大阪国際会議場は満席です。
会場の大阪国際会議場は満席です。

招待講演 澤瀬 隆先生
招待講演 澤瀬 隆先生
第148回 第148回研究例会報告
日時:令和4年11月13日(日)
場所:大阪国際会議場12階特別会議室
会員発表Ⅰ
座長:大阪府開業 勝 喜久先生
演者:東京都小林歯科医院勤務 若杉好彦先生
題名:過度な咬合力に対する当医院での取り組み
    ~歯根破折歯の接着修復延命療法の治療成績、
   ボツリヌス製剤とスプリント併用治療についての考察~
 インプラント治療において、術前後の炎症と力のコントロールの評価を行う事は長期予後に対して重要であり、そのためには、インプラント治療を行う前に抜歯に至った原因を取り除かなければ長期にわたり、口腔内の均衡を保つ事は困難です。発表では、咬合力のコントロールの方法としてのスプリントによるブラキシズムの防止や咬筋ボツリヌス療法について述べられました。また、過度な咬合力などの結果生じることが多い、歯の破折に対する口腔外接着療法について、2016年からの自身の臨床結果についても発表されました。
 自身の積み重ねてきた結果を分かりやすくまとめて提示されると共に、エビデンスに基づいた考察も追加され、非常にまとまった発表でした。
会員発表Ⅱ
座長:大阪府開業 勝 喜久先生
演者:大阪市小室歯科勤務 藤田勝弘先生
題名:患者に優しい低侵襲なGBR を目指して
 インプラントを埋入する部位に骨の欠損が存在する場合、自家骨や人工骨を填入し、骨造成術(GBR)を併用します。古くから用いられているGBRですが、患者にとっては出来るだけ負担が少なく、そして安全な材料を選択する必要があります。発表では、厚生労働省の認可を受けた材料や適応外材料などの各種補填剤を自身の症例と共に比較検討されました。患者にとって負担なく、短期間でインプラントの処置が終了する様、1)創面を閉鎖創にするのか、開放創にするのか、2)バリアメンブレンの種類、3)骨補填材の種類、の3つのテーマについて分かりやすく考察されました。
会員発表Ⅲ
座長:大阪府開業 勝 喜久先生
演者:兵庫県吉竹歯科医院勤務 中谷貴範先生
演題:質の高いインプラント治療を目指して
 自身の症例を供覧しながら、現在取り組まれている治療方針について発表されました。診査診断を的確に行い、客観的に整合性の取れた治療計画をいかに行うか、現在も研鑽されている内容でした。ます資料採得を行い、問題点を明確化し、原因の追及を行い、治療計画を立案します。患者の年齢も含めた時間軸も考慮して、患者の生涯の中で治療にかかる侵襲と、コストを最小限にし、最大の効果が発揮できるプランニングを考えるようにしている。
 発表の最後には、自身の日本口腔インプラント学会のケースプレゼンテーションで発表された症例について、詳細に治療計画の立案についても話していただきました。
招待講演
座長:宝塚市開業 山野総一郎先生
演者:京都市開業 瀧野裕行先生
演題:天然歯とインプラント“共存時代”の審美的治療戦略
 招待講演には、京都市開業の瀧野裕行先生をお招きし、天然歯とインプラント“共存時代”の審美的治療戦略と題して講演いただきました。
 審美領域におけるインプラント治療では、隣在歯との調和、左右対称性、適正な歯頸ライン、歯肉の豊隆、歯間乳頭の高さ等を自然に再現する必要がありますが、容易なことではありません。“見た目”に対する要求が高い患者も少なくありません。
審美領域のインプラント補綴を、長期的に維持安定するためには、清掃性の良い補綴物の形態の付与や理想的な位置へのインプラント埋入が必要となります。複雑なケースでは、矯正治療や硬軟組織のティッシュマネージメントなどを適切な時期に行い、治療していかなければなりません。それぞれの治療の実際を、先生の豊富な症例を提示いただき考察していただきました。また、上顎の前歯部単独歯欠損のインプラント治療については、抜歯窩の形態や軟組織の状態から4段階に分類して、それぞれの治療法を提示していただきました。
 講演では、審美領域のインプラント治療を中心に、ご自身の開業当初からの苦労話やエピソードなども交えて、ユーモアたっぷりに話して頂きました。完成度の高い治療を維持するためには技術のみならず、スタッフマネージメントや、医院マネージメント等も大切であることを開業医の立場からわかりやすく楽しく話して頂きました。4時間と言う長丁場でしたが、あっという間に時間が過ぎました。

 今回の例会は”インプラント治療の基本と臨床”、と題して午前から夕刻まで1日かけての会員発表と招待講演でした。昼食時間では、神戸市開業の高田光彦先生の“シンギュラリティを見据えて”のランチョンセミナーも好評で、有意義な1日となりました。


大阪国際会議場12階特別会議にて
大阪国際会議場12階特別会議にて

缶ビールで乾杯です
缶ビールで乾杯です
第147回 第147回研究例会報告
日時:4年8月21日(日)
場所:大阪国際会議場12階1202会議室
招待講演
座長:久保茂正先生
演者:昭和大学医学部生理学講座生体制御学部門 教授
   砂川正隆先生
演題:全身を考えたインプラント治療のすすめ
  
 第147回研究会例会には、昭和大学医学部生理学講座教授、砂川正隆先生招をお招きし、「全身を考えたインプラント治療のすすめ」と題して講演頂きました。
 砂川正隆先生は、歯学部出身者では、非常に珍しく医学部の教授です。そのため、歯科のみならず、全身に目を向けて、インプラントにかかわる術後慢性疼痛の予防と治療、およびインプラント治療における、東洋医学を併用した体質改善について講演いただきました。
 インプラントだけでなく、歯科治療後に、明らかな下歯槽神経等の神経損傷がないにもかかわらず、術後疼痛が遷延化・慢性化するケースを経験することがあります。これら慢性疼痛の発生メカニズムについて、急性疼痛は警告信号であり主に末梢性の感作であることが多い反面、慢性痛は中枢性の感作とされています。そのため、慢性疼痛の場合には、中枢に作用する薬剤によるアプローチが必要とされます。また、痛みは、抑制系と促進系のバランスによって、普段は感じることがないが、血流や免疫力の状態など、患者の体質の問題や精神的ストレスにより、促進系が優位となっている場合、疼痛が発現することがあります。そのような状態では、創傷治癒不全、インプラントの定着不良、早期脱落などを招く可能性があるため、体質改善が必要となります。そのような症例では、西洋医学のみならず東洋医学の力を借り、適切な漢方薬等を処方することにより、より成功率を高め、患者の満足度を高めることができると述べられました。東洋医学や漢方薬の効用等は、西洋医学に慣れ親しんだ、我々にはなじみの薄いものではありましたが、一つ一つの薬剤の効用等につき、先生のラットを用いた実験や、その他の文献等によるエビデンスをもとにした講義をいただき、非常に理解度が高まりました。


会場の大阪国際会議場は今日も満席です。
会場の大阪国際会議場は今日も満席です。
教育講演
座長:久保茂正先生
演者:神奈川県開業 椋梨兼彰先生
演題:歯科診療に有効な東洋医学(漢方・鍼灸)について
 教育講演では、「歯科診療に有効な東洋医学(漢方・鍼灸)について」をテーマに、会員の椋梨兼彰先生に漢方を取り入れた治療の取り組みについて講義頂きました。
 大唾液腺の構造や口腔乾燥症の分類、原因について、教科書的なまとめをされた後、椋梨先生が実際に口腔乾燥症に対してご自身の医院で行われている治療ワークフローを話されました。
 口腔乾燥症と診断された後のアプローチに、椋梨先生は唾液腺マッサージなどの基本的な対処以外に、東洋医学を積極的に取り入れ、漢方薬以外に、鍼灸や、レーザーなども組み合わせた、オーダーメイドの口腔乾燥症のアプローチをされています。実際の症例も供覧いただき、その成果も述べられました。
 これら東洋医学を含めた歯科治療の取り組みを、初めから本格的に取り入れるのは、ハードルが高いように思いますが、まずは実践し、試行錯誤を楽しみながら、治療をしていくことを強調しておられました。

 今回の例会は普段聞くことのできない、非常に興味深い内容だけに、通常にも増して、活発に会場からも議論が交わされていたように思いました。会場に参集して、会員同士が議論を交わす事は、本研究例会の醍醐味と思います。まだまだ、新型コロナウィルスの検査陽性者数が高止まりしておりますが、今年度に入り、例会は参集にて行うことができており、参加人数も150人を優に超え、活気ある例会が戻ってきております。今後とも、通常の形態にて例会を開催し続けられることを祈っております。

第146回 第146回例会・特別講演会報告
日時:令和4年6月26日(日)
場所:大阪国際会議場12F 特別会議室
特別講演
座長:大阪市開業 阪本貴司先生
演者:東北大学大学院歯学研究科
   分子・再生歯科補綴学分野 准教授
   山田将博先生
演題:“かたち”と“硬さ”による組織再生の制御
  
 第146回例会・特別講演会に,東北大学歯学研究科准教授,山田将博先生にご登壇いただき、「インプラント治療にまつわる生体材料について、“かたち”と“硬さ”による組織再生の制御」についてご講演いただきました.
 山田先生は、広島大学卒業後,東京医科歯科大学,UCLA,東京歯科大学など,様々な研究室で研究され,現在は東北大学准教授として,ご活躍されています.その間,一貫して,インプラント治療に関わる生体材料についての研究をされてきました.
 今回は,インプラント治療の成功に極めて重要な,骨補填材料についての考察とインプラントの表面性状について講演されました.骨補填材料と表面性状については,どちらも古くから議論されているテーマですが,再生治療の切り口から,最新の知見をお話いただきました.
骨補填材料については,自身の発表された論文などを中心に解説されました.骨補填材料は,生体に吸収されて骨に置換していかなければいけない反面,新しく骨ができるための体積維持も必要です.講演では生体吸収性と体積維持のそれぞれに関与する因子について説明されました.本来,この2つはトレードオフ(両立しない)の関係にあり,理想的な骨修復を行うためには,使用する填材料の生体適合性や生体での吸収率などをよく理解し,使用する目的に応じた体積維持のバランスを適切に取ることが必要です.
 またインプラントの表面形態や表面性状が骨結合に及ぼす影響についても,自身の研究や文献から話されました.骨内に埋入されたインプラント体表面には,骨細胞が伸展して,まるで手を広げるようにインプラントの表面に結合していきます.表面性状がより細かく立体形状であるほど,細胞は伸展する必要がなくなり,形が平面ではなく,より立体の形状になることができるため,より強い骨再生能力を発揮できます.結果的に多くの骨芽細胞が集まり,インプラント表面の電荷,濡れ性,科学的性質なども複合的に関与して,高い骨結効能の高さを発揮することができます.
 講演の最後には,自身の最新の研究から,生態を模倣したチタンナノ表面の開発を紹介されました.これは,骨に直接結合するのでなく歯周組織の再生に成功した,新時代のインプラントとなります.
 先生の一連の研究成果は,東北大学のプレスリリースでも,複数回に分けて紹介されるなど,社会的インパクトも強い研究です.今後の研究の発展に,我々も大いに期待を抱かざるを得ないものとなりました.
 講演後は,コロナ禍で中断していた情報交換会も行われました.山田先生も参加頂き,ビール片手に,講演後の談議を堪能されていました.いよいよ本格的なウイズコロナ時代が始まりました.コロナ禍で何事もWEBでと消極的になっていた世情を打ち切り,当研究会本来の忌憚のない意見交換が戻ってきました.大阪国際会議場の入場制限も撤廃され,150名を超える本来のリアルな研究会の例会,改めて醍醐味を感じる講演会でした.

大阪国際会議場12階特別会議室満席です。
大阪国際会議場12階特別会議室満席です。
久しぶりの意見交換会です。
久しぶりの意見交換会です。
第145回 第145回研究例会報告
日時:令和4年2月27日(日)
場所:大阪国際会議場12F 1202会議室
招待講演
座長:宝塚市開業 山野総一郎先生
演者:九州大学大学院歯学研究科口腔機能修復学講座
   インプラント・義歯補綴学分野 教授
   鮎川保則先生
演題:何を信じてインプラント治療を進めればよいのか
       -エビデンスに騙されないために-
 招待講演には、九州大学大学院歯学研究科口腔機能修復学講座 インプラント・義歯補綴学分野 教授の鮎川保則先生にお越しいただき“何を信じてインプラント治療を進めればよいのか -エビデンスに騙されないために-”と題して講演頂きました。
 Evidence-Based Medicine(EBM)とはご存知の通り、科学的な根拠、特に多数の人間で実際に有効性や安全性を確かめた、質が高いとされる研究の成果(エビデンス)をもとに構築される診療体系です。一般開業医である我々の中でも、EBMが大切である、EBMを軸に治療を行うといった事は、最近特に叫ばれています。このエビデンスは、最もレベルが高いものは、多くの論文を集めて、二元的に解説したメタアナリシスやシステマティックレビューとなります。一方、我々のような専門家の意見(ケースレポートなど)と言うものは、エビデンスが低いとされています。そのため、臨床経験豊富なベテランの歯科医の経験、技術、知識を軽視する傾向があります。鮎川先生の講演では、エビデンスを重視しつつも、臨床歯科医の匠の技や考えをバランスよく取り入れなければいけないと言うことを、具体的な例を提示しながら、わかりやすく説明されました。
 非常に信頼性が高いと思っているレビュー論文でも、筆者の個人的な意見や憶測が混じっていることもあり、調査結果と導かれる結論に整合性がないこともあるため、鵜呑みにしてはいけない。そして実は、エビデンスの低いケースレポートの方が正しい内容が記載されていることがある。最近は、エビデンスの内容を拡大解釈していることが多い。我々がインプラント臨床で、当然と思っていることには実はエビデンスはないことも多い。「インプラント周囲に付着歯肉は必要か?」「インプラント埋入時に初期固定は必要か?」などの例をもとに、根拠となっている論文のエビデンスの質について解説し、見極めるポイントも教えて頂きました。

 講演前に演題を聞いたときは、非常に難しい話題と思いましたが、実際に講演が始まると、鮎川先生のユーモアを交えた語り口とスライドで、会場の雰囲気も柔らかくなり、臨床医にとって非常にわかりやすい内容でした。
日々積み重ねている臨床を通しての経験や感覚を大事にしなければならないことを再確認できました。阪本会長も「日々の臨床における感覚こそが、次の研究テーマの題材になり得る」とよく言われますが、通じるものがあると思いました。
教育講演
座長:東大阪市開業 飯田 格先生
演者:箕面市開業  寺嶋宏曜先生
演題:インプラント周囲軟組織の外科的マネージメントを
   バイオロジーの観点から考える
 教育講演は、会員の寺嶋宏曜先生に、“インプラント周囲軟組織の外科的マネージメントをバイオロジーの観点から考える”をテーマに講演頂きました
 インプラントの長期的な安定には様々な欠かせない要因がありますが、その中で、周囲の組織に焦点を当て、どのようにマネージメントすべきかについて、バイオロジーの観点から解説いただきました。
 まず、論文的考察から、軟組織の長期的な安定を達成する外科的方法として、数十年前からいろいろな方法が考案されているが、フラップ上の血液供給の確保など、本質的に気をつけなければいけない事は共通であることをお話しされました。
 その上で、動画を含め、先生の細かい臨床手技を解説いただきました。近年、商業誌等でよく話題になる、ルートメンブレンテクニック等も、供覧いただいた上で、文献的にも考察いただき、臨床と論文ベースの考察がバランスのとれた素晴らしい発表でした。会場からの質問も多く、活発なディスカッションもでき、有意義な講演会となりました。

145回例会 大阪国際会議場12階会議室
145回例会 大阪国際会議場12階会議室
第144回 第144回研究例会報告
日時:令和3年11月23日(火・祝)
場所:新梅田研修センター 2F グランドホール
 インプラント治療の広がりによって、ともすれば知識が疎かになっている、義歯の基礎と臨床について「インプラント治療を学ぶ前に知っておくべき義歯の基本と臨床」をテーマに開催しました。どんなインプラントでも、術前、または終末期には義歯に移行することは避けられません。これからインプラント治療を学ぶ歯科医は、義歯にも精通しておく必要があります。今回、会員発表、招待講演、ランチョンセミナー、6名の先生に講演頂きました。満席の会場では、活発な意見交換がなされ、大変有意義な例会となりました。
会員発表Ⅰ
座長:大阪府開業 久保茂正先生
演者:西宮市開業 松本理基先生
演題:すれ違い咬合患者に対するロケーターアタッチメントを用いた
   インプラントオーバーデンチャー症例

会員発表Ⅱ
座長:大阪府開業 久保茂正先生
演者:東京都小林歯科勤務 新井広幸先生
演題:顎補綴装置作製時に、3D プリンターにて作業模型を作製し、
   患者の負担軽減に寄与した症例について

会員発表Ⅲ
座長:大阪府開業 久保茂正先生
演者:大阪府開業 勝 喜久先生
演題:部分床義歯設計の基本的考え方
 午前中は、当会の3名の先生が会員発表をされました。
 松本理基先生は、義歯のみでは安定の難しいすれ違い咬合に対して、インプラント上のロケーターアタッチメントを使用し、安定を得た症例について発表されました。
 新井広幸先生は、顎補綴装置を作成するに際して、CTによるデジタルデータを用いて、広範囲3Dプリンター作業用模型を作成した症例を供覧されました。咽頭近くまで、広範囲にわたる渡る印象採得は、誤嚥などの危険性や、患者負担も大きいだけに、有意義な方法と考えられました。術後の発音の改善についても、術前後の動画を供覧され、本治療の有効性を示されました。
 勝 喜久先生は、部分床義歯の安定に重要な、維持、支持、把持の考え方について、ご自身のクリニックにて遭遇した不適合義歯の統計資料も交えて、詳細に発表されました。基本的な考え方に基づく設計や術後管理を、自身の症例から説明され、非常に分かりやすい発表でした。
 いずれの発表にも、招待講演の演者である大久保力廣先生、山下秀一郎先生からもコメントやアドバイスを頂き、通常とは違った、緊張感のある有意義な会員発表となりました。
ランチョンセミナー
座長:大阪府開業 上杉聡史先生
演者:西宮市開業 長田卓央先生
演題:「経営者としての歯科医師は何をしていくことが大切か」
   ~役割に応じた歯科医師の時間の使い方

 「なぜ院長が経営を勉強しなければいけないのか」、「なぜ経営を考える事に時間を費やす必要があるのか」、その必要性について説明されました。近年、雇用するスタッフはやりがいがある地域貢献度の高い職場を希望します。経営でしか職場を変化させることはできず、良質な経営を行えば雇用にもつながります。どのような事を経営の時間で行うかについて、改めて考える有意義な時間になりました。
招待講演Ⅰ
座長:勝 喜久先生
  演者:鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座 教授
   大久保力廣先生
演題:義歯のあるべき姿を再考する
   ~理想的な義歯を目指して~

 招待講演Ⅰの講師には、鶴見大学歯学部 有床義歯補綴学講座 教授 大久保力廣先生をお招きし、「義歯のあるべき姿を再考する~理想的な義歯を目指して~」と題して講演して頂きました。講演では大久保先生が日常臨床で実践、適用している義歯設計や義歯構造、製作術式を提示していただき、理想的な義歯像についてお話し頂きました。
 成功している義歯を参考に、その3原則として、①義歯の破損の防止、②予防歯学的要素、③義歯の動揺の最小化があり、それら個々について説明されました。義歯の破損防止のためには、従来の金属床とは違い、変化してほしくない部分を金属で作成した金属構造義歯を紹介されました。予防歯学的要素としては辺縁歯肉を開放して衛生的な義歯設計を推奨されました。義歯の動揺の最小化については、機能時の義歯を安定させる支持、把持、維持を詳しく説明して頂きました。
 違和感の点から上顎の局部床義歯の場合は、パラタルバーや床が口蓋の正中を斜めにまたがない事や、シンギュラムレスト(CRを用いて歯軸に垂直に力がかかるようにする)など細かな点も勉強させていただきました。
 さらにアドバンステクニックとして咬合印象の一種のFBI(Functional Bite Impression)テクニックでの印象とピエゾグラフィーを用いて人工歯配列位置を考える事を紹介されました。FBIテクニックは印象域を小さくし、作業模型を小さくすることで、より正確に技工物が作成でき調整をすることなく装着できるそうです。ピエゾグラフィーを用いて発音を利用し機能時の頬粘膜、舌の位置を印記し阻害しない位置に人工歯を配列されていました。
招待講演Ⅱ
座長:鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座 教授
   大久保力廣先生
演者:東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座 教授
   山下秀一郎先生
演題:患者さんに喜ばれるパーシャルデンチャーの設計とは?
   ―痛くない、動かない義歯を実現するための問題解決法―

 招待講演Ⅱでは、東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座 教授 山下秀一郎先生をお招きして「患者さんに喜ばれるパーシャルデンチャーの設計とは? ―痛くない、動かない義歯を実現するための問題解決法―」と題して講演して頂きました。
 山下先生は、局部床義歯の出来が患者のQOLを大きく左右する事、主機能部位がどこにあるのか、噛める義歯を実現するにはどうすればよいのかについて講演されました。
 OHIPスコア、グミゼリー法、咀嚼機能評価表、主機能部位の判定など様々な検査結果から、義歯による患者のQOLの向上を客観的に評価されていました。実際、上顎の残存歯数、上下顎の咬合支持数、主機能部位が残存している事などが義歯の成功に影響を与えているようです。
 患者が満足する義歯とは、動揺の少ない義歯、適切な咬合が確立されている義歯であることが重要であり、義歯に必要な支持、把持、維持の3要素の中でも支持が特に重要だと強調されました。維持力には、ロケーターやマグネットなど数キロの力でも十分であるが、支持力は患者の体重に匹敵する60㎏以上の咬合力を受け止める必要があり、設計では最も重要なポイントになることを説明されました。これらについては、支台歯の動揺度、歯冠歯根比、ポケットデプスを3段階評価して、支持、把持、維持のどの力をかけるか数値に表して評価もされていました。良い状態のものには維持を求め、不良の場合でも根面板などで最大限の支持を求めるように設計されていました。また、歯根膜支持と粘膜支持についての違いや、機能印象、解剖学的印象での注意点などにも触れられました。
 義歯を作製するにあたり設計の考え方や印象の大切さ等多くの事を学ばして頂きました。

会場の新梅田研修センター会議室も満席です。
会場の新梅田研修センター会議室も満席です。
第143回 第143回研究例会報告
日時:令和3年10月17日(日)
場所:リーガロイヤルホテル大阪 2階 桐の間
特別講演(WEB)
座長:小室 暁先生
演者:日本歯科大学新潟生命歯学部 歯科補綴第二講座 教授
   上田和彦先生
演題:トラブル症例から学ぶインプラント治療
 招待講演は、日本歯科大学新潟生命歯学部 歯科補綴第二講座 教授上田和彦先生に“トラブル症例から学ぶインプラント治療”と題し講演頂きました。ご自身が経験されたトラブルおよびリカバリー症例を供覧し、インプラント治療における長期安定性獲得のためには、どのようなことに配慮して治療を行う必要かを講演されました。
 具体的には、①ショートインプラントについて、②上部構造の固定様式について、③上部構造の機械的偶発性について述べられました。
 ショートインプラントは、近年では、5-6ミリなど、非常に短いものが使用されています。その目的は、上顎洞や下歯槽神経などの重要な解剖学的構造を避けるためであり、ショートインプラントを使用することで、サイナスリフト手術や下顎管への近接を回避でき、安全な手術が可能になります。しかし咬合や使用インプラントの太さなどに注意が必要です。
 次に上部構造の固定式方式について話されました。セメント固定式とスクリュー固定式の二つに大別されますが、ご自身の症例から、それぞれの利点や欠点について整理いただきました。
 上部構造に関しては、ポーセレンを築盛して作成するときに、フレームをジルコニアにするか、金属にするかの違いにフォーカスを当てながらご講演いただきました。近年急速に金属を使う頻度が少なくなっているだけに、金属と、ジルコニアの物性の違いを十分理解した上で、上部構造を作成する重要性を学ばせていただきました。
会員発表
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
第51回学術大会 優秀研究発表エントリー演題
発表Ⅰ
座長:白井敏彦先生
演者:久保茂正先生
演題:CT機種別距離データの違いについて

発表Ⅱ
座長:白井敏彦先生
演者:横田沙雪先生
演題:骨質とインプラント径の違いが埋入トルク、インプラント安定指数、動揺度に及ぼす影響について

発表Ⅲ
座長:白井敏彦先生
演者:小室暁先生
演題:前歯部インプラント埋入症例におけるCBCT検査と併用するセファロ画像診断の有用性

 日本口腔インプラント学会第51回学術大会において、当研究会からエントリーしている、優秀研究発表3演題の準備発表を行いました。本番が迫る中、仲間だからこそ指摘してくださる、いろいろな質問の数々を頂き、3人の演者は、より発表をブラッシュアップする機会となりました。詳細は第51回大会HPおよび抄録集から閲覧ください。
教育講演Ⅰ
座長:小室 暁先生
演者:上杉聡史先生
演題:日本口腔インプラント学会認定専修医・専門医を目指して

 教育講座では、会員の上杉先生から“日本口腔インプラント学会認定専修医・専門医を目指して”と題し、これから専修医・専門医を目指す先生に注意点や具体的な準備方法について講演されました。上杉先生は、ご自身も専門医を申請された経験から、毎年の学会ケースプレゼンテーション試験の指導を行っておられます。当研究会は、学会の認定の施設では、最も多くのケースプレゼンテーション試験の合格者を輩出しており、実績も一番です。その理由は、事前の資料の整理や口頭試問試験で正しい回答をできる知識を事前に研鑽しているためです。当研究会も、最近は若い先生が増加し、専門医を目指す先生も多くなっているだけに、ご自身の経験を踏まえた非常に有意義な講演でした。

教育講演Ⅱ
座長:小室 暁先生
演者:阪本貴司先生
演題:広告可能なインプラント専門医についての現状
   歯科専門医機構への申請と5年間の継続研修記録簿について

 阪本会長からは、広告可能なインプラント専門医についての現状として、学会と国の動向についてのご講演をいただきました。現在、日本における専門医のあり方については、大きな転換点を迎えつつあります。それを踏まえ、実際に目指す我々はどのような資料を残し、行動すべきかと言うことを具体的にお話しいただきました。
 今回は、盛りだくさんの内容となり、参集した会員たちは、それぞれに情報交換をし、活発に意見をされている姿が印象的でした。現在、新型コロナウィルスの新規陽性者数は減少傾向にあり、非常事態宣言も解除されましたが、今後も感染予防には留意しつつ、対面を重視した例会の運営を、今後とも続けていきたいと思います。

会場のリーガロイヤルホテル150名満席です
会場のリーガロイヤルホテル150名満席です
第142回 第142例会・特別講演会報告
日時:令和3年5月9日(日)
場所:リーガロイヤルホテル大阪、WEB開催
   講演動画へのリンク
特別講演
座長:大阪市開業 阪本貴司先生
演者:東京歯科大学名誉教授 櫻井 薫先生
演題:新たなことへの挑戦、口腔機能低下症保険導入への道
 特別講演会講師に、東京歯科大学名誉教授 櫻井 薫先生をお招きし,「新たなことへの挑戦、口腔機能低下症保険導入への道」と題して講演頂きました。櫻井先生は、日本老年歯科学会の元理事長で、口腔機能低下症の病名と、それに基づく口腔機能検査の保険収載について、尽力された先生です。今回は、口腔機能低下症の保険収載に至る背景やその過程、また口腔機能低下症の具体的な検査方法や臨床への応用について、講演いただきました。
 今でこそ、歯科医のみならず、医科、そして世間一般にも認知されている、口腔機能低下症という言葉ですが、櫻井先生が日本老年歯科学会理事長に就任された年は、ほとんど認知されていなかったそうです。しかし、先生が受け持たれた1人の患者の義歯治療における経験から、口腔機能検査の必要性を痛感され、老年歯科学会内で、口腔機能低下症を病名にするためのワークショップを立ち上げられました。その後、日本歯科医学会や歯科医師会とも打ち合わせを行い、厚労省に働きかけ、ようやく病名の保険収載にこぎつけたとの事です。また、国に働きかける前段階として、プレスリリース等にも力を入れられ、国民に訴えかける、といったことも盛んに行ったそうです。論文を出すだけでなく、世論を動かさなければならないという点も強調されました。講演では、その過程を余すことなくお話しいただきましたが、先生の大局観と行動力に頭が下がる思いが致しました。
 後半では、臨床的な話もされ、口腔機能低下症は、生活習慣病と同じく完治するものではなく、管理するものである。まだ口腔機能検査の保険算定が増加していないのは、考え方の変化が、我々歯科医師も追いついていないからだと指摘されました。そして、口腔機能低下症を測定する、各種装置について、具体的に説明されました。また測定方法のみならず、口腔ケアの方法も含め、患者へ、いかに口腔機能低下症が全身へ影響するという事の情報発信の重要性も話されました。
 櫻井先生は、講演を通して、テクニックではなく、ものの考え方が大事であると言うこと、また、ニーズを捉えて、行動することが、何よりも大切であることを訴えられました。
 特別講演にふさわしい、大局を踏まえた御講演を頂いた、櫻井先生に改めて感謝申し上げます。

第142回例会・特別講演 櫻井 薫先生(WEB配信)
第141回 第141回研究例会報告
日時:令和3年2月28日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演
座長:木村 正先生
演者:福岡歯科大学 診断・全身管理学講座 画像診断学分野 教授 香川豊宏先生
演題:インプラント治療における画像診断の役割
   ―歯科放射線診断医として知ってもらいたいこと-
 福岡歯科大学の診断・全身管理学講座 画像診断学分野 香川豊宏先生に登壇いただき、「インプラント治療における画像診断の役割、―歯科放射線診断医として知ってもらいたいこと-」と題してご講演頂きました。
 香川先生は卒後、画像診断一筋で臨床教育に携わってこられた先生です。そのためか、配布資料もSNSでQRコードから自由にダウンロードできるという分かりやすい方法でした。この方法は、我々も初めての経験でしたが、非常に簡単で、誰もが講演資料をダウンロードすることが出来ました。講演内容もわかりやすく、画像診断について、総合的に学ぶことができました。
 インプラント治療における画像検査には、単純エックス線撮影、いわゆるデンタルレントゲン、パノラマエックス線、CTなどがあり、中でもCBCTは一般開業医への普及も進み、術前診断において欠かすことのできない存在となりました。今回の講演では、インプラント治療における各種検査機器の特徴、画像特性、診断上の注意点を中心にお話頂きました。また、画像検査における被曝や、治療用放射線に係る安全管理体制への対応についても説明されました。
 普段、我々は、パノラマエックス線写真や、CBCTを何気なく撮影していますが、その特性や起因する画像診断上の問題点については、理解できていない部分があります。今回、基本的な撮影原理から、実際に上手く撮影するコツや撮影時のセッティングなどもわかりやすく話して頂きました。また撮影画像の読影時にそれぞれの撮影方法による、間違いやすい解剖構造や疾患の映り方についても述べられました。
 歯科用CBCTと医科用CTは、特徴が大きく異なり、それゆえに注意点も違ってきます。医科への撮影時依頼時に注意すべき事項など、普段留意できていないことも多かったように思います。この内容については、我々の研究会でも、研究課題とさせていただいている分野でもあり、非常に参考になりました。
 またMRIの撮影原理や特徴についても説明頂きました。特にマグネットタイプのインプラントから生じるアーチファクトについての注意点は勉強になりました。その他、安全管理体制、撮影回数、防御エプロンの必要性についても先生の知見を明確に示され、今後治療を行う上で、1つの基準となったと思われます。
 最後に、1つの検査機器に頼るのではなく、様々なレントゲン診査を経て総合的に審査診断を行うことの重要性を解かれました。会員のスタッフ、および患者さんへの、より安全で確実な画像診断の提供に役立つ時間となりました。 第140回例会 大阪国際会議場12回特別会議室
第140回例会 大阪国際会議場12回特別会議室170名で満席です。
第140回 第140研究例会報告
日時:2020年(令和2年)10月18日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
テーマ:歯科技工士の現状とデジタル歯科技工の将来の展望
招待講演Ⅰ
座長:山野総一郎先生
演者:都築正史先生 大阪市開業
演題:歯科技工士の現状調査
 都築正史先生は、近年の歯科技工士を取り巻く環境について調査を行い、「歯科技工士の現状調査」と題して、現状における歯科技工士不足の問題点について講演されました。歯科技工士については、特に若年層の離職率の増加、高齢化、歯科技工士養成施設の廃科・廃校など、多くの問題が叫ばれています。その根本には、歯科技工士の過酷な労働環境や、低所得、低い社会的認知度など、多くの問題があることがわかりました。実際、独自で調べられた多くのデータにも裏付けられる結果でした。今まで漠然と技工士の置かれている状況の悪化を感じていたものが、講演で具体的に感じられました。今後歯科医師としても、技工士との関係性を考え直す上での大きな基準を与えた講演でした。
招待講演Ⅱ
座長:山野総一郎先生
演者:小室 暁先生 大阪市開業
演題:院内歯科技工所のメリット
 小室 暁先生には「院内歯科技工所のメリット」として講演頂きました。
歯科技工士の職場環境は、歯科医院内における技工業務型、歯科医院外部での技工業務型、その両方の併用型の3つのパターンがあります。小室先生の診療所では、ほとんどすべての技工業務を歯科医院内で行っている立場から、院内技工の様々な利点を紹介されました。
 講演では、自院のスタッフにアンケート調査を行い、その結果を元に、職種別に様々な感想を取りまとめられました。院内技工のメリットとして、歯科技工士が患者と直接コミュニケーションを取れること、技工物の修正や修理が迅速にできること、などの利点が考えられます。また同じメリットでも、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手らの職種によっても感じ方、意見が違うところも興味深い結果でした。
 また、近年避けて通れないデジタル化技工について、院内技工としてどのように取り入れ、発展させていったかについても詳しく講演されました。
 歯科技工の内容だけでなく、それぞれのスタッフの中で、歯科技工士がどのように感じて日々の業務に携わっているのか、また小室院長が歯科技工士の育成にどのように気配りをされているのか、現場の歯科医院ならではの貴重な講演でした。
招待講演Ⅲ
座長:山野総一郎先生
演者:小林健一郎先生 東京都開業
演題:大規模な歯科医院での歯科技工部の運営について
 小林健一郎先生は、大型歯科医院において、歯科技工を歯科医院内業務と医院外業務の併用型として行っている立場から、「大規模な歯科医院での歯科技工部の運営について」と題して講演頂きました。講演では、院内での技工士のマネジメントや、育成について、多くの有用な情報を提供されました。スタッフを100名近く雇用する立場から、歯科医院の運営、スタッフ教育、そし研究活動も行っておられ、それを一人でまとめている小林先生の力量には会員も驚きを隠せませんでした。
 小林先生の医院には8名の歯科技工士が常駐されていますが、全員女性であるところが特徴であり、女性ならではの人材育成の方法についても様々な示唆をいただきました。今後歯科技工士界にも、女性が多くなり、女性活躍の場を与える事は必須かと思われます。未来につながる素晴らしい歯科医師と技工士の関係の1つの形を示されました。
招待講演Ⅳ
座長:小室 暁先生
演者:松島 淳先生 東京都 歯科技工士
演題:院外歯科技工のメリット
 4人目の講師には、歯科技工士であり、株式会社GIKOの常務取締役でもある松島 淳様にご登壇いただき、「院外技工のメリット」と題して講演いただきました。株式会社GIKOは、全国規模に技工所を展開している会社で、歯科技工業務のみならず、グループ内で様々な活動をされている企業です。様々な技法にまつわる新しい研究技術も開発し、技工物に反映されています。講演では会社紹介から始まり、ノンクラスプデンチャー、高精度のレジン床、マウスピース矯正のアライナー、インプラント技工など、多岐にわたる技工物の説明をされました。また、大規模技工所ならではの、技工所の運営、人材育成など、マネジメントについても多くの示唆をいただきました。特に大量発注によるコスト軽減や、徹底的な技工士の分業化などは、なかなか院内技工には真似のできない強みかと感じました。
招待講演Ⅴ
座長:小室 暁先生
演者:岩手医科大学歯学部 補綴・インプラント学講座 教授
   近藤尚知先生 演題:最新のデジタル歯科技術と将来展望
 メインセッションとして、岩手医科大学の近藤尚知教授にご登壇いただき、「最新のデジタル歯科技術と将来展望」について講演いただきました。最近の歯科技工や歯科医療におけるデジタル技術の導入は、目を見張るものがあります。イントラオーラルスキャナ、サージカルガイド、ミリングマシン、3Dプリンターなど、多くの技術を一体として患者に提供し、新たな治療方法(デジタルワークフロー)が確立されようとしています。しかし、多くのメリットがあるものの、いまだに解決すべき問題も少なくはありません。近藤先生は、その全ての過程において、独自に機器を検証し、真のデジタルワークフローとでも言えるものを目指して研究して、その一つ一つについてわかりやすく説明いただきました。特に、様々なイントラオーラルスキャナやデスクトップスキャナの真度や精度の検証、近年急速に進歩している、ミリングマシンと3Dプリンターの比較検討については、参集された会員の先生方が、まさに一番知りたいトピックであったと思います。 また、未来の技術とも言える、ダイナミックナビゲーションシステムや、AR/VR技術などについてもご紹介いただきました。ダイナミックナビゲーションシステムは、近年日本でも厚労省認可された技術ですが、まだまだ臨床応用している先生は非常に少ないだけに、サージカルガイドシステムとの比較もしていただき、今後に向けて非常に有用な情報となりました。

 昼の休憩では、ランチョンセミナーとして、当研究会会員の長田卓央先生に「コロナ禍のうちにやっておくべき強い組織づくり」と題して講演頂きました。また高田光彦先生には、主に経営面や保険制度の面から歯科技工士問題に切り込んでいただきました。

 今回、「歯科技工士の現状とデジタル歯科技工の将来の展望」をテーマに、7名の先生方に多方面から現状の歯科技工問題とデジタル技工の展望についてディスカッションし、 知見を深める1日になりました。今後も歯科技工士の社会的地位の確立と待遇の改善は、歯科医療全体が取り組むべき問題であり、先人が育てた、世界に名だたる日本の歯科技工技術を継承し、守ってゆく責任がすべての歯科医師にはあると感じました。


第140回例会 大阪国際会議場12回特別会議室
第140回例会 大阪国際会議場12回特別会議室170名で満席です。
第139回 第139回研究例会報告
日時:令和2年8月30日(日)
場所:大阪国際会議場 10階1001・2会議室
招待講演
座長:小山直浩先生
演者:田中秀樹先生
演題:審美と長期安定を両立するこれからのインプラント治療戦略と補綴方法
 大阪はまだまだ、新型コロナウィルス感染症への不安が残る状況ですが、3密状態を避け、十分な感染対策を施した上で、半年ぶりに現地参集で例会を開催しました。
 招待講演には、福岡市にてご開業の田中秀樹先生にお越しいただき、「審美と長期安定を両立するこれからのインプラント治療戦略と補綴方法」と題して、主に、前歯部補綴を中心に、審美と長期安定を両立するこれからのインプラント治療戦略と補綴方法について講演いただきました。
 田中先生は、前歯部インプラント治療を成功させるためのポイントとして、9つのポイントを上げられ、それぞれについてご自身の症例を交えて説明されました。現存歯を、抜歯するかどうかについて、単にその歯の医学的な状況だけでなく、患者の年齢や、社会的な状況を考え、総合的に診断する。また、インプラントは天然歯よりも長く口腔内に残存することも多く、そのため、患者の加齢による、口腔全体の補綴物の設計の変化にも耐えられるように上部構造を考えることなど、特に若手の先生には、新しい視点を提供してくださったように思います。 また、抜歯窩に人工骨を填入するかどうか、抜歯即時インプラントの適応、トンネリングテクニックを中心とした、軟組織や硬組織のマネージメントなど、非常に臨床的かつ高度な講義が続きました。講演の最後には、近年広がりを見せている、サージカルガイドを使ってのインプラント埋入のポイントなど、非常に臨床的にも役に立つ話が満載でした。 途中で質問を適度に挟みつつ、講演が進みましたが、そのたびに非常に活発な質問が行われ、現地参集の例会ならではの良さを味わうことができました。
教育講演
座長:小室 暁先生
演者:小林健一郎先生
演題:IOD用のショートインプラントについての臨床と開発
   AIを使った画像診断システムの開発経緯と現状
 教育講演は、東京都開業で会員の小林健一郎先生に、「IOD用のショートインプラントにつ いての臨床と開発、AIを使った画像診断システムの開発経緯と現状」をテーマにご講演頂 きました。小林先生は、東京の江戸川区にて、大規模医院を開業されており、そのメリッ トを生かし、臨床だけでなく、研究や商品開発などにも取り組まれ、一般開業医には珍し く、独自のスタイルでの医院運営をされています。その中から、本日は2つの研究テ ーマについてお話しいただきました。
 研究テーマの話の前に、ご自身の医院の新型コロナウィルス対策についての紹介がありました。新型コロナウィルスは、まだまだ撲滅すると言うより、共存すると言うスタンスで我々も生活していかなければいけないと思われます。小林先生の事例は非常に参考となりました。
 続いて研究の話に移りましたが 、1つ目は、骨吸収が進んだ患者向けの、インプラントオーバーデンチャー用のショートインプラントの研究開発についての話でした。日本国内では、現在、最短でも長さ6.0ミリのインプラントしか販売されていません。しかし、下顎骨が高度に吸収した症例においては、これより短いインプラントを必要とする症例も多々あり、そのような症例のために、長さ4ミリのショートインプラントの開発を現在行われております。現在、NZW兎20羽における研究が行われ、良好な結果を示しているようで、今後ビーグル犬などの実験を通して、商品化へ進んでいく予定です。
 引き続き、パノラマレントゲンから、AIにより、自動的に歯を検出するシステムの開発についての話がありました。この研究をすることにより、パノラマレントゲンの分析や、その結果をカルテデータに移すなど、我々の診療の効率化において非常に有益な研究であると思います。この研究は、歯科業者や、大学なども含めた、いわゆる産臨学一体となった研究であり、その1つのモデルとして、これも商品化に向けてさらなる発展が期待されます。 久し振りに談笑などされる姿も多く見られ、活発な質疑応答も含め、やはり現地参集の講演会は意義あるものだと思いました。

400名定員の会場
三密を避け400名定員の会場にて開催しています。

大阪国際会議場において消毒と空調を徹底して開催してます
大阪国際会議場において消毒と空調を徹底して開催してます。

第138回 第138回特別講演会報告
日時:令和2年5月10日(日)
場所:Web配信
特別講演
座長: 阪本貴司先生
演者: にしだわたる糖尿病内科 院長 西田 亙先生
演題:令和の歯科医療は“炎症消退”を通して全身の健康に寄与する
 新型コロナウイルスの蔓延により全国に緊急事態宣言が発信されました。大阪府の緊急事態宣言も延長が決定し、開催予定の大阪国際会議場が閉鎖されたため、第138回総会および懇親会は中止となりました。特別講演会はWeb配信にてオンタイムで、同日全会員へ配信されました。
 特別講演会に先立ち、阪本貴司会長から新型コロナウイルスによる影響により、多くの会員が感染対策に必要な備品の不足の状況下でも、高いレベルの感染予防を維持していることに対して謝辞と激励の挨拶がありました。
 特別講演では、講師の西田 亙先生から「令和の歯科医療は“炎症消退”を通して全身の健康に寄与する」と題して、愛媛県の松山市からWeb講演を行って頂きました。
 講演では、コロナウイルスと歯科治療との密接関係について協調されました。不要不急の外出自粛要請の中、歯科治療や口腔衛生指導が不急とされ、予約のキャンセルなども増加しています。西田先生の話は、新型コロナウイルス対策として、歯科医師や歯科衛生士がいかに重要な役割を担っているか、具体的に今の我々にできること、これからしなければいけないことなど、勇気づけられる内容でした。
 最初に、新型コロナウィルスに対する、最新情報と、それに基づく口腔衛生治療の必要性を科学的に説明されました。新型コロナウィルスは、我々の体内に侵入するために、細胞表面上のアンギオテンシン転換酵素(ACE2)を接着する受容体として使っています。特に肺胞の表面上には、このACE2が多数存在するため、コロナウィルスが接着しやすく、重篤な肺炎となって重症化するということがわかっています。そのACE2は、口腔内でも唾液腺の導管上皮細胞に同様に存在します。その部分から感染したコロナウィルスが増殖し、誤嚥などによって肺胞へ入り込み、感染していると考えられます。実際、唾液を使ってコロナウィルスの抗体を検査する方法は、諸外国でも始まっていることから、新型コロナウイルスは、口腔内に多数存在している可能性が高いと思われます。今後、新型コロナウイルス予防に関して歯科の役割がさらに重要視されるはずです。
 口腔内、すなわち唾液腺の導管での感染が高くなる原因には、唾液の分泌量の減少があります。多くの薬剤を服用している基礎疾患を持った患者さんや、口腔清掃が不良な方では、感染リスクが高くなります。そのような患者さんこそ、より積極的な口腔内の衛生指導が必要になります。
 講演の後半では、日頃から我々歯科医師が、口腔衛生管理が生活習慣病予防や健康寿命の延長にまで影響していることを、もっと発信をする必要があることを強調されました。
 我々は患者さんに対して、ともすれば専門用語や英語などの分かりにくい言葉を使いがちです。これからの歯科医療は、”伝える”だけでなく、患者が興味を抱き理解できる“伝わる”コミニケーションが大事です。そのためのヒントも頂きました。患者さんの心を動かす術を身に付けてほしいことも強調されました。
 伝えたいことをエビデンスではなく、1つの物語として、患者さんの腑に落ちるように伝えること。歯を失った後の顎の骨を実際に写真で見せるなど、映像で伝えること。お年寄りには英語ではなく、大和言葉(日本語)を使うこと。専門用語を簡単な言葉で置き換える、いわゆる辞書のようなものを各医院で作っておくことも大切です。「口強ければ足強し!」のような、標語も効果があります。そのような具体的なアイデアをたくさんくださいました。
 西田先生は、以前の例会で講演いただいた時も、台風の接近によって聴講できた会員が限られ、西田先生も台風の中、片道切符で来ていただきました。
今回も同様の緊急事態となりましたが、今回はWeb配信により、すべての会員へメッセージを届けることが出来ました。今後もこれに類する緊急事態が起こり得ると思います。そういう時代に向けて、Webを通しての発信方法も、ますます重要になると感じた例会でした。今回、このようなイレギュラーな発信方法にも関わらず、素晴らしい対応をいただきました西田先生に深く感謝いたします。

第138回特別講演会報告 西田 亙先生
第137回 第137回研究例会報告
日時:令和2年2月23日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演
座長: 勝 喜久先生
演者: 鈴木真名先生
演題:Peri-implant soft tissue management ―軟組織の機能性と審美性の再建―
 東京都開業の鈴木真名先生に「Peri-implant soft tissue management ―軟組織の機能性と 審美性の再建―」と題して講義頂きました。
 インプラントに関しては、これまでは、インプラント周囲に角化粘膜が存在しなくても、インプラントの長期的な予知性にあまり影響はないと言う報告も散見されていましたが、最近では、骨だけではなく、軟組織を作ることが、インプラントの長期安定に必須であると言う見解に変わりつつあります。鈴木先生は、骨だけではなく角化粘膜の獲得の必要性を、インプラント臨床の初期の頃から認識され、技術を研鑽されてこられました。
また、近年ではマイクロスコープを利用することにより、その外科処置の確実性が、確実に向上していることを多くの素晴らしい臨床例から示して下さいました。
具体的には、角化粘膜の獲得についての方法と症例を、天然歯の根面被覆、インプラントのスレッド露出への対応、ポンティック部への対応、リッジオーギュメンテーションなど、様々なケースについて臨床例を通してご講義いただきました。これらの中には、まだエビデンスベースではないと、鈴木先生ご自身がおっしゃる手技もありましたが、多くの症例で長期的な安定が保たれており、その予知性は、単なるマイクロサージェリーによって確実に向上するのではないかと言う展望を強調されておられました。
教育講演
座長:松本理基先生
演者:木村 正先生
演題:インプラント治療における画像診断の落とし穴
 当会会員の木村 正先生に「インプラント治療における画像診断の落とし穴」について教育講演をお願いしました。
まず、デンタル、パノラマ、CTのデジタル画像ではデジタル特有のアーチファクトで骨吸収様相を呈することがあり、インテグレーションの評価が困難であることを、実際の臨床例で示されました。
また、近年では、CT画像と、イントラオーラルスキャナや、モデルスキャナによる口腔のデジタルデータをマッチングして、インプラントの術前診断を行ったり、サージカルガイドを作成したりすることが多くなりました。これまで、木村先生らの研究で明らかになったように、CBCT画像も実寸より収縮し、イントラオーラルスキャナやモデルスキャナのデジタル画像も同様に収縮しますが、その位置関係や収縮率は一定ではなく、診査診断には注意を要することを強調されました。また、マッチングソフトも、複数のマッチングソフトを比較検討し、収縮率に差があること、CTでも,CBCTとMDCTでは様相が全く違うことを示され、結論として、CT、スキャナ、マッチングソフトの三者三様の、実寸からの寸法変化を考慮した上での組み合わせを考え、審査診断に臨む必要があることを示されました。
 デジタルと言えば、正確と言う一般的な思い込みが我々にはありますが、その思い込みを打破し、アナログでパノラマ画像を診断していた時の様に、誤差も加味したうえでの診断がいまだに必要であることを痛感させられました。


招待講演 鈴木真名先生
招待講演座長 勝 喜久先生
教育講演 木村 正先生
教育講演座長 松本理基先生
第136回 第136回研究例会・特別講演会報告
日時:2019年11月24日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
2000年に歯科医療”三種の神器”としてCT・CAD/CAM・マイクロスコープが提唱されました。今では新規開業時に、これら三種の神器を揃えるのが当然のようになってきています。しかし、揃えてはいるものの使いこなせていない先生も少なくありません。
特に、マイクロスコープには、これまで単に治療で用いる機器だけでなく、患者に治療前後の映像や治療中の動画などを見せることで、医療従事者と同じ価値観を共有できるというメリットがあります。そのためには、その画像を保存し、より効率よくプレゼンテーションできる機材やソフトも必要です。今回は、「治療記録動画ツールの活用、歯科衛生士(スタッフ)と語る患者とのコミュニケーションの実際」をテーマに3人の先生方と、その日常のパートナーである歯科衛生士さんや歯科助手さんにも一緒に臨床の中のマイクロスコープの活用について講演いただきました。
招待講演Ⅰ
座長:白井敏彦先生
演者:髙田光彦先生
   髙橋規子さん
演題:伝え方次第で心が動くマイクロスコープ映像テクニック
 神戸市開業の髙田光彦先生と歯科衛生士の髙橋規子さんには、「伝え方次第で心が動くマイクロスコープ映像テクニック」と題して講演頂きました。髙田光彦先生は、ほぼ全ての臨床にマイクロスコープを使用し、自費治療を中心に診療を行っておられます。また歯科衛生士の髙橋さんも、マイクロスコープを使いこなした日頃の衛生士活動を行っておられ、そのメリットや、実際の使用方法などについてプレゼンテーションをしていただきました。
 髙田先生は、なぜ、一般の診療のみならず、衛生活動まで顕微鏡を使うようになったのか、その形を、医療面、経営面から堀り下げてわかりやすく話して下さいました。また、画像のプレゼンテーションと保存のツールに関して、市販されている高額なシステムを使用することなく、自力で院内サーバーを持ち、LAN構築をされておられ、その手法を余すことなくお伝えいただけました。
招待講演Ⅱ
座長:白井敏彦先生
演者:櫻井善明先生
   松本智恵子さん
演題:カリーナシステム ADMENIC DVP2 を使用した マイクロスコープコミュニケーション
 東京都開業の櫻井善明先生と歯科衛生士の松本智恵子さんには、「カリーナシステム ADMENIC DVP2 を使用した マイクロスコープコミュニケーション」について講演頂きました。櫻井先生は、完全自費でご自身の診療を構築されています。その中核となるのが、マイクロスコープと、カリーナシステム社の提供する「映像記録&プレゼンテーションシステム ADMENIC DVP2」 です。これは、スマートフォン同様の操作性で患者へのプレゼンテーションを行う事ができるツールで、櫻井先生が臨床、そして、歯科衛生士の松本さんが、実際の使用方法をカリーナシステムのソフトを供覧しながらご説明くださいました。
 カリーナシステム社と言う会社は歯科界において聞きなれない名前ですが、本来は大病院の手術映像記録配信システムや、テレビ局やネットワーク業界などへの映像機器の開発やシステム構築をメインとしている会社で、その中の歯科界向けのシステムの一つとして「ADMENIC DVP2」を開発・提供しており、むしろ映像とネットワークの両方を理解している会社としては国内随一とのことです。
それだけあって、歯科医院で構築する最高峰のシステムと感じました。
招待講演Ⅲ
座長:白井敏彦先生
演者:樋口敬洋先生
   深江あゆさん
演題:マイクロスコープを用いたチームアプローチ
 福岡市開業の樋口敬洋先生とスタッフの深江あゆさんには、「マイクロスコープを用いたチームアプローチ」のテーマで講演頂きました。樋口先生は、保険診療をメインに診療されている、いわば一般の歯科医師に近い診療スタイルの先生です。その中で、マイクロスコープを積極的に使用されており、その臨床を中心にプレゼンテーションをしてくださいました。また、一緒にご登壇くださった深江さんは、先生が使われている、ビジュアルマックスというシステムの開発にも関わった方で、そのため非常に使い方を熟知されており、データの保存、またプレゼンテーションについて余すことなくお伝え下さいました。このシステムは王手レセコンメーカーの販売ソフトと言うこともあり、我々が日常使用している様々なツールとの連携もスムーズで、保険診療の中にとりこみ画像や動画を使用するのに優れたシステムと思われました。

 今回はそのほかにも、ランチョンセミナーとして、当会会員、西宮市の長田卓央先生による歯科医院経営戦略の話もあり、全体として、非常にこれまでと違う雰囲気の例会となりました。終了後は、恒例となりました懇親会を行い、終了となりました。

第136研究例会・特別講演会報告
演者の先生左から、高田先生、高橋さん、櫻井先生、松本さん、樋口先生、深江さん。

第136研究例会・特別講演会報告
懇親会でも楽しい時間を過ごすことができました。
第135回 第135回研究例会報告
日時:令和元年9月29日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演Ⅰ
座長:木村正先生
演者:関西大学法科大学院教授
若松陽子先生
演題:民法改正による医療の時効 -何がどう変わるのか? いつから変わるのか?
 120年ぶりに民法の債権分野が改正され、来年(2020年)4月1日から施行されます。
本日は、当会の特別会員でもあり、インプラント医療に精通されておられる弁護士の若松陽子先生に、歯科医療に関係するポイントを「民法改正による医療の時効 -何がどう変わるのか、いつから変わるのか」と題して講演いただきました。
 言うまでもなく、医療は生命身体に直結しており、インプラントでも、残念ながらトラブル事例が増加しています。そのため、損害賠償請求権の時効がこれまでの10年から20年に延長された事が、まず一番のトピックでした。それに伴い、カルテなど証拠については、改正後の時効に対処できる保存方法と期間が必要となるとのことでした。カルテは、我々が治療をした証拠としての重要なものですので、電子化するなどの方策をとり、検索性も高め、確実に保存できる体制を整える必要がありそうです。
また、事前の同意書のみならず、術後、一度は満足して頂けていることを確認するためのアンケートをとり、残すことも、重要なポイントになるようです。
これらのことを始め、重要な改正点について、医療に関する具体例を元にご紹介いただきました。

招待講演Ⅱ
座長:久保茂正先生
演者:大阪大学大学院歯学研究科教授
丹羽 均先生
演題:医療事故調査事例から考える医療安全対策
 丹羽 均先生に「医療事故調査事例から考える医療安全対策」と題し、医療安全対策についてお話しいただきました。
日本における歯科診療と関連した死亡事故の発生頻度ははっきりしません。しかし、日本歯科麻酔学会の実施した全国郡市区歯科医師会へのアンケート調査の結果では、年間数名が歯科治療に関連して死亡していると考えられているそうです。また、一般に歯科と死亡とは、結びつきにくいため、ショッキングな扱いをされがちなため、我々は、重大事故は、絶対に避けなければならないと、まず指摘されました。
 講演では、現在は、事故が起きた時に、医療事故調査制度というものが存在することを話されました。医療事故調査制度は、2015年10月にスタートしました。医療行為に伴う「予期せぬ死亡」が起こった場合、医療機関は遺族に説明を行った後、速やかに「医療事故調査・支援センター」への届け出と院内調査の実施が義務付けらました。
 この制度の対象は、我が国のすべての病院、診療所であり、当然、歯科診療所も含まれます。その概要と流れを詳しく説明されました。丹羽先生は、アナフィラキシー専門分科会の会員で、再発防止のための提言書を平成30年に出しておられます。それに則って、アナフィラキシーショックの概要、また、緊急時の対応について講義いただきました。アナフィラキシーショック時には、アドレナリンの筋肉注射が有効な事、そして致死的な緊急事態であるため、筋注をためらわず行うべきである。いつ起こるかもわからない、緊急事態に備えての頭の整理になりました。
 講演では、誤嚥などについても、実際の症例に即して講義いただき、最後に、緊急時のマニュアル整備、医療機関との密な連携、医療事故調査制度を理解しておく必要性を強調され、まとめとなりました。
 臨床現場でアナフイラキシーショックや誤嚥などに遭遇すると、焦りから、適切な行動を瞬時に取ることは難しいと思われます。それだけに、定期的にこのような医療安全についての話を拝聴するのは有意義に思いました。
教育講演
座長:椋梨兼彰先生
演者:勝 喜久先生 豊中市開業 
演題:歯科口腔メインテナンスにおける課題と対策
 当会副会長の勝 喜久先生に「歯科口腔メインテナンスにおける課題と対策」というテーマで教育講座をお願いしました。講演では、まず開業されてから31年の自身の道のりを説明されました。開業当初は小学生以下の小児の患者さんが全体の約3分の1を占め、しかもその口腔内は歯髄処置が必要な歯も多く、修復半分予防半分のかなりハードな診療を行っておられたそうです。
そのような中、口腔環境の改善の後、口腔の健康維持と疾病予防のためのメインテナンスに力を注ぎ、将来的にはメインテナンス中心の診療に移行しようと決め、日々の診療に取り組んでこられました。また、ご自身もSJCD顧問や、ご自身でのスタディーグループを作られるなど、最高峰の治療を実践されております。  メインテナンスの対象も、超高齢化社会となった今、子供から高齢者へよりシフトし、 口腔のみならず、全身の健康維持のためのメインテナンスが重要であると考えるようになられたそうです。それを踏まえて本日は、1) メインテナンス移行時に留意すべき事項、2)どのようなメインテナンスを行うか、3)メインテナンスでのチェックポイントと対応、についてお話いただきました。
 勝先生は、口のみならず、“全身の健康”をキーワードにしたメインテナンスを強調されました。それを実践するために、技術のみならず、患者さんの性格などのパターン別に対処法もお話頂きました。最初の講演が、ややもすれば身の引き締まるテーマであっただけに、勝先生の軽妙な話術もあって、ときに笑いも起こる明るい講演となりました。

第135研究例会報告
第135回例会 大阪国際会議場にて

第135研究例会報告
2019年度の新役員が紹介されました
第134回 第134回研究例会・特別講演会報告
日時:令和元年5月19日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
特別講演
座長:大阪市開業 阪本貴司先生
演者:大阪府開業 佐々木 猛先生
演題:天然歯とインプラントの長期的安定を目指して 〜インプラント周囲の清掃性を再考する〜
 インプラント治療が臨床に広く取り入れられるようになって四半世紀以上が経過しましたが,その間に多くの基礎的および臨床的研究が報告され,インプラント治療は予知性,安全性,有効性の高い欠損補綴の治療オプションとして確立してきました.しかし一方では,インプラント周囲炎や上部構造体の破損など,インプラント治療に関わる合併症もしばしば報告される様になって来ています.本年度の特別講演会では,歯周病治療をベースに素晴らしい臨床結果を出されている,佐々木猛先生をお招きして,天然歯とインプラントの長期安定を目指して,をテーマにご講演いただきました.
 まず,インプラント周囲炎を事前に防ぐためには,インプラント周囲組織の清掃性や組織の安定性を高めておくことが求められ,そのためには,より連続性を持った天然歯とインプラントの骨レベルの連続性が必要であることを強調されました. 前半部では,それを達成するために,歯肉の厚みに応じたインプラントの埋入ポジションの重要性について話されました.佐々木先生が使われているインプラントは,プラットフォームの周囲が,機械研磨されたタイプのものですが,埋入後に起こる歯肉の吸収を見越して,歯肉の厚みに応じて埋入深度をコントロールされています.
 後半部では,独自の方法による,GBRテクニックについての紹介がありました.これまでは,大きなGBRをするときに,チタンのメンブレンを使うことが主流でしたが,どうしても歯肉が哆開したときの感染リスクが大きいため,最近では遅延性吸収性膜を使用されています.また,チタンスクリューによってスペースメイキングをすると言う,非常にシンプルな方法によって,十分な骨の造成を達成されている症例を多く紹介頂きました.縫合の方法も,シンプルな単純縫合のみで行う方がむしろ良いことなど,非常に臨床家にとっては取り組みやすそうなGBRについてご教示いただきました. 全体的に非常に美しい症例をわかりやすくご教示いただきましたが,全てが非常に基本に則った考え方で行われていること,そして一つ一つの手技を,確実に行わないと成功しないものであること,佐々木先生の明確なコンセプトと確実な手技の結果であると思われました.使用材料についても,具体的にお話頂き,参加者にとって,すぐにでも取り組める実践的なご講演であったと思います.
 講演後には,恒例の懇親会も行われ,佐々木先生にもご出席いただき,多くのの質問に,気さくに答えていただけました.また,この日は特別講演に先立ち,総会が行われ総会後に,よつば社会保険労務士事務所長の山中晶子先生による,労働基準法改正に伴う年次有給休暇の年5日取得義務の実際についてのご講演もあり,非常に充実した内容の1日となりました.
第134研究例会・特別講演会報告
満席の大阪国際会議場12階 特別会議室
第133回 第133回研究例会報告
日時:平成31年2月24日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室

 今回は「Intelligence Amplification in dentistry 2025. 歯科治療における知的活動支援システムの構築と展望」をテーマに4名の先生に招待講演を依頼しました。昭和大学副学長、公益社団法人 日本口腔インプラント学会理事長の宮﨑 隆先生には「デジタルデンティストリーとインプラントがもたらす歯科医療の未来」と題して、神奈川県開業の小池軍平先生、姫路市開業の北道敏行先生、医科歯科技研の松尾洋祐先生にも本テーマのに沿った最新臨床や技工を講演頂きました。
 テーマであるIntelligence Amplification (IA)とは、AI(人工知能)がコンピュータを人間の知能を置き換えるものに進化させようとするのに対し、人間の能力を補完し知的活動を支援するもの、知能増幅または知能強化と訳されます。いかにデジタル化が進んでも、医療はやはり人間が頭で考え、最新医療器機を使いこなす基本スタイル、Intelligence Amplification (IA)は変わらないと思います。
 2020年に東京オリンピックが決定し、2025年には大阪万博が開催されます。2025年に向けて歯科治療がどれだけ飛躍しているのか、近未来の予測も含め本シンポジウムを企画しました。
招待講演Ⅰ
座長:神戸市開業 高田光彦 先生
演者:医科歯科技研(株) 松尾洋祐先生
演題:CAD/CAM:ものづくりから情報技術へ
 医科歯科技研(株)は、先進的な、デジタル歯科技工を展開されている技工所です。
今回、松尾洋祐先生に“CAD/CAM:ものづくりから情報技術へ”と題してデジタルデンティストリーの歴史から、将来の展望について講演いただきました。
 これからのデジタル歯科技工は、これまでの技工室内での補綴物作製から、材料学も含めたチェアーサイドにおける診療補助のツールに変わっていくと考えられます。その実例として、口腔内の歯や歯肉のデータとCTなどの骨データを合成して、より実態化して見ることが出来る機器の紹介や、さらにそれに顔面の詳細なデータを重ね合わせる手法など、デジタルの新たな可能性の実例を提示されました。また、CADをする際のデープラーニングとビッグデータの組み合わせによる、より適切なデジタル補綴物を作成するAI-CADの考え方も披露され、非常に夢のある話となりました。
招待講演Ⅱ
座長:大阪市開業 小室 暁先生
演者:姫路市開業 北道敏行先生
演題:Digital Dentistry の臨床
 北道敏行先生は、口腔内スキャナだけで8台ほど、そのほかにも複数の模型スキャナーや、3Dプリンター、各チェアーにマイクロを完備されるなど、日本随一のデジタル診療設備を整えられ、最先端のデジタル歯科診療を実践されている先生です。また、院内技工士だけでなく、外部の著明な歯科技工士とも連携して、最先端のデジタル診療に取り組んでおられます。今回は、“Digital Dentistry の臨床”をテーマにご自身の臨床の中から、イントラオーラルスキャナの種類とその特徴について話されました。
 以前は、セレックのみであったインハウス式のミリングシステムも、オープン化に伴い、様々なシステムにより可能になっており、可能性が広がっていることを強調されました。また、近年注目されている3Dプリンターについても、その種類と原理について、知見を示され、総合的なデジタル歯科の現状と可能性を余すところなく伝えて頂きました。加えて、デジタル診療をするにあたってのちょっとしたコツもご教授頂き、充実した講義となりました。
 最後に、インプラントへの応用として、サージカルガイドの作成と使用においてのポイント、また、上部構造のイントラオーラルスキャンによる作成についても、言及くださいました。
第133回例会 大阪国際会議場12F特別会議室
第133回例会 大阪国際会議場12F特別会議室 満席です
招待講演Ⅲ
座長:大阪市開業 阿保淳一先生
演者:横須賀市開業 小池軍平先生
演題:一般開業医における口腔内光学式歯科用
CAD/CAM 装置 光学印象採得
クリニックとラボを繋ぐ Digital workflow
 小池軍平先生は、国内では先駆的に発売されていたチェアサイドCAD/CAMシステムである、セレックを初期の頃から使われていた先生で、現在も様々な口腔内スキャナを使われている中で、症例においては外部の技工所とコミュニケーションをとりつつCAD/CAM治療を行われている先生です。 今回は、“一般開業医における口腔内光学式歯科用 CAD/CAM 装置 光学印象採得クリニックとラボを繋ぐ Digital workflow”と題して各種口腔内スキャナの有効性とその限界について、多くの長期症例を通して講演いただきました。
 講演の冒頭では、過去にセレックシステムで作製したセラミックインレーの長期経過症例を提示され、一歯単位での口腔内スキャナおよびチェアサイドCAD/CAM治療の有効性を示されました。しかし、全顎に渡る症例においては、いまだに口腔内スキャンのみでは精度の担保が難しく、それゆえ従来通りの印象法との使い分けが必要であると述べられました。続いて、院内完結型のCAD/CAM治療と外部の技工所との連携が必要な治療についての、小池先生ご自身の使い分け方を紹介されました。 またデジタル技術の進歩により、データをネット会議的なシステムを使って、技工所と歯科医師で共有さえできれば、技工物作製についてのより密な議論も可能であること話されました。
 高度なCAD/CAM機器を全て一度に院内で揃えることは困難であり、設置費用も含め悩ましい問題です。今回の小池先生の講演は、今後一般歯科医がデジタル歯科治療にどこから取り組むべきかの、実症例を含めた参考となる内容であり有意義な講演でした。
招待講演Ⅳ
座長:大阪市開業 阪本貴司先生
演者:昭和大学理事長 宮﨑 隆先生
演題:デジタルデンティストリーとインプラントがもたらす歯科医療の未来
 宮崎隆先生は、日本口腔インプラント学会の現理事長であり、かつ、CAD/CAM歯科技工の黎明期から研究を続けてこられた先生です。その両方の立場から、“デジタルデンティストリーとインプラントがもたらす歯科医療の未来”と題して講演いただきました。トピックスとしては、1.歯科医療のパラダイムシフト、2.インプラントとデジタルデンティストリー、3.口腔インプラント学会の将来の展望について講演されました。
 1については、近年のインプラントやGBRに使用する材料は、改正薬機法では、クラスⅢとⅣに分類され、これまでの歯科材料とは違い、生命の危険に直結しうる材料、治療という認識がされており、それを踏まえて、より信頼性と再現性の高い治療を求める必要性があることを述べられました。
 トピックスの2では、デジタルワークフローについて、黎明期の研究より始まり、現在の口腔内スキャナとデジタル時代に期待される材料に至る一連の長きに渡る研究について話されました。我々は、現在デジタル歯科治療の恩恵を享受している立場ですが、そこに至るまでには、多くの研究の積み重ねがありました。現在の最新歯科材料ジルコニアも、強度というスペックで注目されていますが、従来のグラスセラミックは、エナメル質と同等の強度を持っており、その面では対合歯の磨耗も少なく、強度だけでなく総合的に材料選択をしていくべきと述べられました。
 最後に、インプラント学会の理事長として、インプラント学会の将来展望、人材育成などについても講演いただきました。
 CAD/CAMの歴史から、最新の知見、さらには歯科全体を俯瞰したお話まで、非常に盛り沢山かつ重厚なご講演となりました。
 1日に渡る講演の最後には、懇親会も開催され、各演者の先生も参加くださり、非常に充実した1日が終了しました。

懇親会
懇親会 写真下の左から北道敏行先生、阪本貴司会長、宮﨑隆先生、小池軍平先生
第132回 第132回研究例会報告
日時:平成30年11月25日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演
座長:大阪府開業 勝 喜久 先生
演者:九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野 細川隆司先生
演題:超高齢社会におけるインプラント治療
      —増え続ける有病・高齢者にどう対応するか?—
 九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野教授 細川隆司先生にご登壇いただき、高齢者社会におけるインプラント治療についてご講演いただきました。インプラントを用いた欠損補綴治療は、有効かつ確実な治療手段であることは、既に明らかになっています。その一方では、インプラント周囲炎の急激な増加などが報告され、患者の高齢化や有病者の増加も重要な課題になりつつあります。
 インプラント周囲疾患は、歯周疾患と類似した発症因子によって誘発されることが知られており、代表的なメインテナンスの方法としてはCISTなどが知られています。講演では、それらのことを復習した後、一歩視野を広げたメインテナンスについて話されました。
 新しいインプラント周囲疾患の管理法として、バイオガイアというL-ロイテリ菌が、インプラント周囲炎の進行抑止に有効であるとする企業との研究結果を示され、単なるジスロマックのような抗菌薬を使用するだけでなく、最初に抗菌薬で叩いた上で、ロイテリ菌による口腔内菌層を改善するメインテナンス方法を提示されました。
 またインプラント周囲炎は、単なる感染だけではなく、生理学的な骨形成を骨吸収が超えたときに生じる、いわば骨代謝の障害であると言う考え方を示されました。骨代謝に絡めて GBR法の歴史や理論を話され、GBRに理想的な骨補填材は、材料による差異を明確に示す報告はないが、基本的に骨に置換するものが良いことや、抜歯即時埋入についてもガイドラインを示されました。九州歯科大学では、埋入前に骨代謝に関して予測する方法として、骨代謝マーカーを利用し始めていると言う話も伺いました。
 予防に関しても、終末糖化産物(AGE)の蓄積が多いと骨へ変わりやすくなるため、その血中濃度測定も行われているようです。さらに、インプラント治療によってよく噛めるようになり、その結果高カロリー摂取となり、全身の変化に影響が及ぶこともあるため、それに伴った食事指導を考慮した総合的なメインテナンスプログラムの確立の必要性を述べられました。
 ここ数年、当研究会でも、インプラントの技術論だけではなく、健康を取り戻すための医療の入り口としての講演が続いていますが、これからのインプラント治療は、多職種との連携が大切で、単に”噛める歯”を作るという発想に止まって居れば、歯科だけが、連携から取り残されていくことに警鐘をならされました。
教育講演
座長:兵庫県開業 長田卓央 先生
演者:兵庫県開業 高田光彦 先生
演題:攻めの保存治療 -歯髄温存と部分修復
 高田先生は最近自身の診療所を改装され、シェイドテイキングする際の環境光の整備を徹底的に行ったそうで、先生の治療へのこだわりを感じさせる話から始まりました。日本でのダイレクトボンディングやマイクロスコープの普及率は5%程度だと言われている現状を歯科医療保険や、経営学的側面から話されました。その後、いかにして先生が歯髄を保存し、修復処置を行われているかのレクチャーに入りました。
 このような理想的な診療を遂行するために、余裕を持ったカウンセリング時間が必要となり、治療時間も十分取って治療を行っていること、その後、感染歯質の徹底除去の重要性について話されました。う蝕検知液の種類の選定方法から、露髄したときのMTAセメントを使用した覆髄方法などをマイクロスコープでの画像や動画を用いて説明されました。いくつかの症例においては、その後組織切片も示されました。

 今回の演者は、お二方とも、当研究会主催の日本口腔インプラント学会認定セミナーに講師として登壇頂いている先生方ですが、セミナーとは違った切り口から、ご自身の臨床や研究をお示しいただき、新鮮なものとなりました。 第132回研究例会報告
第131回 第131回研究例会報告
日時:平成30年9月30日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演
座長:久保茂正先生
演者:愛媛県糖尿病内科開業 西田 亙先生
演題:炎症でつながる口腔と全身、〜内科医が語る歯科医療の貴き力〜
 にしだわたる糖尿病内科院長西田亙先生に「炎症でつながる口腔と全身〜内科医が語る歯科医療の貴き力」と題して講演いただきました。
 西田先生は、糖尿病内科医でありながら、歯科、特に歯周病についての造詣が深く、歯科からの医科との関わり方に、一石を投じていただけるような貴重な講演でした。西田先生は、日本全国から講演を依頼されている先生とあって、歯科衛生士の参加希望も多く、150名を超える事前参加登録がありました。
 講演は先生がなぜ歯科との関わりに興味を持たれた理由から始まりました。8年前、西田先生は非常にメタボリックな状態で、検査数値も悪く、また心臓に不整脈まであったそうです。それが、口腔内のプラークコントロールを徹底的に改善したことによって、症状が改善し、それ以後、歯科への関心を高められたそうです。そのようなご自身の経験から、「私は生まれ変わったら、衛生士になりたい!」との発言には、会場の歯科衛生士からは驚きの声が上がっていました。
 続けて、歯科と全身疾患との関連性について、論文や疫学調査をもとに語って頂きました。地域の歯科医院の数が少ないほど、その地域の残存歯数の数も減少すること、また一人当たりの医療費において、歯科にかけるお金は、医科に比べて極めて小さいことなど、社会医学的な話もあり、改めて、歯科の役割の大きさと、置かれている現状とについて、考えさせられました
 糖尿病と歯周病の関係については科学的根拠に基づいて詳しく述べられました。歯周病と糖尿病で起きている慢性微小炎症は、炎症性ホルモンの分泌を通じて、インスリン抵抗性をもたらし、結果として血糖値を向上させます。この炎症経過が糖尿病と非常に似ており、炎症を通じて歯周病と糖尿病がつながっていることも知りました。これらの科学的根拠を元にして、糖尿病治療のガイドラインにおいても、歯科治療の重要性が年々大きく取り上げられていることも示していただきました。一方で、歯周病治療のガイドラインでは、全身疾患との関係についてのインフォメーションがまだまだ足りないと訴えられました。
 西田先生は、医者でありながら、本年のユーロペリオ9における、最新の歯周病分類についても詳しく論文を読まれ、歯周病についての知識が本当に豊富な先生でした。その先生が、歯科においては、歯周病も治癒がない疾患であり、一生涯歯科医院に通院する必要があることを、もっと国民インフォメーションすべきと訴えられました。糖尿病学会では、国民にわかりやすく、「糖尿病は治癒がない病気である」ことを啓発しています。常に患者と医師がコミニケーションを取りながら一生コントロールすべき病態であり、これは歯周病と極めて類似しているからこそ、歯周病学会も糖尿病学会のノウハウをうまく取り入れた方が良いと言うヒントもいただきました。
 台風が近づくなか、何とか飛行機で来阪して頂きましたが、その甲斐あって、会員の熱気は素晴らしく、西田先生に多くの質問が飛び交っておりました。

 なお、勝 喜久先生の教育講座は、天候の影響により延期となりました。
第130回 第130回研究例会・特別講演会報告
日時:平成30年5月13日(日)
場所:大阪国際会議場 12 階特別会議室
特別講演
座長:阪本貴司先生
演者:医療法人社団 武内歯科医院理事長
鶴見大学歯学部臨床教授
武内博朗先生
演題:生活習慣病を予防するインプラントへの転換
 神奈川県開業、鶴見大学歯学部臨床教授の武内博朗先生をお招きし、生活習慣病を 予防するインプラントへの転換と題し講演頂きました。講演の冒頭で、歯科と生活習慣病 の関係は、(1) 歯周炎の慢性持続性炎症と歯原生菌血症の制御により血管代謝の健康守る こと、(2) 咀嚼機能の回復から良好な栄養摂取と代謝の改善を図ることである。そして歯 科治療こそこれらの生活習慣病の予防に大いに役立つことができると述べられました。
 歯周病や口腔清掃不良があると、歯肉潰瘍面から細菌やLPS が侵入し、歯原生菌血症が 生じます。歯周病を予防し、治療することが、慢性持続性炎症や歯原生菌血症抑制にもな ることから、周術期管理、BRONJ、生活習慣病発症、抗加齢対策として有効である事を具 体的データを示して語られました。具体的方法として、グリシンパウダーによるポケット 清掃、3DS などの具体的方法についても紹介されました。
 欠損歯列の回復と生活習慣病予防の関連については、生活習慣病の発症や全身的虚弱へ の初期の原因に大臼歯喪失による咀嚼機能の低下があります。大臼歯を失うことで、カレ ーやカップ麺など軟性食材である糖質偏重食傾向となり、これらの多くは高GI食品のため、 丸呑みによる食速度増加が伴って過食や高血糖の原因となります。そして耐糖能異常を経 由して糖尿病発症へと移行します。
 これらの具体的な内容は、その後講演された管理栄養士の小林和子先生にも具体的な食 品を通じて、わかりやすく説明頂きました。日頃カロリーにばかり気が行きがちですが、 GI 値にも気を配り食品を選ぶことが大事である事は目から鱗の話でした。
 欠損による咀嚼障害を回復することで、食習慣、食材また運動習慣の改善にもつながり ます。そのためインプラントの様に咀嚼能率を大きく高めることができる補綴は、有効な 治療であると話されました。
 武田先生は、日常臨床においても栄養指導に関して特別なコンサルテーションルームと、 管理栄養士を揃えられ、患者に対して細かな問診を行い、きめ細かな指導をされています。 歯周病治療、栄養指導を、これほどシステマチックにご自身の臨床に取り入れられている 歯科医師は非常に少ないと思われ、すぐには真似できないとは思いますが、超高齢者社会 において、1 つのモデルを見せていただいたような気がしました。
 最後に、先生は、疾病を重症化させることなく、未病の段階で収束させるには、臓器別 の専門医同士の密なコミニュケーションが必須であることを強調されました。つまり、我々 は口腔の専門家として、他の専門の先生と連携しつつ、患者の身体全体に目配りすること が必要である。また、歯科はその入り口になりえる診療科であることを強調されました。
 講演後は、恒例の懇親会が開かれ、武内先生も小林先生も懇親会に参加くださり、多く の会員と楽しく談笑されました。懇親会も、年々参加者が増加し、盛会のうちに終了致し ました。
第130 回例会 大阪国際会議場12 階特別会議室
第130 回例会 大阪国際会議場12 階特別会議室
第129回 第129回研究例会報告
日時:平成30年2月18日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演
座長:阿保淳一先生
演者:東京都開業 中川雅裕先生
演題:包括治療におけるロンジェビティー: 歯周組織・インプラント周囲組織の重要性
 東京より中川雅裕先生をお招きし、「包括治療におけるロンジェビティー: 歯周組織・インプラント周囲組織の重要性」と題して講演頂きました。
 多くの臨床例を軸に、歯周組織やインプラント周囲組織の重要性について講演されました。中川先生の診療では、長期安定性を治療のゴールとし、前歯部においては審美性をも考慮した目標を設定し、それに伴う顔貌、口唇とのバランスなどの検査・診断を行われています。個々の患者の診断結果から導き出された治療戦略に則って、補綴物周囲組織の環境保全と改善を行うことにより、高い予知性を持った心理的機能的な治療結果を得るという考え方を話されました。
 最終的な仕上がりから、歯肉の状態を考慮し、必要に応じて歯周組織形成、GBR、エクストリュージョンなどのテクニックを用いた症例を供覧頂きました。またインプラントの接合様式やインプラントの補綴物の立ち上がりなど、軟組織を長期にわたって維持する細かな部分までも考察されました。
 多くの素晴らしい症例を供覧されましたが、仕上がりの美しさだけでなく、デンタルエックス線検査や口腔内写真など基本的な検査と資料採取を基礎とされている診療の考え方に、我々と同じ考えの基にインプラント治療に取り組まれていることに会員一同共感を覚えました。
教育講演
座長:西川和章先生
演者:大阪府開業 白井敏彦先生
演題:基本治療にこそマイクロスコープを
 教育講演では本会の会員であり、本会主催のインプラント研修セミナーの講師でもある白井敏彦先生に「基本治療にこそマイクロスコープを」と題して教育講演をいただきました。白井先生は臨床にマイクロスコープを積極的にお使いになり、広く講演もされている先生です。インプラント研修セミナーでの講義を下にご自身の臨床を語っていただきました。
 白井先生は、日常は保険治療を中心に行われており、その中でマイクロスコープと拡大鏡をどのように使い分けているか、またそれぞれの利点・欠点についても説明されました。その後、ダイレクトボンディング、根管治療、歯周病治療など、それぞれの症例を供覧されながらお話しいただきました。治療動画や使用器具などで具体的に紹介され、明日からでも日常の治療に約立つ講演でした。
 特殊な症例について使われているだけではなく、毎日遭遇しそうな症例について、マイクロスコープを使用し、診療の質を挙げられているところに感銘を受けました。

第129回例会 大阪国際会議場にて
第128回 第128回研究例会報告
日時:平成29年10月29日(日)
場所:大阪国際会議場 12階 特別会議室

 第128回例会は、サイナスリフトをテーマに会員発表を4名の先生に、依頼講演を3名の先生にお願いしました。また招待講演として当会特別会員で東京都銀座開業の菅井敏郎先生を東京からお招きし、「サイナスリフトをより安全に行うために」と題して講演頂きました。
サイナスリフト手術が国内に広まって10年以上が経過しました。難しい手術ですが、適応症を守って適切に行えば有効なインプラント補綴手段となります。すでに臨床に導入している先生、またこれから始めようと考えている先生も多いと思いますが、術後の長期経過はどうなのか、現在どのような問題が生じているのか、どのような検査や準備が必要なのかなど疑問点も多いと思います。今回サイナスリフトの検証を行う目的もあり、サイナスリフトをテーマに例会を開催しました。

 会員発表の4名の先生は、いずれもしっかりとした診断の元に治療が進められており、術後の経過も詳細に報告され、素晴らしい症例を提示していただきました。
依頼講演では、木村 正先生にサイナスリフト前に知っておくべき画像診断を、小林文夫先生にはサイナスリフトの合併症について、阪本貴司先生には当会研修セミナーでのサイナスリフト教育について、講演頂きました。招待講演では菅井敏郎先生にサイナスリフトをより安全に行うために、と題して講演頂きました。

 サイナスリフトの広がりと共に、間違った診断と手技も広まりました。術後の合併症として、ラテラルウインドウ部の補填剤が”爆発する”などと吹聴する先生や長期経過を経験していないにも関わらず、自己流の術式や使用する補填剤について話す先生、稚拙な知識と技術としか言いようがありません。そのためにも、正しい知識と技術を広め、サイナスリフト手術が匠の技術ではなく、多くの歯科医が安心で安全にこの手術を行えるようにする必要があります。いたずらにリスクを強調し、そのリカバリー技術を自慢するような講演も、正しい教育とは言えません。今回の例会では、すべての演者に共通の論点があったように思います。
 我々の日々の研鑽は、すべては患者のためにあり、そのために正しい知識と技術を身に付けなければなりません。菅井敏郎先生には講演後の懇親会にも参加頂き、多くの質問に答えて頂きました。サイナスリフト手術が臨床に導入された頃から本手術を手がけられ、日本で最も経験の豊富な先生の言葉で、間違った診断と術式について厳しく、はっきりと否定されました。
 我々と同じ考えであったことに安堵した会員も多かったと思います。
会員発表Ⅰ

座長:菅井敏郎先生

演者:大阪市中央区開業 阿保淳一先生

演題:サイナスリフト長期経過症例の考察
患者 K.K 当時61歳 女性
主訴:右上の歯が動いてきた
歯科既往歴:上顎左右の第一・第二大臼歯が欠損しており部分総義歯を作ったが使用していなかった。右上5番のぐらつきが大きくなり咬合時には痛みを感じるようになり平成17年7月来院した。
全身既往歴:特記事項なし
口腔内所見:歯周病検査では著名な炎症は無かった。右上5番は動揺が激しく保存不可な状態であった。その他の残存歯に異常は見受けられなかった。  

X線所見:上顎洞の近接がパノラマ所見から疑われたのでCT撮影も行い、抜歯後の治癒を見込んでも骨の高さは5mm程であった。
治療計画:当該部位の顎堤の形状から水平的な骨造成は困難と診断しサイナスリフトが適用されると診断した。また、対合歯は第二大臼歯まであるが上顎右側第二大臼歯部の対合とのクリアランスは極めて少なく、また右上第一大臼歯で接触させることで挺出を防ぐことは可能とみて右上5 . 6番部位へ2本のインプラント埋入を行うことを計画した。  

治療の経過:平成17年11月にインプラント・サイナスリフトオペを施術。  
ラテラルウィンドウを開窓し上顎洞粘膜を挙上したのち右上5.6番部のインプラント 窩を形成、DFDBA2.0cc填入後ストローマン社製インプラント φ4.1 スタンダードプラ ス10mmを埋入した。ラテラルウィンドウは吸収性のGCメンブレンでカバーした。
平成18年4月2時オペを行い、粘膜治癒後プロビジョナルクラウンの印象の後、 プロビジョナルクラウンを装着
久しぶりの歯冠ができたことで頬粘膜を噛んでしまわないか、清掃性や咬合の確認を行った後に最終補綴の印象を行い、6月に最終補綴物を装着した。その後は3~4ヶ月のメンテナンスを行い、途中膝や腰の手術でメンテ期間が長くなった時期もあったが現在まで良好に経過している。
会員発表Ⅱ

座長:菅井敏郎先生

演者:大阪市開業 小室 暁先生

演題:上顎臼歯遊離端欠損部へサイナスリフト併用インプラント補綴を行った症例の
       12年経過報告
 Ⅰ目的:
上顎臼歯遊離端欠損部へのインプラント埋入において、上顎洞との垂直的距離が近接している場合、サイナスリフトによって上顎洞底を挙上し、埋入を行うことがある。しかしながら、補綴後長期にわたってその経過を報告している例は少ない。
今回,上下臼歯部の両側遊離端欠損に対し,サイナスリフト併用インプラント補綴を行った症例の12年経過を報告する。

Ⅱ症例の概要: 
患者は初診時52才女性,上下顎左右臼歯部欠損による咀嚼障害を主訴に,2003年8月当院を受診した.初診時,上下両側の臼歯はすべて欠損しており義歯も装着されていなかった.咀嚼は前歯部のみで行われ上顎残存歯は咬合性外傷,歯周病により動揺していた. 
現病歴は他医院にて上下の可徹床義歯を作成するも違和感が強く使用していなかった.全身的な既往歴は特になかった.上下両側臼歯欠損症による咀嚼障害の診断の下,再度義歯の作成を行ったが,患者は違和感のためインプラント補綴を希望した.各種X線検査とCT検査などから左右上顎臼歯部は解剖学的に垂直的骨量が不足していたため,サイナスリフトによる骨造成手術も併用することとした.
歯周基本治療後,2003年10月,下顎欠損部にTiインプラント(Frialit2,φ3.8mm,長さ11mm)を左右2本ずつ埋入した.同年11,12月,上顎の左右臼歯部に上顎洞底挙上術を施行し,3か月後に右側臼歯部に下顎と同じインプラント(φ3.8mm,長さ11mmX2本,φ4.5mm,長さ13mmX1本)を, 4か月後に左側に(φ3.8mm,長さ11mmX1本,φ3.8mm,長さ15mmX1本)埋入した.2004年10月に二次手術を行いプロビジョナスレストレーションを装着し,咬合や清掃性に問題がないことを確認した後,2005年2月にハイブリッドセラミック冠を装着した.

Ⅲ経過: 患者は現在3月ごとにメンテナンスで来院している.上部構造装着後約12年を経過しているが,X線所見において骨吸収は認められず,周囲歯肉の炎症やインプラントの動揺も認めず経過良好である.上顎前歯の動揺も消失し,咬合も安定している. Ⅳ考察および結論: 上下両側臼歯遊離端欠損症例において,サイナスリフト術を併用しインプラントによる補綴治療を行い咬合機能を回復した.12年経過後も、修復された臼歯部のバーティカルストップは維持され,良好に維持されている。また、前歯部の保護という観点からも有効であると思われた.
会員発表Ⅲ

座長:菅井敏郎先生

演者:箕面市開業 寺嶋宏曜先生

演題:マイクロスコープを用いた低侵襲サイナスリフト
サイナスリフトは古くから行われている確立された治療法であるが、患者の身体的負担が大きく、合併症のリスクも少なからず存在する。  そこで、今回は、「マイクロスコープを用いた低侵襲サイナスリフト」と題して、患者の身体的負担軽減を図った2種類の術式(クレスタルアプローチおよびラテラルアプローチ)を、症例を用いて紹介し、これらの術式の有効性をお伝えしたい。
会員発表Ⅳ

座長:菅井敏郎先生

演者:堺市開業 白井敏彦先生

演題:サイナスリフトを併用して自家歯牙移植をおこなった1症例
目的:サイナスリフトを併用し,左側上顎大臼歯部に,右側下顎智歯を自家歯牙移植した.また,この移植歯を固定源として矯正治療をおこなっている症例について報告する.

症例の概要:患者は34歳女性.2013年4月17日初診.咀嚼障害と26違和感を主訴に来院した.口腔内所見としては齲蝕が多発,すでに臼歯部欠損が存在し,それを放置したためと思われる咬合平面の乱れが認められた.補綴治療だけでは治療困難と判断し,矯正治療を含めた包括的な治療計画を患者に提案し,了承を得た.26は保存不可能と判断し抜歯した.5ヶ月後,抜歯予定の48を,左側上顎臼歯部にサイナスリフトを併用し自家歯牙移植した.2014年3月,Angle class Ⅰ. Skeletal class 2.div.1の診断にて移植歯を含めて矯正治療を開始し,3年以上経過した現在も矯正中である.

結果:2017年8月現在,移植歯は吸収等認められず機能している.

考察:サイナスリフトを併用した自家歯牙移植の報告はPubMedを検索しても以外と少ない。今回の発表を通してサイナスリフトを併用したインプラントと自家歯牙移植の比較検討も考察してみたい.
依頼講演Ⅰ

座長:阿保淳一先生

演者:西宮市開業 木村 正先生

演題:サイナスリフト前に知っておくべき画像診断
 近年、CBCTがパノラマ装置と一体化した複合機として普及してきた。CT画像は3次元的な構造を把握することができ、インプラント、特にサイナスリフトの術前診断には必要不可欠な検査と認知されている。また、撮像された寸法は正確と考えられており、下顎管や上顎洞底との距離の測定や、経時的なインプラント周囲骨レベルやサイナスリフト後の骨補填材の吸収状態の評価に用いられている。しかし、精度が高いと考えられているCT画像でも輪郭が歪んで撮像されることがある。さらに、CBCT画像から得られた寸法は収縮し、精度とその再現性に疑問の余地が残る。

 一方、収縮は補正することで、従来ならサイナスリフトが必要でインプラントを断念していた症例でも適応できる可能性が存在する。安全にサイナスリフトを行うためには、術前に、隔壁など上顎洞内の構造を適切に評価することが必須であり、CT検査以外の画像検査も併用し、実際の状態を総合的に見極める必要がある。そこで、パノラマや、セファロ、単純断層による上顎洞の評価、CT画像との比較も紹介したい。急増するサイナスリフトの医事紛争、画像検査の重要性、耳鼻科からのCT画像がらみの診断書など、医療安全に関わる対応のヒントを提供し、サイナスリフトの画像診断を議論したい。
依頼講演Ⅱ

座長:阪本貴司先生

演者:医療法人社団 小林歯科医院 小林文夫先生

演題:Sinus liftの合併症について
 Sinus liftは1975年Tatiumにより上顎洞側壁から上顎洞底粘膜を拳上した後に骨移植したことにはじまり, 近年上顎洞底拳上術は代表的な骨造成法として確立されてきている.しかしSinus lift はインプラント治療の中でも比較的手術侵襲が大きく上顎洞に関与していることから様々な合併症が引き起こす.
Sinus lift の合併症は出血, 歯肉粘膜裂開, 洞粘膜裂開,隣在歯の損傷, 縫合部裂開,瘻孔, 移植材の喪失, Osteomeatal complex obstruction,合併症に伴って併発する感染拡大から上顎洞炎, 神経損傷, インプラント体の移動, インプラントのインテグレーション不良等が発生する. これらの合併症を引き起こさないためにSinus liftは上顎骨,上顎洞の解剖・生理を理解するとともに術前に上顎洞を中心としたOsteomeatal complex,上顎洞内の疾患,残存歯の上顎洞内への影響等について診断しなければならない.手術手技においても上顎洞と口腔内との確実な交通が遮断された合理的な術式が求められる.
上顎洞内は口腔内とは異なり線毛上皮で被われており, 上顎洞内の線毛上皮は外界からの感染を防御するための強力な機能を果たしている. 上顎洞底挙上術を行うにあたっては,この「自浄能力」を妨げないよう最大限配慮するとともに, 上顎洞底や上顎洞内に感染が生じた場合にはこの自浄能力を妨げない治療を速やかに行う必要がある.
今回はSinus liftの合併症を検証し術前診断のチェックポイント, 合理的な手術手技,臨床医にとって重篤な合併症である感染, 上顎洞炎の診断と適切な処置法について述べる.
依頼講演Ⅲ

座長:山野総一郎先生生

演者:大阪市開業
大阪口腔インプラント研究会 施設長
阪本貴司先生

演題:当会研修セミナーでのサイナスリフト教育について
 インプラントの術後の合併症として下顎神経麻痺に次いで多いのが上顎洞関連手術のものである1)。またラテラルウィンドウテクニックによるサイナスリフト手術はインプラント埋入手術の難易度を3段階に分類したSAC分類の中でも最もリスクの高い外科的Complexに分類されている2)。そのためこれら手術を十分な技術と経験を持ってできる専門医は少なく、本術式を学ぶ施術者への教育は我々研修施設に課せられた重要な課題である。
当会の研修セミナーでは2012年度よりサイナスリフト手術を学ぶための模型実習を導入している。今期2017年度まで6期133名が本模型を使用し、サイナスリフト実習を行った。今回その実習模型の概要と、サイナスリフト手術教育における有用性を報告する。
実習模型に必要な要件は解剖形態の類似だけでなく、術中に生じやすい合併症を模型で疑似体験できることである。本模型は解剖学的に本物の骨と類似した上顎洞形態と上顎洞骨壁を有している。また疑似洞粘膜も薄く作成され、模型の洞内壁面に接着されている。このため洞粘膜を剥離する際には、剥離器具を適度な力で正しく骨内壁に沿って使用せねば容易に穿孔する。術中に生じやすい種々合併症が本模型で疑似体験可能である。 実習手順は、切開・剥離・上顎洞側壁のラウンドバーによる開窓・洞粘膜の剥離挙上・インプラントの埋入・縫合の順序としている。
133 名の歯科医が行った本模型を使用した手術実習の結果から、本模型実習に術者の臨床経験がどれぐらい反映されるかも検証した結果、サイナスリフトまたは上顎洞根本手術経験者は模型実習でも成功率が有意に高いことが明らかとなった。
本模型を使ったサイナスリフト実習は実習生の臨床経験の有無を反映した結果が期待でき、サイナスリフトの臨床術式の手技を学ぶのに有用と考えられる。
招待講演

座長:久保茂正先生

演者:東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来 臨床教授
 医療法人社団UC会銀座UCデンタルインプラントセンター 所長
 菅井敏郎先生

演題:サイナスリフトをより安全に行うために
 昨今の歯科インプラント治療の普及に伴い、医療トラブルが増加していることは周知の事実である。日本顎顔面インプラント学会の「インプラント手術関連の重篤な医療トラブル」調査報告によると、第一回目(2009~2011年末)の集計では神経損傷が最も多かったが、新たな集計(20012~2014年末)では上顎洞炎が最も多く(21.1%)、次いで下歯槽神経損傷(18.9%)、上顎洞内インプラント迷入(18.6%)の順であった。上顎洞炎と上顎洞内インプラント迷入の多くは、歯槽頂アプローチを含むサイナスリフトに関連しており、トラブルの原因として術者が十分な知識とスキルを習得しないまま安易に手術を行うことが懸念されている。
  周知のように、広義のサイナスリフトには、側方アプローチ(ラテラルウインドウテクニック)と歯槽頂アプローチ(ソケットリフト)が含まれる。側方アプローチは、手術侵襲がやや大きい欠点があるものの、インプラントが初期固定を得るための骨がない場合でも適用可能であり、明視下に必要十分な上顎洞粘膜の剥離挙上を行える。歯槽頂アプローチは、低侵襲という利点がある反面、インプラントが初期固定を得るための骨がなければ適用できないこと、盲目的手術であるためインプラント迷入や上顎洞粘膜損傷、出血などに対応できないという欠点がある。歯槽頂アプローチの方が技術的に容易であるとの点から、側方アプローチを習得せずに歯槽頂アプローチを行う歯科医師もいるが、習得の順序としては明視下に行えトラブルに対応しやすい側方アプローチから習得すべきであることはいうまでもない。  
  演者は1989年よりサイナスリフトの臨床に携わってきたが、今回の講演では自身の四半世紀に渡る経験から、長期経過症例の供覧、サイナスリフトのトラブルとその対応・回避法、サイナスリフトをより安全に行うためのポイントに関して解説する。

120名超える大阪国際会議場12階特別会議室
120名超える大阪国際会議場12階特別会議室

懇親会も大いに盛り上がりました
12階特別会議室 ホワイエにて
懇親会も大いに盛り上がりました  12階特別会議室 ホワイエにて
第127回 第127回研究例会報告
日時:平成29年9月3日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室

これからの歯科界のトップランナーとして活躍される若手、中堅3名の先生方にご講演をお願い致しました。分野も基礎、補綴、口腔外科とそれぞれの分野の最前線に ふさわしい講演でした。参加者も100名を超え、会場周囲に補助椅子も並べ満席の会場も熱気に包まれ、活発な意見交換がなされました。
招待講演1

座長:長田卓央先生

演者:徳島大学大学院医歯薬学研究部 顎機能咬合再建学分野
   大島正充先生

演題:歯・歯周組織を包括的に再生可能な歯科再生医療の技術開発
 徳島大学大学院医歯薬学研究部 顎機能咬合再建学分野の大島正充先生には、歯・歯周組織を包括的に再生可能な歯科再生医療の技術開発と題して講演頂きました。大島先生は昨年度開催した当会の30周年記念例会で講演頂いた理化学研究所の辻 孝教授の下で、歯科再生医療についての研究をされています。
 再生医療の最終目標は、これまで材料の違いはあるが、昔より変わらなかった欠損部位を“補う“という治療に対して、機能的に完全な再生器官で置き換える“器官再生医療“であることを強調され講義を開始されました。現在の技術は、マウスを使用した歯胚を再生し、そしてその歯胚を再度マウスに移植して正常な解剖学的構造を有している歯を萌出させるところまで出来上がっていることを説明されました。またマウスでの実験を、より実用に近づけるため、大型動物である犬におけるモデルも示されました。この犬のモデルでも、マウス同様、構造的および機能的に完全な歯の再生技術が実証されています。また歯胚ではなく、IPS細胞を使用する方法など、今後の展開も述べられました。
 最後に、歯根膜を有したインプラントである、ハイブリッドインプラントについて、最近の知見を加えてご説明いただきました。これは歯小嚢組織を巻き付けたインプラントを口腔内に入れることで、歯根膜組織が再生される可能性を示されたものです。今回さらに、成体由来の歯根膜組織・細胞とメカニカルストレスを付与しうる移植技術の融合により、天然歯と同等の歯周組織構造を有する実用化型のバイオハイブリッドインプラントの可能性にも言及されました。歯科医学のパラダイムシフトともいえる技術の現状と将来を、簡潔にご講演いただきました。
招待講演2

座長:藤本佳之先生

演者:大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 クラウンブリッジ補綴学分野
   中野 環先生

演題:審美領域におけるインプラント治療
         -前歯部インプラント治療における硬・軟組織の経時変化
 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座クラウンブリッジ補綴学分野の中野 環先生に審美領域におけるインプラント治療をテーマに講演頂きました。
 上顎前歯部インプラント治療において審美的に安定した長期予後を得るためには、様々な外科および補綴的な配慮が必要となります。自身の症例を供覧し、それに関連した国内外の論文や報告例と比較し、文献に記載された内容の信憑性や論文の読み方なども交えて抜歯即時埋入についてまとめられました。そして中野先生の講座で研究されている上顎前歯部欠損後の骨の吸収変化、そして海外ではほとんど研究されていない軟組織の変化など、最新の研究結果も報告されました。またプラットホームスイッチングインプラントのアバットメントの連結部の様式、埋入時期、埋入深度、骨と軟組織の増生処置が予後に及ぼす影響、上部構造そのものの形態についても考察されました。
 CTを使用した軟組織や硬組織の経過を詳細に分析する研究は、大学ならではと思われます。結果として、即時埋入でも待機埋入でも結果に差がなく、硬組織よりも軟組織の増生の方が頬側骨の吸収を防ぐ要因となり得るなど、臨床家として大変興味深い講演会でした。
招待講演3

座長:木村 正先生

演者:徳兵庫医科大学歯科口腔外科学講座
   高岡一樹先生

演題:骨代謝に影響する疾患・薬剤とインプラント治療
 兵庫医科大学歯科口腔外科学講座の高岡一樹先生には、骨代謝に影響する疾患・薬剤とインプラント治療と題して講演頂きました。兵庫医科大学において、形成外科などとも連携しつつ、有病者の外科治療、またインプラント治療にも従事される、医科歯科連携の最前線で活躍される先生です。
 まず近年の外科外来の傾向として、骨折などの外傷は減り、代わりに高齢化に伴う多岐にわたる障害が増加しており、そのため、インプラント治療時にも全身的なリスクファクターを考慮すべきケースが増加していることを指摘されました。今回は、ご専門である、骨代謝異常についてお話しいただきました。骨粗鬆症,糖尿病,腎不全などの疾患や,ステロイド薬やビスフォスフォネートなどの薬剤は骨代謝に影響してインプラント治療に対するリスク因子になりえます.まず、糖尿病、腎不全が、どのように骨代謝に影響を及ぼすのか、その機序をわかりやすくご講義いただきました。その上で、ビスフォスフォネートなどの骨吸収抑制剤の副作用の一つであるARONJについて、詳しく講演いただきました。インプラント治療においてのリスクファクターは、インプラント埋入手術,不適合義歯,インプラント周囲炎であると述べられましたが、術後の感染防止、メインテナンスの重要性を強調されていたことが印象に残りました。

第127回例会 大阪国際会議場12F会議室
例会は毎回100名を越えて満席です。
第127回例会 大阪国際会議場12F会議室  例会は毎回100名を越えて満席です。

例会開始前に平成29年、30年度新役員が紹介されました。
例会開始前に平成29年、30年度新役員が紹介されました。
第126回 特別講演

座長:阪本貴司先生

演者:日本大学松戸歯学部放射線学講座 教授
   金田隆先生

演題:基礎から学ぶインプラントの画像診断
 日本大学松戸歯学部放射線学講座教授金田 隆先生をお招きし、“基礎から学ぶインプラントの画像診断”と題して講演頂きました。金田先生は、公益社団法人日本口腔インプラント学会が作成した「口腔インプラント治療指針2016年」のテキストの画像診断部分を執筆された先生でも有名で、各種講演会でインプラント関連の画像診断についてわかりやすく講演されています。
 周知のごとく、インプラント治療の画像検査には、従来の口内法(デンタルエックス線)検査やパノラマエックス線検査に加えてCT画像での診断が必須となっています。また、これらの画像診断は、術前診断や埋入手術だけでなく補綴計画などにも応用されています。
 金田先生の施設では、年間1000件以上ものCT撮影依頼を受けており、それらのCTデータを詳細に分析されています。インプラントに関する画像分析に精通されている理由も理解できました。
 講演では、1)インプラント治療に必要な画像検査法の特徴、2)CTの基礎と臨床応用、3)CT正常解剖、4)鑑別診断を含めたインプラント治療に必要なCT読像およびデータ取り扱いについて講演されました。
 CT撮影の基本的な仕組みについて説明され、その後画像診断の目的として、顎骨の骨量・骨質の診断、インプラント治療の障害になる疾患の評価などを示されました。またデジタル化したものを一括管理することで、診療の効率化やリスクマネージメントの向上につながることも強調されました。
 従来の口内法、パノラマエックス線検査およびCT検査のそれぞれの特徴と検査順序、利点、欠点などを分かりやすくまとめて解説頂きました。口内法、いわゆるデンタルエックス線検査は簡易で被曝量も少なく、歯の周囲骨やインプラント周囲炎の診査などに適しています。CTに関しては、ヘリカルCTとコーンビームCTのそれぞれの特徴について教えて頂きました。CTの利点は、当然ながら3次元情報のため、単純Xではわからない骨質などの情報が得られ、モードによって、軟組織から硬組織まで様々な分析が出来ます。CTがなければ、重大な事故につながったかもしれない症例について、様々な実例を供覧いただきました。
 CTはモードによって見える像が大きく異なるため、局所だけではなく全体にわたって読影することが大切である、また診断したい病変部以外にも、画像所見で異常が見つかった場合にはそれらを全て患者に説明する義務があることなど、無症状の病変(RIS)についても説明されました。また、CTを自院で撮影したとしても、大学病院などと連携し、外部の専門医に相談できる環境を構築する必要性についても繰り返し強調されました。
 今回のようにCTの仕組みから、臨床、またマネージメントまで、総論的に伺える機会は少なく、会場からも活発な議論が交わされ、また、その後の懇親会にも参加頂き、引き続き様々な議論が交わされ、非常に有意義な特別講演となりました。



 第126会例会 大阪国際会議場12階特別会議室150名の参加者で満席です。
第125回 第125回研究例会報告
日時:平成29年2月26日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演

座長:久保茂正先生

演者:明海大学歯学部 機能保存回復学講座 保存治療学分野 教授
   横瀬敏志先生

演題:力学的負荷と骨代謝 その基礎理論とインプラントへの応用
 招待講演では、明海大学歯学部 機能保存回復学講座 保存治療学分野 教授 横瀬敏志先生にご講演頂きました。先生は、保存修復学がご専門でありながら、NASAにおいて骨の代謝について研究をされていた異色の経歴をお持ちの先生です。宇宙飛行士は、宇宙から帰ってくると、骨の大きさは変わらないが、密度が低くなります。ラットも、宇宙にしばらくいるだけで、ミネラルの沈着がなくなって、骨粗しょう症に罹患するという実験結果があります。すなわち、骨の形態は外部に加わる力、すなわちメカニカルストレスに反応するという特徴を持っていることが分かっています。
 最近では、このメカニカルストレスに反応して、骨代謝がコントロールされていることが分かっているようです。そのメカニカルセンサーになっているのが、オステオサイト(骨細胞)で、骨に歪みが出ると、シグナル因子を萌出し、骨芽細胞と破骨細胞の両方に作用し、骨代謝をコントロールしているとのことです。講演では、これらの考え方がWolffの法則(骨の形状と構造は骨に加わる力によって支配され,それに適応するように形つくられている)にも合致していることを力説されました。またFROSTの理論を引用され、日常にかかる力より力が加わらない時(Disuse)に骨吸収が優先して起こり、加わる力が日常レベルを超えた場合(overload), 骨形成が優先的に 起こることも示され、インプラントにおいても、適切な咬合力を与え、その周囲で適切なリモデリングが起こる状態となって初めて成功といえると強調されました。
 さらに、インプラント周囲の骨がこのように常に形態を変化させる以上、インプラント-インプラント間の位置関係や、咬合関係も常に変化しうるという、我々にとっては非常にセンセーショナルな見解も示されました。
 後半では、先生の御専門であるレーザーの骨再生への応用についてお話がありました。低レベルエネルギー照射(LLLT)が骨細胞に対してメカニカルストレスと同じ作用があり、骨代謝をコントロールできる可能性があるとのことです。このことを、培養したオステオサイトにおける実験に始まり、歯周治療、GBRやグラフト、根管治療などにおける実際の臨床例に至るまで、幅広く講演頂きました。とは言うものの、レーザーは根本治療を行った後に、治癒を促進するために使うものであって、レーザーのみで治癒が完結するものではないことも強調されていました。


第125回例会 大阪国際会議場
会員発表

演者:高知県開業 西村嘉展先生

演題:下顎右側臼歯遊離端欠損部にインプラント治療を行った1症例


演者:大阪府開業 田中麻紀先生

演題:下顎左側第二大臼歯部にインプラント治療を行った1症例
 会員発表では、昨年9月に名古屋で開催された公益社団法人 日本口腔インプラント学会 学術大会にて行われた、ケースプレゼンテーション試験で発表し、合格された2名の先生に発表して頂きました。試験では、単にインプラントの埋入術式だけでなく、初診時の医療面接から、残存歯を含めたすべての検査と診断、患者への説明、インフォームドコンセント、上部構造の設計、術後の管理までを簡潔にまとめて10分間でプレゼンする必要があります。またそれぞれについて口頭試問を受けて合格しなければなりません。
 両先生とも簡潔に自身の症例をまとめて発表されました。また当日の試験の雰囲気、質問内容やそれに対する回答なども話されました。これから試験を受けられる先生にも非常に有意義なものになったと思われます。
 会場には試験を受けたポスターも張っていただき、発表前後には多くの先生方が閲覧し参考にされていました。
最後に阪本会長、小室先生から試験を受けるにあたっての注意事項についての補足がありました。今年も、6名の先生が、仙台での学会で試験に臨まれます。全員合格を目指して、研究会としてもサポートしていきたいと思います。
第124回 創立30周年記念
第124回研究例会報告
日時:平成28年11月13日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
シンポジウムⅠ  組織再生の最前線

座長:阪本貴司先生

演者:東北大学大学院歯学研究科
        分子・再生歯科補綴学分野 教授
        江草 宏先生

演題:再生歯科医療を材料と生体から理解する
二十世紀半ばにBrnemark博士がオッセオインテグレーションを発見して以来、口腔インプラント治療は長い年月をかけて普遍的なものとなりました。さらに近年では、インプラント治療は「再生医療」という概念を取り入れながら発展し、「インプラント・再生治療」として、これまで適応が困難であった症例においても審美的な機能回復を可能にしつつあります。Academy of Osseointegrationは2010年に「生物・科学技術の進歩が口腔インプラント治療に与えるインパクト」と題したコンセンサス会議を行い、「近い将来、ティッシュ・エンジニアリングあるいは幹細胞技術はインプラント治療に確かな恩恵を与えるであろう」と報告しました(Int J Oral Maxillofac Implants. 2011)。それから約5年経った現在、この予想は的中しつつあるわけです。
このような世界的なインプラント・再生治療の流れを考えると、治療を成功に導くためには、もはやメーカーが提供するインプラントシステムの理解だけでは十分ではなく、これに加えて、骨補填材、生体活性因子、バリアメンブレン等の材料が組織再生の過程で生体に対して引き起こす反応(炎症、治癒、再生)を、細胞、さらには分子レベルでイメージできることがアドバンテージとなる時代になっているのです。
本講演では、インプラント・再生治療の過程で生じるであろう生体反応を理解するために必要な最低限の基礎知識を、できるだけ平易な言葉でお伝えしてみたいと思います。これによって、次演者の石川知弘先生の素晴らしい臨床例、そしてその後の妻木範行先生ならびに辻孝先生が示される夢のある近未来の再生医療への理解が深まることを願っております。
演者: 5-D Japan ファウンダー 石川歯科

   石川知弘先生

演題:歯科臨床における再生治療の現状と課題
        ~あきらめない歯周治療とインプラント治療~
歯周組織再生療法が臨床に応用されるようになって、25年以上が経過している、当時は非吸収性の膜を縫合によって歯に固定し歯周組織再生の妨げになる上皮のダウングロースを防ぎ再生の場を維持することによって目的を達成することを目指した。しかし殆どの症例においてフラップは隣接面で裂開し、術後の管理状態によっては十分な結果を得られない場合もあった。
その後EMD, PRP, rh-PDGF,のような細胞に働きかけ治癒を促進させることによって歯周組織を再生する方法が開発され国内外で使用されるようになり、手術は比較的シンプルになったが、依然として他を圧倒する成績を示す方法が現れておらず、どれもが術者の技量によって結果に大きな差が生ずる処置であると考えられる。 インプラント治療は欠損補綴において他の治療法にはない大きな治療効果を持っているが、一つ間違えると患者に大きな損失を与えてしまう可能性を持っている。今日失われつつあった信頼を取り戻す為には臨床家一人一人が、目の前の患者に対して、適切に応用していく以外に方法はない。患者にとってインプラント治療において求めることは、自然な外観で快適に長期にわたって機能する歯を出来るだけ低い侵襲と短い期間で得ることであろう。歯を失えば、その状態に応じて必ず歯槽骨は吸収する。また長期にわたり可撤性義歯を使用された場合さらに吸収は進むであろう。したがってインプラント治療を成功させるには多くの場合目的を達成するためには歯槽骨の再生が必要になる。Guided bone regeneration法は骨移植材を応用することにより比較的侵襲が低下し、臨床家にとって実施しやすい処置である、紹介されて20年以上が経過するが、現在までに膜の改良、スペースを維持する方法、フラップマネージメントの進歩により、その適用範囲が拡大されている。本講演では再生療法によって、進行した歯周病罹患歯をどこまで救えるのか、またインプラント治療にどのようなメリットがもたらされるか、そして患者にとってどのような恩恵がもたらされるかを、症例を通して検討したい。
シンポジウムⅡ 組織再生2020

座長:江草 宏先生

演者:京都大学iPS細胞研究所     
    増殖分化機構研究部門 細胞誘導制御学分野 教授
    妻木範行先生

演題:iPS細胞技術を使った関節軟骨欠損の再生治療研究
軟骨再生治療において、充分量の高品質な軟骨を移植用に供給することが求められている。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、あらゆるタイプの体細胞に分化できる性質(多能性)と、ほぼ無限に増殖できる(自己複製能)能力を持つ。我々はヒトiPS細胞を高品質な軟骨細胞へと分化誘導し、さらに軟骨組織を作る方法の開発を行っている。そして、それを関節軟骨の欠損部に移植する再生治療の実現を目指しており、これらの取り組みを紹介したい。
演者:国立研究開発法人 理化学研究所
    多細胞システム形成研究センター
    器官誘導研究チーム、チームリーダー
    株式会社オーガンテクノロジーズ、取締役
    辻 孝 先生

演題:未来歯科治療としての歯の再生
歯科医療は、齲蝕、歯周疾患の治療をはじめ、これらの疾患により歯を喪失した場合の治療方法として入れ歯やブリッジ、歯科用インプラントなどを用いた歯の機能代替治療も広く普及しており、国民の健康維持に大きな役割を果たしている。歯科再生医療における大きな目標は、喪失した歯を再生により取り戻す「歯の再生治療」である。
歯の再生治療は、審美的にも、生理的、機能的にも完全な回復につながる新たな生物学的治療技術として期待されている。外胚葉性器官のひとつである歯は、胎児期の上皮・間葉相互作用によって誘導された歯胚から発生する。歯を再生するためには人為的な細胞操作によって歯胚を再生し、生物の発生システムを利用して再生歯を創り出す戦略からすでに30年以上にわたり研究が進められてきた。 私たちは、正常発生可能な歯胚を再生するための三次元的な細胞操作技術である「器官原基法」を開発した(Nature Methods, 2007)。さらに、この再生歯胚を成体の歯の喪失部位へ移植することにより、再生歯が萌出、咬合し、骨のリモデリング能を有する歯根膜を介して骨と連結機能すると共に、外部からの侵害刺激を中枢に伝達しうる神経機能も再生することを明らかにした(PNAS, 2009)。また再生歯胚から歯と歯根膜、歯槽骨を有する再生歯ユニットを移植すると、骨性結合により生着し、再生歯胚と同様の機能を有することを明らかにした(PLoS ONE, 2011)。さらに最近、骨結合型インプラント治療の改善にむけて、歯周組織を有するバイオハイブリッドインプラントを開発し、チタンインプラントと歯槽骨を歯根膜で結合させ、歯の移動や知覚の回復を可能とした(Sci. Rep. 2014)。さらに最近、歯胚を力学的に分割することにより、複数の機能的な歯を再生できることを明らかにした(Sci. Rep. 2015)。 本講演では、未来の歯科治療としての歯科再生医療の実現に向けた基礎研究の戦略とその進展を紹介すると共に、その現状と課題を考察する。
第123回 創立30周年記念 
第123回研究例会報告
日時:平成28年9月25日(日)
場所:大阪国際会議場 10階1009・1010会議室
30周年記念講演

テーマ“10年前のその治療選択は本当に正しかったのか、その後の経過から言えること”
今回は、30周年記念講演として、“10年前のその治療選択は本当に正しかったのか、その後の経過から言えること”と題して、4人の会員の先生に自身が過去に研究会で発表された症例を中心に供覧し、当時の自身の治療を振り返って講演頂きました。
発表Ⅰ

演者:大阪市開業 阪本貴司先生

演題:平成17年症例検討会提示症例から
2症例提示されました。最初の症例は、左下5、6、7番部の垂直的な大きな骨欠損に対して、長径8mm×径5.0mmのショートインプラント2本埋入し、GBRを併用した症例でした。先生が2010年に学会(日本口腔インプラント学会 札幌市)にて報告した8ミリ以下のショートインプラントでは太い径を使用する必要があるとする研究結果を症例の経過と共に説明されました。この症例では、合わせて対合歯の7番の歯周炎の治療後の経過も報告されました。これも2009年(日本口腔インプラント学会 大阪市)に報告されたインプラントの対合歯は、強い咬合負担がかかり、破折のリスクが高くなる研究結果を交えて、対合歯の経過を説明されました。自身のこの十年の発表成果を実証するような臨床例でした。2症例目は、下顎の両第1大臼歯の欠損に対して、第2大臼歯の矯正治療と、歯牙移植により対応された症例の現状の発表でした。どちらの歯も、臨床的には成功といえるものの、阪本会長は現在なら、ブリッジを中心に治療計画を立てられるとのことで、その理由を、前回発表時から現在までの先生の考えの変化、社会情勢の変化などから説明されました。
発表Ⅱ

演者:大阪府開業 勝喜久先生

演題:平成19年 日本口腔インプラント学会認定講習会症例提示症例から
認定講習会で症例提示をされた症例を中心に治療の組み立て、症例経過について話されました。臼歯部の咬合が崩壊した症例について、インプラントを用いて修復した症例の発表でした。このような症例に対しては、オーバーレイプロビジョナルという暫間補綴を、歯の咬合面の上に乗せるように合着することで、仮の咬合を作り、顎関節や咀嚼などの状況を観察する方法を提示されました。これにより安全に、そして最終的に目標とする咬合が妥当か判断できます。その他、印象方法や咬合調整についての考察なども交えられ、先生の緻密な臨床を見ることができました。最後に、先生が常に基本とされている治療の流れを示されました。顎関節の安定→上下顎の調和→歯列弓の連続性と対称性の回復→硬組織の量、軟組織の抵抗性→支台歯の健全化と機能回復という流れを基本とされていることを教えて頂きました。
発表Ⅲ

演者:中島 康先生

演題:歯周疾患罹患歯とインプラントは共存できるのか?

        重度歯周病患者へのインプラント治療の10年以上の臨床経過
重度歯周病患者へのインプラント治療の取り組みの変遷について、臨床例から発表頂きました。初期のころは、大規模なGTR法を併用した侵襲性の高い治療をされていましたが、最近ではエムドゲイン、吸収性膜の発達、インプラントの表面性状の発達などにより、この10年でも低侵襲な手技が可能となってきています。しかし、歯周治療、インプラント治療についての基本コンセプト、プラークコントロールの重要性に変化はないことを強調されていました。
発表Ⅳ

演者:山野総一郎先生

演題:長期経過症例を通して考える治療法選択基準
先生が入会された当時の理事会での先輩先生方との思い出から講演を始められ、その後、症例提示を頂きました。また“エビデンスに関する考察”として、最近のエビデンスを重視する臨床についてのご自身の考えを述べられました。特に若手の先生には強いメッセージとなったのではないでしょうか。エビデンスは、臨床を行うにおいて、重要であることには疑いの余地がないが、あくまで多くの経験の最大公約数的なものにすぎない事を強調されました。これについての議論では、その後の総合討論でも、阪本会長から論文は、孫引きで聞きかじるのではなく、原本をすべて取り寄せて読むべきであること、また最終的には、自分の臨床的な感覚が重要であり、最も頼りとすべきことであるとの言及がありました。
総合討論では、上部構造の形状や材質、咬合について、またインプラント体の形状やバリアメンブレンの過去の見解との違いなどの質問があり、30周年記念講演にふさわしい活発な議論が行われました。4名の先生に共通して言えることは、常に検査資料を採得し、患者と共に日々のメンテナンス継続し続けてこられたこと、そしてその苦労がよく理解できました。最後に資料採得の重要性を、改めて阪本会長が言及され閉会となりました。


第123回例会 大阪国際会議場130名を越え満席です。



左から  阪本貴司先生、勝 喜久先生、中島 康先生、山野総一郎先生
第122回 第122回研究例会・特別講演会報告
日時:平成28年5月29日(日)
場所:大阪国際会議場 12階特別会議室
特別講演

座長:阪本貴司先生

演者:大阪歯科大学名誉教授(歯科解剖学)
   諏訪文彦先生       

演題:口腔インプラント臨床にかかわる実験的基礎研究から
   ―上部構造装着時期・βTCPの取り扱い・糖尿病患者の口腔でなにが―
第122回例会・特別講演会に大阪歯科大学名誉教授 諏訪文彦先生を迎え、” 口腔インプラント臨床にかかわる実験的基礎研究から ―上部構造装着時期・βTCPの取り扱い・糖尿病患者の口腔でなにが―“をテーマに講演頂きました。

諏訪先生は古くからインプラントについての基礎研究を行っておられ、特に血管へのレジン注入法によるインプラント埋入後の周辺組織治癒の微細構造の観察では、インプラント臨床学の発展に大きな役割を果たされました。

今回それらの基礎研究の総括も含めて、1)上部構造装着時期、2)βTCPの取り扱い、3)糖尿病患者の口腔でなにがという3部構成で講演されました。

抜歯創の治癒については、走査電子顕微鏡像からインプラントを埋入後の治癒過程を、1)血管新生期(植立後1~2週)、2)骨新生期(2~4週)、3)骨増生期(4~6週)、4)骨成熟期(6~12週)に区分して説明されました。さらにインプラント体の機能下での治癒と比較検討し、適切な上部構造の装着時期は骨増生期とアーリーローディングの有効性を示唆されました。

またβTCPの取り扱いについても話され、大きさの異なるβTCP顆粒の臨床経過の比較実験について、サルを使った骨修復過程像から説明されました。大きさが違っても、4週では大きな変化はないが、12週では小さい顆粒は晩期まで残存し骨造成が遅れることを光学顕微鏡像で示されました。小さな顆粒でも、例えばキチンとの複合体にすると、顆粒の吸収と骨造成が促進されることも話されました。サルを使用した研究は、現在では費用や倫理規程の関係で実施することが難しくなっていますので、非常に貴重な研究と考えられます。

最後に、糖尿病とインプラントのリスクファクターについて講演されました。日本人にはⅡ型糖尿病が多いといわれますが、GKラット(Ⅱ型糖尿病モデルラット)と正常ラットの組織像を比較した研究です。外縁上皮の遊離歯肉結合組織乳頭において、高さと断面積に有意差があること、またGKラットの方が上皮組織、結合組織乳頭、毛細血管ループに退行性変化が起こっていたことなども示されました。またGKラットの口蓋粘膜の創傷治癒を調べ、自然治癒が遅延することも明らかにし、糖尿病がインプラント治療についてのリスクファクターであるというエビデンスを示されました。

会場からも活発な質問があり、それぞれに丁寧に答えて頂きましたまた。講演を通して、諏訪先生のいまだ衰えぬ研究への熱意、また、研究を次世代につないでいって欲しいという熱い想いを感じる講演会でした。


大阪国際会議場特別会議室
170名の参加者で満席となりました。
第121回 第121回研究例会報告
日時:平成28年2月21日(日)
場所:大阪国際会議場 12階 1202会議室
招待講演

座長:奥田謙一先生

演者:若松陽子先生 

演題:歯科医事粉争の最前線
   ―法的観点からの予防と解決―
招待講演には、当会の特別会員であり、日本口腔インプラント学会の顧問弁護士の若松陽子先生に「歯科医事粉争の最前線、法的観点からの予防と解決」と題して講演して頂きました。司法の大まかな仕組みと最近の紛争、それらの予防法や実際の判例などについて解説頂きました。

最近の医事紛争については、約300万円以下の少額の民事においては示談で済まされていることが多かったのですが、近年は情報化社会や超高齢社会に伴う価値観の変化、また弁護士の増加などから容易に訴訟に移行することが多くなっているようです。
インプラント治療後に、支払った費用と治療価値を患者がどのように感じるかで、歯科医と患者との間に満足度の違いが生じ、争いの原因となります。若松先生が強調されたのは治療を開始する前の“予防措置”です。第一に患者との信頼関係を築く事が重要です。具体的には、医療は100%の完全なものではない事を理解してもらう事、そして高度な自費治療に対して支払った治療費が、治療内容から決して高額ではないことを患者が納得した上で治療を進める事が大切です。

インフォームドコンセントの重要性も強調されました。重要な説明事項として、①代替治療、②長所短所、③副作用・合併症を示し同意を得る必要があります。また未成年の場合には保護者の“同意”が必要ですが、子供に対しても、“理解と納得”を得るようにしなければならないインフォームドアセントという言葉も教えて頂きました。 治療後には、患者にアンケートを取り、その時点での治療に対する満足を確認しておくことも大切です。超高齢社会では認知症も増加し、過去の記憶がますます不鮮明になってくるからです。カルテへの記録が、我々歯科医を守る重要な資料であることも述べられました。

講演の最後には、我々歯科医は弁護士に相談することを恥ずかしいと、ためらいがちになりますが、歯科医が患者の口腔内を普通に診るように、弁護士もそれが日常ですので、恥ずかしがらずに気軽に、早めに相談することが予防になると付け加えられました。

満席の国際会議場です。
教育講演Ⅰでは、近畿大学医学部付属病院歯科口腔外科教授であり、当会の会員でもある濱田 傑先生に「顎関節疾患の考え方と治療の実際」と題して講演を頂きました。

日本で長年用いられていた顎関節症の病名は、海外で用いられているDiagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders (DC/TMD)の概念と異なっているため、2014年の日本顎関節学会より、可及的に海外と整合性を持たせた新しい顎関節の概念と分類が公表されました。

DC/TMDは、生物心理社会学的モデルに基づいて作成されていること,またAxis Iで身体的評価を,Axis IIで心理状態と疼痛関連のdisabilityの評価を行うという2軸診断システムとなっていることに特徴があります。また、国際疼痛学会の分類による、顎顔面痛の一部でもあり、これまで認識していた歯科領域に限局したとらえ方を海外ではされていないようです。日本顎関節学会より近年提示された国際基準に合わせたわが国の考え方と分類を講演の冒頭に説明されました。

講演の中で、顎関節の正常な解剖と運動も検体を使用したビデオにより解説頂きました。また実際の臨床における検査について解説頂きました。内側翼突筋などの咀嚼筋の触診からパノラマ4分割やCTなどの画像診断、スプリントによる治療法、外科的治療法などについて説明頂きました。顎関節症と鑑別が必要な疾患も多くあり、歯科の範疇で診断する場合には慎重な経過観察が必要だとも述べられました。

講演の最後には、とかく日本では重視されがちな、咬合治療については顎関節学会の中ではエビデンスとして認めていない事、そして歯科医の中には咬合が原因で顎関節症になると考えている方が少なからずいるが、欠損や咬合の変化が顎関節症の直接の原因ではないことも強調されました。
教育講演Ⅱ

座長:白井敏彦先生

演者:高田光彦先生

演題:攻めの保存治療
-如何に残すか、歯髄を歯牙を-
教育講演Ⅱでは神戸市開業で当会の会員でもある高田光彦先生に「攻めの保存治療、 如何に残すか、歯髄を歯牙を」と題して講演頂きました。

講演の冒頭で、2005年の開業当時に比較してインプラント治療が最近では年間10件に激減し、さらに2012年には年間100本以上あった抜髄処置が1本に減っている自院の現状を報告されました。このようなドラスティックな治療の変化の理由が、CTと手術用顕微鏡を駆使した歯髄の保存治療にあると説明されました。今回は主にMTAセメントを中心に歯髄の保存治療の現状について解説頂きました。

MTAセメントについては近年特許が切れた関係で各社いろいろな材料が販売されています。そのような中で、どのMTAセメントを選べばよいのか、5つのポイントについて話されました。Discoloration(変色)、Washout(流失)、Setting Time(硬化時間)、Heavy metal(重金属)、Biocompatibility(生態適合性)の5つについて独自の実験より導き出された知見自身や文献から最も優れた材料製品を教えていただきました。

MTAセメントを使用した歯髄保存(覆髄処置)症例でも、各ステップごとに動画を交えた分かりやすい説明でした。明日からでもすぐに臨床に使えるヒントも多かったように思います。天然歯の歯髄や歯質を残すことに、歯科医としてどれだけ多くのツールを活用できるか、その原点とも言える講演でした。

第120回 第120回研究例会報告
日時:平成27年11月3日(火・祝)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演

座長:久保茂正先生

演者:佐々木歯科・顎顔面ケアクリニック 
   佐々木研一先生

演題:下歯槽神経・舌神経障害の診断と治療
   ―訴訟にならないために知っておこう基礎と臨床―
招待講演では、佐々木歯科・顎顔面ケアクリニックの佐々木研一先生をお迎えし「下歯槽神経・舌神経障害の診断と治療」についてご講演いただきました。佐々木先生は、東京歯科大学臨床外来と自身のクリニックで神経損傷の治療と研究をされています。
近年、下顎埋伏智歯抜歯やインプラント埋入手術に伴う下歯槽神経や舌神経障害症例が急増しています。これらの半分以上が下顎埋伏智歯抜歯によるもので、インプラントによるものは、13パーセントほどとの事です。残念ながら佐々木先生のもとに紹介されてくる患者の多くが損傷から半年以上経過し、神経修復の治療可能な6ヶ月を過ぎてしまっています。紹介患者の中には、神経障害性疼痛などを継発し、日常生活に支障をきたしているケースもあります。
講演では、神経束の解剖学とコンタクトガイダンスという神経再生の機序を説明の後、神経損傷の分類とその治療について講演されました。
神経損傷には3つのタイプかあり、①神経の血流障害・露出による損傷(Neuropraxia)、②神経圧迫・牽引による損傷(Axonotmesis)、③神経断裂や部分切断などの損傷(Neurotmesis)に分けられSeddonの分類と呼ばれます。
① から順に③に至るほど重症で、Neuropraxiaは時間とともに改善し、手術が必要ないことが多く、Neurotmesisになると神経再建手術が絶対的適応になります。
治療法を決定する因子は、損傷のタイプだけではなく、損傷の範囲、損傷後の経過時間、年齢、神経性疼痛の有無など、様々な因子が存在することも説明されました。神経修復手術は48時間以内に行えば80~90%の回復が見込まれ、遅くなるほど回復率は低下することから、損傷タイプの早期の診断と治療の必要性を強調されました。
正確な総合的診断には、従来の主観的な診断だけでなく知覚神経活動電位法(SNAP)などの客観的診断が必要であり、これらは近年、医科だけでなく歯科にも導入されている現状も説明いただきました。SNAPは麻痺した下歯槽神経や舌神経の活動電位を測定するもので、皮膚感覚の検査だけでなく、客観的に神経麻痺を評価できる方法であり、臨床家としては心強く思いました。
後半は、舌神経麻痺について詳しく話されました。損傷のほぼ全例が智歯抜歯の時に起こるようですが、下歯槽神経と異なり味覚も掌っているためQOLの損失が大きく、患者の精神的ダメージが強く残ります。舌神経麻痺の特徴として、損傷をドクター自身が自覚していないことが多く、患者の訴えから発覚するようです。講演では、損傷を防ぐための埋伏抜歯のポイントもご教示いただきました。 最期に、最新の神経損傷治療として、佐々木先生が研究されているiPS細胞を使用した人工神経の話や損傷把握に今後有望と考えられる3T MRIについても触れられました。 神経損傷の程度の把握には、時間を開けての数回の評価が必要なこともあり、そのため、とにかく早期の専門病院への紹介が必要であることを強調され講義を終了されました。

佐々木研一先生と阪本貴司会長
千葉県館山市の佐々木口腔顎顔面ケアクリニックMAKUHARIにて
会員発表Ⅰ

座長:小室 暁先生

演者:吉本いつみ先生

演題:下顎臼歯部中間欠損部にインプラント治療を行った1症例


会員発表Ⅱ

座長:小室 暁先生

演者:堀尾嘉信先生

演題:下顎両側第2小臼歯先天性欠損部にインプラント治療を行った1症例


情報提供

演者:小室 暁先生(研修セミナースタッフ)

演題:ケースプレゼンテーション試験合格への傾向と対策
会員発表では、吉本いつみ先生と堀尾嘉信先生が、本年10月に岡山にて開催された公益社団法人 日本口腔インプラント学会でのケースプレゼンテーション症例を発表されました。
吉本いつみ先生は「下顎臼歯部中間欠損部にインプラント治療を行った1症例」と題して発表されました。インプラント埋入に主眼を置くインプラント学会のケースプレゼンテーションでは供覧できなかったインプラント埋入に至るまでの歯周治療や矯正治療についても、今回は示して頂きました。事前の治療計画から治療方法の選択までを丁寧に進められており、先生の真摯な臨床姿勢が垣間見られる症例でした。
各種検査資料もわかりやすく整理され、症例報告として大変分かりやすいプレゼンテーションでした。
堀尾嘉信先生は「下顎両側第2小臼歯先天性欠損部にインプラント治療を行った1症例」と題して発表されました。先天性欠損の若年患者にインプラントを埋入し、隣接歯の過重負担と審美障害を改善した発表でした。インプラント補綴が欠損補綴の大きな位置を担うことが可能なことを改めて感じた素晴らしい発表でした。
ケースプレゼンテーション試験としての症例選択も理想的で、プレゼンテーション試験を受けるにあたって、いかに最初の症例選択が重要であるかを感じる内容でした。
発表では試験時の質問事項や感想なども述べて頂き、これから試験を受ける先生方にも大変参考になりました。

会員発表の最後には、当会の研修セミナースタッフであり、学会のケープレ試験を受ける受講生の指導を行っている小室 暁先生からケースプレゼンテーションを受験するにあたっての手順や注意すべきポイントについて説明がありました。
何よりも症例選択が重要であり、術前の資料が揃っていることが大切なことを強調されました。そしてインプラント埋入だけでなく、術前の検査や平行して行った治療の計画が整理されていることなどを、実際のパノラマレントゲンや口腔内写真を供覧して説明されました。
最後に厳しい試験ですが、専門医取得の第一歩になるため、当会からも多くの先生がケースプレゼンテーション試験を受けてくださることを望みますと述べて終わられました。
第119回 第119回研究例会報告
日時:平成27年9月6日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演

座長:木村 正先生

演者:兵庫医科大学 歯科口腔外科学講座 教授 
   岸本裕充先生

演題:インプラント治療に役立つ口腔外科領域の話題
   ―薬剤関連顎骨壊死を中心に―
 兵庫医科大学歯科口腔外科学講座教授の岸本裕充先生に「インプラント治療に役立つ口腔外科領域の話題、薬剤関連顎骨壊死を中心に」をテーマに講演頂きました。岸本教授は、長年薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)についての臨床と研究をされ、医科歯科連携についても国との折衝などを手掛けておられます。我が国は、65歳以上の高齢者の割合が25%を超え、世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。それに伴い、抗血栓薬や骨吸収抑制薬(ビスホスホネートなど)を服用している患者は、我々歯科医師の臨床での実感より増加しています。抗血栓薬服用者は、約300万人とのことで、服用頻度の少ない若年層を除くと高齢者では10人に1人は服用していると考えられます。そのような現状を踏まえ、医歯薬連携の必要性を強く指摘されました。
 その後、易出血性のある患者への対応について話されました。治療前にチェックするべき事項について説明された後、易出血性を伴う疾患と薬剤について、血小板に原因であるものと凝固因子に原因があるものとの二つに分類し、判別のための必要な検査知識について教えていただきました。
 具体的な疾患では、肝硬変の患者は特に注意すること、薬剤においてはワーファリン以外に最近投与が増えてきた新規抗凝固薬(タビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンなど)の存在と特徴についても説明されました。我々が良く参考にするPT-INRは、血小板の機能不全による出血傾向の診断には無効であることは知りませんでした。
講演の最後は、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)について講義されました。以前は、ビスホスホネート剤による顎骨壊死がクローズアップされB(Bisphosphonate)RONJといわれていましたが、それ以外の薬剤でも顎骨壊死が起こりうるため、2014年よりM(Medication)RONJと変更されたそうです。また、患者も以前の約10倍にまで増加している現状にも驚かされました。
 骨粗鬆症治療薬としてビスホスホネートに代わるものとして、使用されだしたデノスマブとの比較についても講義頂き、両者の発現率に有意差があまりないことも知りました。
興味深かったのは、BP製剤投与中の患者の治療について、休薬、抜歯など外科処置の可否について、これまでのコンセンサスとは異なる治療方針で兵庫医大では治療を行っていること、またその根拠を教えて頂けたことです。顎骨壊死が発症しても、BP製剤を休薬したうえで副甲状腺ホルモンを投薬することで、寛解に至った症例も見せて頂きました。これには会場からも驚きの声が上がりました。
 炎症があるところにBPが蓄積すると考えられることから、治療せず炎症源を放置することの方がより顎骨壊死発症の原因になることも示唆され、この数年で大きく治療のコンセンサスが変化しつつあることを知りました。そのインパクトの大きさを反映してか、予定時間を上回るほどの多くの質問も飛び交い、有意義な講演となりました。

教育講演

座長:中島 康先生

演者:(株)デンタルデジタルオペレーション 十河厚志先生

演題:デジタル技術を応用した歯科技工
 教育講演は、デジタル技工でご活躍の十河厚志先生にご講演頂きました。
冒頭ではCAD/CAM技工の歴史について触れられましたが、その進歩の速さに驚かされました。CAD/CAM歯科技工は、光学印象→デジタルでの設計(CAD)→造形(CAM)という過程を踏むことを説明頂いた後、それぞれの過程を動画も交えながら説明頂きました。
光学印象については、現在は国内に1社しかありませんでしたが、今年になって復数社参入し、その優位性から国内認可のイントラオーラルスキャナー(口腔内スキャナー)が今後は臨床家にとって身近なものになっていくだろうと話されました。そのスキャナーデータを受け取る技工所と歯科医院との連携の重要性についても触れられました。
デジタル設計に関しては、非常に細かい部分のCADデザインが可能になったことを実際の設計画面動画から説明されました。従来のワックスによる作業の基礎が出来ていることの重要性も合わせて述べられていました。
造形に関しては、大きく切削造形(milling)、積層造形(3Dプリンター等)があることを示され、その違いを教えて頂きました。現状で主に行われているのは、切削造形ですが鋳造方法と違ってエラーが少ないこと、また適合も遜色ないこともデータで示されました。
インプラントへの応用については、カスタムアバットメントをCAD/CAMで作製する方法、またその材料としてチタンやジルコニアを使用することの優位性について話されました。さらに、プラットフォームとの接合部にチタンを使用することで、よりフィットが増し、長期安定性が得られることを説明されました。
最期に、セレクティブレーザーシンタリング、デジタルオーバーデンチャーアタッチメント、デジタルデンチャーなどの今後進歩が期待される分野についても触れられました。
フィットが良く、品質が安定し、チタンなどの加工が難しい金属の加工も可能などのデジタル技工の優位性と今後の展望を強調され講演を終了いたしました。
第118回 第118回研究例会・特別講演会報告
日時:平成27年6月28日(日)
場所:大阪国際会議場
座長:阪本貴司先生

演者:東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野 教授
    江草 宏先生

演題:再生歯科医療の動向と展望
 本年の特別講演会では、東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野の教授である江草 宏先生に、再生歯科医療の動向と展望というテーマで講演頂きました。


 江草先生は、広島大学歯学部卒業後、母校補綴学講座に大学院生として残られながらも、香港大学歯学部に留学され、そのUCLAや大阪大学で再生歯科医療についての研究で若くして大きな成果を出され、現在東北大学に教授として就任されています。特にiPS細胞を使用した再生歯科医療における研究では多くの成果を出されています。
 再生医療とは、体の組織の一部にできた自然治癒が見込めない欠損を,適切な「生体材料」,「生体活性因子」あるいは「細胞」を用いることで,自然治癒力を引き出して回復に導く治療の総称です。講演の冒頭では、この再生医療の歴史を下記のように第1世代から第5世代まで分類して説明されました。
 第1世代:足場療法(GTR法や、HAやβ-TCPなどのリン酸カルシウム材料による骨補填)、第2世代:増殖因子療法(PRP、エムドゲイン、BMP-2等の骨増生タンパク質)、第3世代:間葉系幹細胞・骨芽細胞治療、第4世代:細胞構造体の移植(細胞シート、3-D細胞構造体)、第5世代:人工組織・器官置換療法(iPS細胞)。
 前半では、この第1,2世代の従来からのアプローチである、生体材料によるアプローチについて説明をいただきました。人工骨として具備するべき条件としては、足場、誘導能、新生骨置換能などがありますが、第1世代のものは、整形外科から来たもので、ボリューム維持と、骨置換を両立するものは少なく、第2世代の材料では第1世代の誘導の弱点である骨誘導能のなさを補うために、増殖因子が使われます。しかし、この材料も、エムドゲインでは、炎症を抑える作用は認められるものの、文献的には骨再生材料としての著明な有効性は認められていないようです。歴史的に歯科領域,特に保存修復学や歯科補綴学分野では,失われた歯質,歯髄あるいは歯の欠損を人工代用物で“置換”する技術を中心に発展してきたため,人工材料を用いた保存・補綴歯科治療は,既に予知性のある医療技術として確立されています。しかしながら、生体材料については、未だ全ての条件を満足するものは存在していないことを、再確認できる内容でした。
 後半は、先生の現在のご専門であるiPS細胞を使用しての再生歯科医療についてでした。iPS細胞はその万能な分化能ゆえに「万能細胞」とも称され無限の増殖能を備えていることからもバイオエンジニアリングを駆使した三次元形状の細胞組織構造体の構築に好適な幹細胞源として期待されています。ES細胞も、同じく「万能細胞」ですが、人の受精卵を使用するため倫理上の問題が付きまといます。その点、iPS細胞は、自分の細胞を使うことができるため、汎用性があり期待されているそうです。しかし、iPS細胞は作成する過程で組み込む山中因子という遺伝子の一つに、癌を誘導する遺伝子を組み込むため、それが問題視されています。江草先生は、iPS細胞を歯肉組織から作成し、先に述べた癌を誘導する遺伝子を入れずに作ることにも成功されています。また、それでも癌化することを抑えるために、シンバスチントいう薬剤を用いて、抑える方法も考案されました。歯肉という、我々歯科には馴染みが深く、しかも採取に侵襲が少ない部位からの作成は、歯科のみならず一般医科分野でも有意義なことだと思いますし、誇らしく思いました。講演では、このiPS細胞の作成過程と先生が作成されたものが、本当にiPS細胞であるという“証明実験”について詳しくご説明いただきました。
 最後にこの再生医療材料を、骨欠損に使っていく方法を大規模、あるいは小規模のケースに分けて、再生医療の将来の展望について語っていただきました。
 これほど進んでいるように見えても、実際に臨床応用するためには、まだまだ時間が必要であるため、この再生医療材料をテーラーメイド医療に役立てる可能性について提唱されました。iPS細胞を使って、歯や骨や皮膚の病態、個体差のモデルサンプルを作製し、それを利用し顎骨吸収に関与する遺伝子やインプラントの早期脱落に関与する遺伝子について、個人レベルで考察する可能性があるそうです。
 非常に難しい内容を我々にもわかりやすく説明いただきました。講演では、ご自身の研究の経歴や海外での生活なども交えてお話されましたが、iPS細胞研究と山中教授との出会いの話は興味深いものでした。何事にもまず行動力をもって仕事に当たる重要性も思い知らされた1日となりました。

第117回 第117回研究例会
日時:平成27年2月22日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演

座長:久保茂正先生

演者:東京歯科大学解剖学講座 教授
    阿部伸一先生

演題:歯科臨床のための機能解剖学
  東京歯科大学解剖学講座教授の阿部伸一先生をお迎えし、『歯科臨床のための機能解剖学』と題して講演頂きました。基礎解剖学は、ともすれば“呪文のおように名前と場所を覚えるだけ”になりがちな聞きづらい講義ですが、阿部先生は多くの解剖標本写真や動画を供覧しながらわかりやすく解説されました。阿部先生は、学校歯科関係でも学童用にも多くの書物を執筆されています。また先日NHKの“ためしてガッテン”にも出演され、市民向け書物の執筆やカルチャーセンターでの活動など一般の方にも、摂食・嚥下分野を中心に多くの啓発活動を行っておられます。
 講演前半部ではインプラントの埋入時に気をつけなければなら血管神経について解説されました。特に阿部先生の教室で得意としている硬組織を脱灰して作製する神経血管標本からは下顎骨の中を下歯槽神経が複数の束になって走行する模様がはっきりと分かりました。まさに目から鱗でした。
 顎関節部の解剖では、固定前の可動性のある状態の標本動画から下顎頭と関節円板の関係を説明頂きました。解剖書だけではわかりにくい神経の走行、関節円板の解剖を立体的に、そして動画で顎関節の動いている状態まで見ることが出来ました。また最近増えてきている舌神経麻痺についても解説され、およそ13%の舌神経がレトロモラーパッドのすぐ舌側を走行しており、埋伏智歯抜歯の切開線の設計では細心の注意が必要であることを話されました。それに伴う舌神経麻痺の症例も増加しており、東京歯科大学でも専門外来を立ち上げるほどであることには驚きでした。
 講演の後半では摂食嚥下についての機能解剖について講演されました。口腔底、摂食嚥下に関連する筋群の解剖、およびその加齢変化についても詳細に解説されました。舌骨は、舌骨上筋群によって吊り下げられたようになっている特殊な骨ですが、加齢と共に筋力が衰え、徐々に位置が下に下がってきます。それが摂食嚥下機能の衰えにつながり、それを防ぐ3つの体操についてもお話頂きました。先生が実際にカルチャーセンターで一般向けに教えておられるものをご教授頂き、会場の我々も筋力の衰えのチェックポイントを知ることが出来ました。
 講演の最後には、現代の子供に多い、ストレートネックの問題と、それが食道の確保に問題をきたしていること、そして偏頭痛の原因になっていたりすることをご教示いただきました。解剖の講演とは銘打っていますが、歯科臨床だけでなく職種や世代を超えて非常に聞きやすい興味の持てる講演会でした。聴講した先生方からも“こんなにビジュアルにわかりやすく解剖を教えてもらえる今の学生は幸せだ”との声が聞かれたほどでした。

教育講演

座長:英保裕和先生

演者:大阪市開業 佐藤琢也先生

演題:形態学的に優れるインプラント上部構造を装着するための外科術式
  当会の会員である佐藤琢也先生に『形態学的に優れるインプラント上部構造を装着するための外科術式について』教育講演を行っていただきました。
 講演は審美領域へのインプラント治療で良好な結果が得られず、感染や歯肉の退縮が生じている症例を提示し、なぜこのようになってしまったのかの問題定義から始まりました。先生はインプラント治療を成功するための10個のキーポイントを列挙され、本講演ではその中で特に先生が特に重要視されているインプラントの水平的・垂直的埋入位置、インプラント周囲骨幅の確保、軟組織の厚み、埋入タイミング、切開線の設定、などについて解説頂きました。
 講演で特に強調されていたことは、適切な補綴物を装着するためには、何よりもインプラントの埋入ポジションが重要であり、それに合わせて必要とならば、骨増生や軟組織のマネージメントが必要であることです。また骨増生のためのルートエクストルージョン、軟組織の増生のためのCTG(Connective Tissue Graft)、トンネリングテクニック、モディファイドロールテクニックなどを使用した症例を供覧しながらそのテクニックの詳細も説明いただきました。骨の採取を埋伏智歯抜歯と同時に行った症例では、患者への手術負担を軽減する先生の姿勢を垣間見ることが出来ました。手術時のメスや縫合糸への細かい気配りも印象的でした。先生は、これらの手技をすべてエビデンスに基づいて行われる(EBM)と、経験やカン所のような(NBM)を判別理解する事が大切で、これらを混同すると最終的に長期的に患者のためになる治療に到達し得ないことも強調されていました。
 佐藤先生の素晴らしい治療結果も堅実は地道な手技の積み重ねであり、曲芸のような処置の元に行われたわけではないことを実感しました。我々も日々の手技を少しずつレベルアップすることで、よりよい結果を患者に提供していきたいと再認識させられました。
第116回 第116回研究例会
日時:平成26年11月30日(日)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演

座長:藤本佳之先生

演者:大阪歯科大学付属病院長 口腔外科学第2講座教授
    覚道健治先生

演題:臨床検査の読み方考え方・薬剤使用基準
 大阪歯科大学付属病院長 口腔外科学第2講座教授である覚道健治先生に“臨床検査の読み方考え方・薬剤使用基準”と題して講演頂きました。
我々がインプラント治療をはじめとする外科処置を行う場合、薬剤の知識が非常に大切になります。しかし日常臨床の中では、漫然と投薬していることもあるように思われます。
 今回は薬剤の副作用から使用する際の注意点を開業医でも理解しやすいように丁寧に解説頂きました。またインプラント手術では、骨造成やサイナスリフトなどのアドバンス的な外科手技に注意がいきがちになります。そのため日頃の口腔外科の基本手技の研鑽を怠りがちになります。抜歯手術などの基本的な外科手術における、術前後の準備や対処をしっかりと理解しておくことが、インプラント手術をも成功させるポイントになります。
 講演では、上顎洞やそれに関連する脈管、下歯槽神経、顔面動脈などの解剖の復習から臨床で生じやすい偶発症などを解説頂きました。また抗菌薬、解熱性鎮痛薬などを中心に薬剤の詳しい使い方、また、最新情報をまとめていただきました。
 後半は、埋伏智歯の抜歯を中心に、抜歯の方法、勘所を講義いただきました。ビデオによる埋伏智歯の抜歯手術も供覧いただき、非常に勉強になりました。その他、舌側に傾斜した小臼歯の抜歯方法や歯牙移植についても、症例を交えて詳しく手技を教示いただきました。歯牙移植については、移植歯の3D模型をあらかじめ作っておいて、それをソケットに適合することを確認してから、抜歯するという、興味深い方法も提示いただきました。
 会場からの質問にも丁寧に答えて頂き、内容盛りだくさんの有意義な講演会でした。
会員発表 I

座長:小室 暁先生

演者:広島市開業 青戸光紀先生

演題:上顎前歯中間欠損部にインプラント治療を行った1症例
会員発表 II

座長:小室 暁先生

演者:大阪市開業 阿保淳一先生

演題:下顎右側臼歯遊離端欠損部にインプラント補綴を用いた1症例
 本年度9月に東京国際フォーラムで開催された公益社団法人日本口腔インプラント学会のケースプレゼンテーション試験にて発表され、試験に合格されました青戸光紀先生と阿保淳一先生に症例発表をして頂きました。
 先生方には症例内容だけでなく、試験の感想、これから受ける先生方へのアドバイスなども話して頂きました。試験で発表されたポスターも会場に掲示頂いきました。これから受験する先生にとって大変参考になりました。
 両先生とも合格されるにふさわしい症例を提示いただきました。二人とも共通して述べられていたことは、症例選びの重要性と口腔内写真やパノラマエックス線写真などの資料を日ごろから整理しておくことです。また試験での質疑応答に対しては、大変気を遣ったと言われていました。
 両先生の発表は今後、専修医を目指す先生のケースプレゼンテーション試験に際して、大変参考になったと思います。
 我々学会指定セミナー関係者も受験された先生方の経験を生かして、今後も多くの先生がケースプレゼンテーション試験をクリアするよう後押ししていきたいと思います。
第115回 第115回研究例会
日時:平成26年9月23日(祝)
場所:大阪国際会議場 12階1202会議室
招待講演

座長:吉田春陽先生

演者:大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座
    予防歯科学分野 教授
    天野敦雄先生

演題:21世紀の科学でペリオを診る
 国立大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座教授の天野敦雄先生をお招きし、“21世紀の科学でペリオを診る”と題して講演頂きました。
初めに最新の歯周感染論に基づいた歯周治療についてお話し頂きました。『歯周病は全世界で最も蔓延している病気であり、地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない』、ギネスブックにこのように記載されるほどの疾患であるのも関わらず、明らかな病因論が確立されていないことを危惧されました。歯石、プラーク、歯周組織の抵抗力、様々な原因論が言われているが、歯周組織と細菌の均衡の破壊がポイントであると述べられました。
 歯周病の原因菌は成人初期に口腔内に定着しますが、血液中の鉄がなくては増殖できず、したがって、ポケットからの出血(BOP)を抑えることが重要なポイントであるとあること。特にレッドコンプレックスの代表であるPorphyromonas gingivalis (PG菌)については、どのように歯周組織細胞に侵入し、細胞を非活性化し破壊してゆく過程をビジュアル的に、細胞レベルでお話し頂きました。さらにPG菌は遺伝子型により病原性が違いⅠ~Ⅴ型に分けられ、その種類を特定し、他の生活習慣などの因子を総合的調べることで、歯周病になりやすさを予想する、“予測歯科”という、まったく新しい概念の予防歯科の話もされました。
 最後に歯周病の原因が感染論に基づき明らかになりつつあっても、歯周病に完治はなく、これまでの歯周基本治療とプラークコントロールの確立を徹底することが重要であることを強調されました。講演の後半ではアジスロマイシンによる薬剤効果や口臭治療についても話されました。
 基礎的な話であるにもかかわらず、臨床に直結する興味深い話を非常にわかりやすく、しかも面白くお話し頂きました。100名を超える会員で会場は満席となり、あっという間に時間が過ぎた有意義な講演会でした。

教育講演

座長:木村 正先生

演者:大阪府開業 中島康先生

演題:インプラント周囲炎治療のコンセンサス2014
 教育講演では、当会の会員あり著名なインプラントロジストである中島康先生に、最新のインプラント周囲炎治療について講演頂きました。  近年、インプラント治療の広まりとともに長期経過症例も増えてきました。そのため基本的な診断、埋入、補綴技術だけではなく、インプラント周囲炎も含めた術後の合併症についての対応も重要視されるようになってきました。中島先生にはITI 2013年最新のコンセンサス会議から、特にインプラント周囲炎に関する報告を中心に、自身の症例動画も供覧しながら解説頂きました。  海外の多くの文献なども分かりやすく解説されましたが、自身撤去症例など、予後不良例についても会員の前で供覧された姿勢には敬意を表したいと思いました。現在の段階ではインプラント周囲炎に対するベストの治療法は確立されていませんが、講演から多くの知見を得ることが出来ました。  メインテナンスでは出血、排膿などの診査状態を、患者に見て頂き説明して情報共有することの重要性を強調されました。会場からの質問も含め非常に内容の濃い講演会となりました。
第114回 第114回研究例会・特別講演会
日時:平成26年6月29日(日)
場所:大阪国際会議場
特別講演

座長:阪本貴司先生

講師:国際外傷歯学会前会長 月星光博先生

演題:天然歯の底力
国際外傷歯学会前会長 月星光博先生をお招きし『天然歯の底力』と題して講演頂きました。当会は28年前の発足から、インプラント治療の研鑽だけではなく天然歯の保存を重視し、歯周病、根管治療、矯正、口腔外科など、インターディシプリナリーな研鑽を目指して例会運営を行ってきました。
 今回の講演演題である『天然歯の底力』は天然歯を保存するために知っておくべき重要なテーマです。3時間という短い時間でしたが、天然歯の保存治療に欠かせない歯根膜と歯周組織の再生力について基礎から臨床にわたって、広くお話頂きました。
 前半部では、自身の症例を提示されながら、いかに一本の歯を残すことが大事かを訴えつつ、歯根膜組織と歯髄組織の再生力についての基礎的な話をされました。根管治療済みの前歯の変色症例では、ウォーキングブリーチで対応するのか、またはベニアで対応するのか、実際に会場でアンケートをとりながら、持論をお話しされました。また破折歯片を一旦冷蔵保存した後に再接着した症例では、一本の歯を残すことに対する先生の深い執念とこだわりが感じられ会場にもその熱意が伝わってきました。
 後半部では、自家歯牙移植、意図的再植などの実際の臨床テクニックを動画も交えてご教示頂きました。一見巻簡単そうに見える技術も、言うは易し、行うは難しで、自分の臨床でどれだけ同じことができるのか不安な部分がありましたが、今回の講演は分かりやすく、今後の臨床に役立ちそうなことばかりでした。
 本来ならば二日分のご講演内容を凝縮してお話しいただきました。その多くの症例提示を通して感嘆したことは、根管治療一つから、再植のような複雑な治療に至るまで、先生が主にCTを使用しながら緻密に詳細に分析してから手技に移られ、またその経過を一年後、二年後、‥十年後と、経過をさらに分析して確認されていることです。
 デンタル、症例写真一つにしても、同じ方向、同じアングルで資料を常に採得し続けることは容易ではありませんし、患者の協力、信頼関係もないと出来ないことだと思います。当会でも、常にいわれている“資料採得の重要性”を、再認識させられました。我々も、先生の臨床に対する真摯な姿勢を見習って、少しでも近づけるように努力したいものです。
 また、講演の途中では、先生が直近に国際外傷歯学会で出張されたトルコのイスタンブールなど海外の写真や、先生のオフィスの写真も交えて頂き、高度な話題を楽しく聞くことが出来ました。さらには、講演後のみならずその後の懇親会にもご臨席いただき、会員の質問に答えたり、情報交換をしてくださり、大変有意義な例会となりました。

第113回 第113回研究例会報告
日時:平成26年2月23日(日)
場所:大阪国際会議場
招待講演

座長:藤本佳之先生

講師:兵庫医科大学名誉教授 浦出雅裕先生

演題:薬剤誘発顎骨壊死の臨床病態と歯科における対応
 兵庫医科大学名誉教授の浦出雅裕先生に”薬剤誘発顎骨壊死の臨床病態と歯科における対応”と題して講演頂きました。近年、悪性骨病変や骨粗鬆症の治療薬として、ビスフォスフォネート(BP)や抗RANKL抗体であるデノスマブなどの骨修飾薬が使用されています。特にBPを投薬されている患者は、我々臨床歯科医がほぼ毎日のように遭遇するにもかかわらず、それに伴う顎骨壊死についての対応やBP服用患者に対する歯科治療に自信が持てないでいる先生は多いと思います。
 今回浦出先生には、1)悪性骨病変、骨粗鬆症に対する骨修飾薬のベネフィットとリスク、2)薬剤関連顎骨壊死の臨床病態とわが国における発生の現状、3)予防と治療のガイドライン、4)骨修飾薬と歯科インプラント治療との関連についてお話し頂きました。
 開業医ではなかなか遭遇できない多くの症例を供覧頂き、その予防法についても、BP治療前、治療中の各段階に分けて解説頂きました。BP剤以外のデノスマブなどの骨修飾薬についても、BP剤同様に注意が必要とのことでした。わが国における発生の現状については、様々な学会や会社のデータから説明頂けたことで、偏りのない知識を得ることが出来ました。骨修飾薬の種類別、処置別に発生頻度をご提示いただけたことは大変興味深かったです。
 インプラントが原因による顎骨壊死は意外に少なく、抜歯が原因のことが44%にも及んでいたことは印象的で
した。
 最後に、医療との連携についての重要性も強調されました。歯科で治療時に骨修飾薬を休薬する必要があれば、継続服用する場合と休薬する場合、それぞれの有用性を十分に比較したうえで判断がなされなければなりません。まだまだ明らかになっていないことが多いテーマであり、文献も不足している中で様々な情報を提供していただきました。会場からの質問も多岐にわたっていましたが、すべてに丁寧に応答頂き、非常に有用な時間を過すことができました。

会員発表 I

座長:石見隆夫先生

講師:神戸市開業 高田光彦先生

演題:GP-Style
 高田光彦先生には“GP-Style”と題して発表いただきました。講演の冒頭に、最近の歯科に求められる技術レベルの高度化に伴い、複数の専門医が治療にあたるInterdisciplinary dentistryという考え方の重要性が認識されつつある。しかし、日本では一人のGP(開業医)が多くの分野を担うMultidisciplinary dentistry という治療が主体となっているため、すべての分野で平均以上の知識と技術を持っている必要があり、多分野的診査・診断、治療計画の立案が不可欠になる。口腔内写真、X線検査、歯周組織検査などの基本的な検査記録も重要になることを説明されました。
 講演では自身の臨床症例を供覧して頂きましたが、動画やマイクロスコープ画像などを使用した、見やすい興味をそそる内容ばかりでした。MTAを使用した根管充填や直接覆随症例、コンポジットレジン修復などの症例を中心に提示されましたが、歯の保存を考慮し患者自身の生体治癒能力を高めることに主眼を置いた素晴らしい発表でした。
 講演後の質疑も活発で当会らしい有意義な講演でした。
会員発表 II

座長:西川和章先生

講師:大阪市開業 小室 暁先生

演題:当院でのCAD/CAM補綴臨床について
 小室 暁先生は“当院でのCAD/CAM補綴臨床について”をテーマに、自身の診療所で導入しているコンピューター支援によるデジタルシステムについて症例を供覧しながら発表されました。
 特にCAD/CAMについては、システムへの変更に伴って、医院の歯科技工士の仕事内容や考え方を変更する必要があり、技工士やスタッフとの意識の共有が重要と述べられました。ひと口にCAD/CAMシステムといっても、スキャンとデザイン、加工まですべて自院で行うシステム(セレックなど)と模型制作までを自院で行い、後は技工所にて行うシステムの大きく分けて2つがあり、それぞれについての良い面と今後に改良が必要な面についても説明頂きました。
 講演の最後には、システムによって加工可能な材料や使用可能なインプラントシステム、ワンピースで削る出せる歯の本数にも違いがあること、院内・院外技工士との連携度合いなど、CAD/CAMの限界をも理解して、自分の医院にあったシステムを選択し、治療技術を高めないとメーカーが宣伝するように簡単に使いこなせないと言われました。
 まだまだ開発段階のCAD/CAMシステムですが、4月からの保険導入されることもあり、会員の関心も高く興味深い発表でした。
第112回 第112回研究例会報告
日時:平成25年11月10日(日)
場所:大阪国際会議場
会長就任記念講演

座長:山野総一郎先生

講師:大阪口腔インプラント研究会 会長 阪本貴司

演題:インプラント部への骨造成を検証する
 阪本貴司会長に就任記念講演として、「インプラント埋入部への骨造成を検証する」と題して講演いただきました。講演の前半部では先生の臨床からGBR(Guided Bone Regeneration)を中心に数多くの骨造成症例とその術式を供覧頂きました。その後、メンブレンの種類や特徴、また骨補填材について、過去の先生の研究から多くの病理組織標本を提示しながら解説されました。厚労省の認可を受けた材料から未認可の材料まで、臨床現場で我々はどのように選択すればいいのか、その考え方などにも触れていただきました。最近認可を受けたBio-ossなどは海外では10年以上も前から認可を受けており、国内でも認可を受けている同様の材料が、ずっと昔から在ったことなどは知りませんでした。また阪本先生は、そのような臨床研究に1990年代から携わっておられたことも驚きでした。
 興味深かったのは、造成部の10年後の状態を観察した症例やサイナスリフト造成部のその後の状態を写した動画でした。先生は造成部の骨は経年的に吸収する事を考えて治療する必要があり、元々骨のなかった部位、上顎洞内や既存の歯槽骨外への造成骨は吸収する可能性が高い、そのため吸収して欲しくない部位には非吸収性の補填剤を選択し、骨に置換して欲しい部位には吸収性の補填剤を使用する方が良いと述べられました。
 講演の最後は、審美領域への抜歯即時埋入や骨造成のリスクについて話されました。長期経過を考えた場合に患者の選択など、本術式が非常に難易度の高い選択肢であることを強く語られました。また10年後の治療にも我々は責任を持たねばならないことを力説されました。講演中の会場からの質問には随時答えていただき、会場の先生を交えた活発な議論がなされました。一方通行の講演ではなく、会場と一体となったひと味違う講演会に阪本会長の人柄の一端を伺うことが出来たように思いました。
講演後には、会員からの阪本会長へ記念の花束が手渡されました。サプライズの演出に阪本会長も本当に驚かれたようで、正に記念すべき講演会となりました。

会員発表I
座長:石見隆夫先生
演者:日浦成彦先生 大阪市西区開業
演題:下顎左側大臼歯中間欠損部にインプラント治療を行った1症例
 会員発表Iでは、本年9月の日本口腔インプラント学会のケースプレゼンテーション試験で合格された日浦成彦先生に、試験で提示された症例について発表頂きました。試験での口頭試問の様子や質疑内容などの体験談も話して頂きました。自身が聞かれた質問だけでなく、他の受験生が質問された内容についてもまとめて披露頂きました。また同じく合格された高谷将之先生と共に、実際に試験で提示したポスターも会場に閲覧頂き、これから受験される会員の参考となりました。
会員発表II
座長:勝 喜久先生
演者:小林 守先生 大阪市平野区開業
演題:私の考えるインプラント治療の位置づけ
 会員発表IIでは小林 守先生に「私の考えるインプラント治療の位置づけ」と題して発表頂きました。小林先生は臨床経験も豊富で、開業当初からの長期経過症例なども呈示され、歯科治療後にいかにして長く天然歯を保存するのか自身の考えを述べられました。その上で、どうしても保存不可能な場所にはインプラント補綴で対応してきた治療経験を通して、歯科治療におけるインプラント治療の位置づけを話されました。上部補綴の種類やパラファンクションへの対応など、幅広い分野から質問がなされ、活発で有意義な発表となりました。
第111回 第111回研究例会報告
日時:平成25年9月1日(日)
場所:大阪国際会議場
招待講演

座長:吉田春陽先生

講師:大阪大学大学院歯学研究科 高次脳口腔機能学講座 顎口腔機能治療学教室
   阪井丘芳先生

演題:口腔機能の回復をめざして
   ~ドライマウス(口腔乾燥症)、摂食・嚥下、OSAS(睡眠時無呼吸症候群)
   に対するアプローチ~
 大阪大学歯学部付属病院の顎口腔治療部は、栄養歯科外来、スピーチ外来、摂食・嚥下外来、睡眠歯科外来、ドライマウス外来を治療の5本の柱とする、日本でも珍しい歴史のある診療科です。その治療科の長である阪井丘芳先生に、ドライマウス、摂食・嚥下、OSAS(睡眠時無呼吸症候群:Obstructive sleep apnea syndrome)という幅広いテーマについてお話し頂きました。
講演の初めに、国内のOSASの患者は約500万人で認知症患者の200万人と比較しても非常に多く、国民への認知の必要性を強く訴えられました。そして阪井先生が行っておられるOSAS治療の実際について話されました。診断から治療装置の作成方法、医科との連携についても、具体的な事例を提示され詳しくご教示頂きました。
 OSASについては、医科より詳しい検査データと共に装置作成依頼が時にくるものの、知識不足のせいもあって、どうしても対応に自信が持てなかった会員も多いかと思います。本講演を機会に、私も現状のOSASの知識の整理ができました。
ドライマウス、摂食・嚥下に関しましては、超高齢者社会に突入している我々にとって、ますます歯科に対する役割が大きくなっている現状を話されました。一般的にドライマウス患者は健常者と比較して、口腔内の自浄性が低く、食塊形成が不良であるために誤嚥性肺炎発症のリスクが高いと言われています。難しい教科書が多数出版されていますが、なかなか治療のポイントがわかりにくい中、実際に誤嚥が生じる様子を動画で示し、誤嚥の原因と対応法などを紹介頂きました。また阪井先生監修の「やさすい!桃みかん」という飲みやすいミネラルウォーターなどの様々な薬品もご紹介頂だき実践的な内容でした。
 阪井先生は診療以外にも、若き歯科医を育てるための活動として、マスコミや他業種との合同セミナーなどにも積極的に協力され、受験生に歯学部の魅力を感じてもらう努力もされています。新聞やニュースでは歯科医師過剰が叫ばれていますが、臨床現場では実際に口腔機能を治療する医療従事者が不足しています。多方面での活躍とそのお考えにも大きな感銘を受けました。
 座長の吉田春陽先生も、口腔ケア、リハビリテーションに対して非常に造詣深い先生であり、その後のディスカッションも非常に充実したものとなりました。

教育講演

座長:白井敏彦先生

講師:兵庫県三田市開業 英保裕和先生

演題:接着における防湿の重要性と3Dビデオ顕微鏡の臨床応用
 英保裕和先生には、“接着における防湿の重要性と3Dビデオ顕微鏡の臨床応用”というテーマについて講演頂きました。
 現在、様々なレジンやボンディング材が発売され、材質、治療ステップも日々大きく進歩しています。しかしメーカーの示す商品のスペックは実験室での理想値であり、口腔内では、できるだけその状態に近づけるための防湿の必要性を文献的データから示されました。
 また先生ご自身の研究結果を示され、ラバーダムをはじめとする3種類の防湿装置が、口腔内の温度湿度に与える影響について話されました。講演では接着ブリッジの形成やデザイン、接着方法などにも言及され、接着における形成の重要性も再確認できました。
 後半部では、Mora Interfaceの開発者で知られるDr. Assad F. Moraによって開発された最新型3D Video Microscope (Mora vision 2) について解説されました。Mora vision 2は、歯科用マイクロスコープの一種ですが、歯科用マイクロスコープの使用にあたっては、ミラーテクニックが必須であるなど、患歯に対するアクセスに難があります。その点、Mora vision 2は、術者の正面のスクリーンに患歯が映し出され、その映像を3Dメガネで見ながらマイクロ治療ができるなど、非常に有用な点が多い正に次世代型のマイクロスコープといえます。英保先生はいち早くこのMora vision 2を実際にアメリカのサンタバーバラでDr. Assad F. Moraとコミュニケーションをとりつつ導入されています。まだまだ改善の余地があり、日本には入ってきていないものではありますが、アメリカでは大学や著名な臨床家が導入されるなど、評価が急速に高まり、今後が楽しみです。
 また、先生は、マイクロ一筋で何十年もこのシステムをブラッシュアップされてきたDr. Assad F. Mora自身にも惚れ込んで導入を決められました。アメリカでのご自宅の様子、学会に共に参加された様子も楽しく伝えて頂き、英保先生ご自身のこの新技術にかける熱い思いもひしひしと感じることが出来る講演でした。
第9回 第9回WCOI in Seoul参加報告
日時:平成25年8月24日(土)・25日(日)
場所:ソウル市のミレニアムヒルトンホテル
 2013年8月24、25日、ソウル市のミレニアムヒルトンホテルにて、第9回WCOI(World Congress for Oral Implantology)が、当研究会ともゆかりの深い金鴻基(Dr. Hong Ki Kim)先生を大会長として開催されました。
WCOIは、1975年に日本で発祥したインプラント国際学会のひとつで、最近では3年に一度開催されています。前々回は2007年にアメリカのラスベガスで、前回は2010年インドのニューデリーで開催され、本年度は韓国のソウルで開催されました。
 当研究会からは、阪本貴司会長、佐藤文夫前会長、木村 正先生、長田卓央先生、岸本博人先生、藤島輝幸先生、小室 暁の7名が参加しました。


会場のミレニアムヒルトンホテルで、左から藤島輝幸先生、木村正先生、
金賢哲先生、佐藤文夫先生、阪本貴司会長、長田卓央先生、小室暁先生、
岸本博人先生。


今回の学会のメインテーマは“What is the implant of next generation(次世代のインプラントとは何か?”という内容で、二日間にわたってインプラントの材料学的、技術的な現状の到達点を踏まえつつ、その後のインプラント治療のありようについての発表が多くなされました。
当会からは、招待講演として阪本貴司会長が“Consideration about the removal of the implant defective in progress”をテーマに講演されました。また長田卓央先生が “The effectiveness of interdisciplinary therapy applying orthodontic approach”をテーマに発表されました。その他にも、日本からも東京医科歯科大学より春日井昇平教授、菅井敏郎臨床教授、また昭和大学の宮崎隆教授などが招待講演され、韓国からは、当研究会にもなじみの深いDr. Hyoun Chull Kim先生などが講演されました。
 学会のメインテーマに沿って、阪本貴司会長はインプラントの撤去の症例と、その手法について講演されました。言うまでもなく現在の日本は超高齢化社会に突入しており、すべてのインプラント患者が全身疾患や老いによる通院困難などのリスクを背負っています。経過によってはインプラントの撤去に至ることもあります。このような患者の人生を長く見据えた治療が今後は必要となり、その対応について実際の貴重な症例から講演されました。患者の人生の終末をも見据えた視点は、まだインプラントを初めて15年ほどの私には新たな視点でしたし、日本の後を追うように高齢化社会、少子化社会に突入している韓国の先生方にとっても、非常に示唆に富む内容だったと思います。


招待講演をされた阪本貴司会長


 長田卓央先生は矯正治療とインプラント治療をコンビネーションされた包括治療について講演されました。インプラント補綴だけでなく、矯正、歯周、エンド等埋入以前の口腔内環境を整える重要性について話されました。また当研究例会や研修セミナーでもよく取り上げられるトピックですが、残存歯のメインテナンスにも重点を置いた症例発表でした。
 学会を通して、日本語、英語、韓国語を取り混ぜ、活発な議論がなされていたのが印象的でした。また、韓国の人口は4000万人、そのうち歯科医は3万人だそうです。韓国でも、高齢化社会、少子化、歯科医師過剰など、日本と同じような道をたどっているようです。同じような問題を抱えているのですが、若干その問題に対する歯科的アプローチも違うような気がして、国際学会ならではの気づきを得ました。
ここまでは、固い話になってしまいましたが、学会場となったホテルは、ソウル駅の近くの超一流のホテルで、一日目のパーティーは、非常に華やかで、日韓のお酒がふるまわれ、お酒を通してのコミュニケーションも十分に楽しむことが出来ました。また、私も含めて、韓国の食も十分に楽しめて、充実した時間を過ごすことが出来ました。
 木村先生は、韓国への渡航経験が豊富で、観光マップにはないソウルをいろいろと教えていただきました。このように、公私ともに、非常に充実した学会参加となりなした。
 このような機会がありましたら、次回はぜひ私も発表してみたいと思います。またできるだけ多くの会員の先生方とご一緒に参加できればとも思っています。
 最後に、このような機会を与えて頂いた阪本会長、佐藤前会長、また宿泊先や交通手段学会をコーディネートいただいた木村先生に深く御礼申し上げます。

(小室暁 記)

第110回 第110回研究例会・特別講演会
日時:平成25年5月19日(日)
場所:大阪国際会議場
座長:佐藤文夫先生

講師:橋本貞充先生 東京歯科大学 生物学教室 准教授

テーマ:歯周組織の構造と防御機構を再考する
    ーマクロとミクロの視点からみる構造と機能・そして炎症から治癒へー
 東京歯科大学 生物学教室 准教授の橋本貞充先生をお招きし、歯周組織の構造と防御機構を再考する、マクロとミクロの視点からみる構造と機能・そして炎症から治癒へ、をテーマに講演頂きました。
 講演の前半では正常な歯周組織のミクロの視点での組織構造について解説頂きました。歯肉の内部では、血液や組織液の循環、酸素や栄養の供給、老廃物の運搬など細胞は活発に動きながら遊走し、旺盛な細胞分裂と分化とを繰り返しています。
 このように常に動いている歯周組織も、障害を起こす原因となる外部環境からのさまざまな侵襲から、常に生体を防御する必要があります。健康な歯肉では、付着上皮が歯の表面と強固な接着を形成することにより、付着上皮の先端をセメント-エナメル境(CEJ)に維持させながら口腔粘膜上皮を歯の表面と接着させ、外部環境のさまざまな侵襲から歯周組織を守っています。
 同じ健康な歯肉組織でも年齢によって変化をしてきます。学童期の萌出から数年の付着上皮はきわめて薄く、歯頚部の歯面を広く覆い、歯肉溝も狭小で浅いのに対して、20歳前後の若年者では組織構造が成熟し、歯肉溝と付着上皮の幅、CEJ部にある付着上皮先端と歯槽骨縁までの距離がおよそ1mm前後となっています。50歳から60歳代においても、歯肉溝が浅く付着上皮の先端がCEJ部にある組織学的に健康な歯周組織を持つ症例も多数あります。
 講演の後半では、歯周炎によって炎症が波及し、破壊された歯周組織にはどのような変化が生じているのか、また臨床におけるRoot PlaningやCurettageによってどのように治癒して行くのかを解説頂きました。便宜抜歯、またはラットやマウスの研究結果も供覧され、付着上皮細胞間の細胞突起とデスモゾームによる結合にくらべて、エナメル表層への付着が非常に強固であることや、付着上皮および長い付着上皮による上皮性付着は、従来考えられていたような脆弱なものではなく、強い細胞接着能と細胞増殖能を併せ持つ可塑性の高い付着機構であると解説されました。
 橋本先生には会場からの質問にも随時お答え頂き、活発な議論ができた有意義な講演会となりました。

第109回 第109回研究例会報告
日時:平成25年1月27日(日)
場所:大阪国際会議場
招待講演

座長:山野総一郎先生

講師:大阪府開業 山本敦彦先生

演題:Erbium Laser によるMicro explosion を用いたPeri-implantitis 治療
 山本敦彦先生に『Erbium Laser によるMicro explosion を用いたPeri-implantitis 治療』と題して講演頂きました。初めに現在使用されているレーザーについての基礎的な知識を解説されました。そして現在多くの歯科医が誤って理解している、または過大宣伝されているレーザーへのイメージについて正しく教えていただきました。
 レーザーには表面吸収型のCO2レーザーとErbium yag が、また透過性のNd yagとDiodeの4種類があるが、それらの基本的な特徴を知らなければレーザー治療について理解できないため、それらの特徴もわかりやすく解説頂きました。本論部のインプラント周囲炎とインプラント粘膜周囲炎への対応については、動物実験の結果や多数の動画とともに臨床症例を呈示しながら解説頂きました。
 最後に歯周炎の根面へのレーザーの応用についての話で締めくくられました。私自身レーザーを使用したことはありませんが、基本をしっかり学んでから正しくレーザーを使用すれば臨床での応用範囲は今後さらに広がると確信しました。
 会員の先生方にはレーザーを持てば、すぐにインプラント周囲炎や歯周炎に使えるという誤った考えを持たずに基本的な従来の手技を十分マスターした上で使用して頂きたく思いました。
会員発表

座長:山野総一郎先生

演者:大阪府開業 久保茂正先生

演題:高出力コールドレーザーの歯科治療への応用について
 高出力コールドレーザーの歯科治療への応用について発表頂きました。久保茂正先生は、東洋歯科医学分野でも臨床経験が豊富で、今回は東洋医学をも併用した高出力コールドレーザーの特徴と臨床症例についても説明頂きました。臨床では高出力コールドレーザーは顎関節症に一番効果があるようですが、それらの効果の機序についてはまだ不明な点が多いと言うことでした。その他にも外科手術後の疼痛緩和や下顎神経麻痺など多くの歯科合併症に対しての効果をも供覧していただきました。
会員発表

座長:阪本貴司先生

演者:神戸市開業 長田卓央先生

演題:補綴前処置として矯正治療を積極的に応用し長期的安定を目指した症例
 補綴前処置として矯正治療を積極的に応用し長期的安定を目指した症例と題して会員の長田卓央先生に発表頂きました。特に審美性を要求される上顎前歯部の補綴処置に際して事前に歯列を修正しておくことは、高い仕上がりを必要とされる部位には有効であことを自身の臨床症例を呈示して説明されました。また臼歯部の傾斜のアップライトが簡便に行えるMTMの装置など広い経験から説明されました。
 身近な分野だけに会場からの質問も白熱し、久しぶりに当会らしいディスカッションとなりました。
第108回 第108回研究例会報告
日時:平成24年11月25日(日)
場所:大阪国際会議場
招待講演

座長:木村 正先生

講師:大阪歯科大学 歯科放射線学講座 講師 四井資隆先生
 大阪歯科大学 歯科放射線学講座 講師の四井資隆先生に”歯科医用コーンビームCTの歯科臨床への有用性”と題して講演いただきました。CTの講演は、いままで多くの先生の話を聞きましたが、四井先生の講演は、非常にわかりやすく、個人的な疑問点が多数解決されましした。
 歯科用コーンビームCT(以下CBCT)を世界ではじめて開発したのは日本ですが、その半数が日本国内にあることについて私は驚いていました。単純に日本の歯科医がお金持ちかと思っていましたが、それは海外ではエックス線の撮影には専門医の診断が必要であり、そのため院内にCBCTを設置しても日本のように歯科医が全ての診断を行うわけではない事を知りました。それがヨーロッパでは1台のCTを何人かで共有している理由で、逆に日本では歯科医の責任で撮影も診断もできるわけですから、十分な基礎知識を持っていなければならず、被爆に対しても細心の注意を払う必要があります。講演では、ヨーロッパ歯顎顔面放射線学会の基本原則に準拠して日本放射線学会が作成したCBCTの利用に関するレギュレーションについても解説いただきました。
 福島の原発事故以降、国内で過敏になっている被爆の問題ですが、多くの報道や医療関係者の説明には問題点が多く、それらの矛盾点と真実をわかりやすく解説いただきました。会員からの多くの質問に対しても、講演時間をオーバーして回答いただきました。講演の最後に、まずは被爆の少ないデンタルX線検査を行い、パノラマ、そしてCBCTか医科用CTをうまく選択して、最小限度の被爆量で多くの情報を得るようにする義務が我々にはある、と述べられました。放射線の専門医としてではなく、歯科医師としての四井先生の臨床への考え方に共感したのは私だけではなかったと思います。有意義な講演会でした。

教育講演

座長:高田勝彦先生

講師:兵庫県歯科医師会 医療安全対策委員 木村 正先生

演題:医療処理の事例、なぜ患者と歯科医師の言い分が違ってくるのか
 兵庫県歯科医師会医療安全対策委員で当会の会員でもある木村 正先生に、”医療処理の事例、なぜ患者と歯科医師の言い分が違ってくるのか”をテーマに講演いただきました。患者とのトラブルはなぜ起こるのか、またどのように対処すればいいのかを数多くの事例で説明されました。特に我々歯科医側の考えと患者側の考え方の違い、つまり歯科医の勘違いと間違った対応と患者の精神を和らげる”適切な対応”とは何かを解説されました。謝罪や誠意、賠償などの言葉は知っていても、患者の求めている本質を我々は見誤ってはならないと思いました。
会員発表

座長:高田勝彦先生

講師:広島県開業 中島康雄先生

演題:単純歯欠損に対するインプラント治療への取り組み
 中島康雄先生に、”単純歯欠損に対するインプラント治療への取り組み”と題して発表いただきました。
 4つの症例を提示されましたが、大臼歯、小臼歯、前歯部へのそれぞれの部位への審美的要求度の高いインプラント治療の問題点と対応について考察されました。特に審美的要求が高い上顎前歯部へはできるだけインプラントを避け、自分の力量に応じてブリッジや軟組織移植で対応しているとのことでした。提示症例の資料はよく整理され、きれいなものばかりでした。
 術後のCT撮影の有無については、会場から様々な意見が飛び出し議論が爆発しました。当研究会の忌憚のない意見交換はある種の伝統であり、臨床への熱意の裏返しと感じています。中島先生、お疲れ様でした。
第107回 第107回研究例会報告
日時:平成24年9月2日(日)
場所:大阪国際会議場
教育講演

座長:石見隆夫先生

講師:阪本貴司先生 大阪市開業
Part1(抄録から)

演題:インプラント治療を進める前に必要な天然歯の検査と診断

 欠損部への修復治療としてインプラントは有効な補綴処置の一つである。しかし初診時からインプラントを前提とした治療計画が立案される事はなく、義歯やブリッジなどの複数の治療方法が検討される。最終的な治療計画は欠損部の診査だけでなく、残存歯の状態を詳細に把握し、各種の検査結果から導かれた診断を元に決定される。選択される治療方法は複数存在しても正しい診断は一つしかあり得ない。
全身状態の検査は、すべての患者で行われる。インプラント治療を含め観血処置が予定される場合には、現在の状態を担当医師と相談し、自身が行う治療の負担に患者が耐えうるのかを判断せねばならない。局所的検査は口腔内の残存歯を中心に行われるが、視診、エックス線検査、模型などから診査される。欠損部への補綴が必要な場合には、義歯・ブリッジ・インプラントから補綴方法を選択する必要があるが、残存歯の検査を先に行い、カリエス、歯周炎、歯列不正、顎関節症、欠損症などの診断名を明確にすることが重要である。
欠損部にインプラント補綴を選択した場合には、特に歯の喪失原因を明らかにしておかねば、インプラント補綴後も同じリスクを背負うことになる。インプラントが喪失する原因の多くはインプラント周囲炎であり、残存歯からの細菌感染や過重負担が起因となる。残存歯の咬合異常や進行した歯周病を放置してインプラント補綴を行えば安定した予後は期待できない。
本講演では、インプラント補綴が計画される前に行うべき残存歯の検査と診断について、重度歯周病症例の初診からメインテナンスまでの治療経過と共に、検査手技の動画も交えて解説する。
Part2(抄録から)

演題:経過不良症例の診断と撤去時の注意点
 インプラントの上部補綴装着後もメインテナンス治療によって、定期的に口腔内を管理することが重要である。インプラントは一旦感染が波及すると、天然歯と違い容易にインプラント周囲炎を生じ、不良経過をたどれば撤去にいたる。インプラント周囲炎を予防するには、定期的にインプラント周囲組織をモニターすることが必要である。
メインテナンス時に診査する項目には、疼痛の有無、咬合診査、PPD(Probing Pocket Depth)、BOP(Bleeding on Probing)、排膿の有無、エックス線による周囲骨の診査、インプラント体の動揺などがある。インプラント周囲炎の診査は、プローベの挿入圧など若干の違いはあるが、基本的に天然歯の歯周炎の検査と同じである。
ブレードタイプや骨膜下インプラントなどの現在ではあまり使用されていないインプラントも、今なお多くの患者の口腔内で咀嚼機能を営んでいる。このような旧タイプのインプラントへのメインテナンスは、インプラント体の構造の違いから、通常のスクリュータイプとは異なった方法が必要になる。経過不良症例の場合には撤去にいたる事もあるが、ブレードや骨膜下などのインプラントはその構造や特徴を知らずに撤去を行えば、舌や頬の損傷、インプラントの洞内への迷入、下歯槽神経麻痺など、思いもよらない合併症を生じる危険がある。どのようなインプラントでも20年以上の長期経過をたどれば、撤去に至る可能性が高くなる。インプラントのメインテナンス治療とは、安全な撤去までも含めている事を忘れてはならない。
本講演では、メインテナンス時の診査項目について説明するとともに、ブレードや骨膜下インプラントなど、旧タイプインプラントの撤去時の注意点について手術動画を交えて解説したい。
 阪本貴司先生には、2012年9月に大阪で開催される第42回公益社団法人 日本口腔インプラント学会での入門セミナーから抜粋して講演頂きました。Part1では、"インプラント治療を進める前に必要な天然歯の検査と診断"をテーマに、これからインプラントを始める先生に対して、
残存天然歯の各種検査が重要なことを説明頂きました。各種検査の方法では、数多くの動画を交えて解説頂きました。
 Part2では、”経過不良症例の診断と撤去時の注意点”について講演されました。
こちらでも各種インプラントの撤去の注意点を動画を交えて解説いただきました。さすがに、あちらこちらで講演されているだけあり、メリハリがあり、わかりやすく勉強になる1時間半でした。

会員発表

座長:吉田春陽先生

発表1

演者:勝 喜久先生 豊中市開業

演題:パラファンクションを考える

 口腔内の健康を守るためには、咬合の安定と炎症の抑制が必須である。
 炎症の抑制に関しては、毎日のホームケアと定期的なメインテナンスでその目的にほぼ達する事が出来るが、咬合の安定においては難しい場面に遭遇する事が多々ある。下顎運動を考える時、咀嚼などの生理的運動とブラキシズムなどの非生理的運動(パラファンクション)に分ける事ができる。
 パラファンクションは咬合の安定を妨げる大きな要因となる事が多く、日常の臨床において、パラファンクションによると思われる口腔内のトラブルに遭遇する機会は多い。今回の発表では、私自身の今までの臨床におけるパラファンクションが原因と思われる口腔内のトラブルとその対応について、経過の良好例と不良例をもとに、私なりの考察を話させて頂き、ご参加下さった先生方から多くのアドバイスを頂戴したいと思っている。
発表2

演者:吉竹賢祐先生 吹田市開業

演題:抜歯即時埋入インプラントに使用する、自己血フィブリンの有効性について

 抜歯即時埋入インプラントは条件が整えば有益性のある治療法である。
しかしながら、骨壁とインプラントフィクスチャーの間にスペースが生じ、骨移植等の処置が必要になってくるケースも少なくない。
一次閉鎖を行うことにより、骨組織の治癒経過が有利に働くと考えられるが、閉鎖は容易ではなく、また、減張切開を行えば付着歯肉の喪失を招いてしまう。
結合組織移植による閉鎖が一般的ではあるが、同時に別の創を作るというデメリットがある。
そこで我々は、抜歯窩の閉鎖と創の治癒促進を目的とし、抜歯即時埋入インプラント症例に自己血フィブリンを使用することで良好な結果を得られたので報告する。
発表3

演者:落合友香先生 箕面市開業

演題:再生療法・矯正治療を併用した前歯部インプラントの一症例

 重度歯周炎の歯牙に対しては、抜歯か保存かの難しい選択をしなければならない場合があります。
 今回は前歯部の重度歯周炎の歯牙に対してインプラント治療を行うにあたり、
隣接歯に再生療法、また矯正治療を併用して行った症例を発表させていただき会員のみなさまのご意見を賜りたいと思います。
 会員発表では3名の先生に講演頂きました。発表1の勝喜久先生には”パラファンクションを考える”と題して、自身の数多くの長期経過症例からお話頂きました。インプラント上部構造の形態や咬合、材質などにも触れられ、会場からの多くの質問が飛び出し活発な議論がなされました。発表2の吉竹賢祐先生は”抜歯即時埋入インプラントに使用する、自己血フィブリンの有効性について”をテーマに、ご自身の300例近い症例から抜歯窩やインプラント埋入への自己血フィブリンの有効性について話されました。フィブリンの効果について、治癒が促進されるよりも患者の疼痛が軽減される、との話は開業医にとって大変興味のある内容でした。
数多くの症例には質問も多く、活発なディスカッションがなされました。発表3の落合友香先生は、再生療法・矯正治療を併用した前歯部インプラントの症例を提示頂きました。ペリオ、補綴、矯正治療に分野が重なる症例だけに各専門分野の先生から手厳しい質問が降り注ぎました。
自身の症例について反省も交えた発表には、落合先生の臨床への熱心に取り組む真摯な姿勢が垣間見れました。
 今回は教育講演も含め4名の講演とも会員の発表とあって、活発な議論がなされ久しぶりに当研究会らしい例会となりました。
 ビジターの先生は少し刺激が強く、驚かれたかもしれません・・・。
第106回 第106回研究例会・特別講演会
日時:平成24年5月20日(日)
場所:大阪国際会議場
第1部 シンポジウム

座長:阪本貴司先生

シンポジスト: 細川隆司先生 九州歯科大学教授
若松陽子先生 関西大学法務研究科教授

テーマ:患者から信頼されるインプラント治療の構築
 平成23年12月22日に国民生活センターから “歯科インプラント治療に関わる問題” について発表資料が出されました。また今年2月にNHKの“クローズアップ現代”で“トラブル急増、歯科インプラント”が放送されました。
これらの報道の信憑性ついては、その取材方法から多くの問題点が指摘されており、意図的に誇張された部分も多いと聞いています。しかし番組が患者さんに与えた影響は大きく、インプラント治療への不安と歯科医への信頼を失墜させる原因になったのではないでしょうか。

 多くの歯科医師は真摯にインプラント治療の知識と技術を学び、患者さんに失った歯を取り戻す喜びを与えているにもかかわらず、このような報道がなされた原因はどこにあるのでしょうか。我々は、“患者から信頼されるインプラント治療の構築”をテーマに、この問題について討議し、問題点と今後の我々が取り組むべき役割について、シンポジウムを開催しました。シンポジストには各分野を代表して3名の先生に討論に参加してただいました。

・教育機関・学会の代表 九州歯科大学教授 細川隆司先生 
・法律専門家・患者の立場も兼ねて 関西大学法務研究科教授 弁護士 若松陽子先生
・歯科開業医 大阪市開業 阪本貴司

 シンポジウムでは、多くの歯科医が日々研鑽しているにもかかわらず、それが広く患者に伝わっていない現実、インターネットでの情報に誇大広告が多く、混乱を招いている事実、インプラント治療はどこの医療機関でも行える手術ではなく、一定レベルの医療体制が整った施設で行う必要があることをどのように患者さんに知ってもらえるのか、などについて各分野から討論されました。また患者から信頼されるインプラント治療の構築を目指した“研究会としての提言”も発表されました。(提言は研究会HPに掲載します)

第2部 特別講演会

座長:佐藤文夫先生

講師:辻 孝先生 東京理科大学教授

テーマ:未来の歯科治療としての歯科再生医療
 特別講演会には、東京理科大学教授の辻 孝先生をお招きしました。
 再生医療は、21世紀の新しい医療システムとしての確立に向け、「幹細胞」を部分的に損傷した部位へ移植、補充する「幹細胞移入療法」を中心に臨床研究が始まっており、歯科においても骨の再生治療や歯周病治療の開発が進められています。

 辻先生はこれらの最先端分野において、医科・歯科関係の研究者とともに長年に渡り東京理科大学の総合研究機構で再生医療の研究をされてきました。
 辻先生は、多くの再生臓器の中でも“歯”が一番面白いと言われます。こんなに小さな歯の中に多くの組織があり、研究者としては興味を抱く分野であるようです。我々が日々扱っている臓器が、このように興味を持たれる分野であることに喜びを感じずにはいられません。

 歯科における再生治療で期待されているのは、喪失した歯を再生によって取り戻すことです。辻先生の研究グループは、正常発生可能な歯胚を再生するための三次元的な細胞操作技術である「器官原基法」を開発されました。この再生歯胚を成体の歯の喪失部位へ移植することにより、再生歯を萌出させて咬合させることに成功するだけでなく、骨のリモデリング能を有する歯根膜を介して、骨と連結機能を有するようにもなりました。そして驚くべきことに、再生歯では外部からの侵害刺激を中枢に伝達しうる神経機能をも再生できるようです。また再生歯胚から歯と歯根膜、歯槽骨を有する再生歯ユニットを移植すると、骨性結合により生着し、再生歯胚と同様の機能を有することも明らかになっています。
 歯科再生医療の実現可能性の時期は、今から20年から30年以後になるであろうとのことでが、歯科医療の将来に大きな夢を持てる講演会でありました。
第105回 第105回研究例会報告
日時:平成24年2月26日(日)
場所:大阪国際会議場
招待講演

座長:山野総一郎先生

講師:三橋 純先生 東京都開業

演題:顕微鏡で何が見え、何を見せられるか
 三橋 純先生をお招きし、顕微鏡を使用した歯科治療について講演頂きました。

 一度でも顕微鏡で口腔内を覗いたことのある歯科医師は、別世界ともいうべき明瞭な視野が広がる感動を覚える。それにも関わらず、多くの歯科医は顕微鏡の導入に踏み切らない。
ほとんどの情報を視覚から得る歯科医療において、視覚を強化することは、治療の質向上に直結することが明らかであるのになぜだろうか。
 よく見えることで治療時間も長くなるため、保険診療が基本の日本の歯科医療現場には普及しずらい事が理由として考えられる。導入しても実際は使わない先生が多いのもこれらの理由である。

 臨床用実態顕微鏡は歯科医療に二つの革新をもたらした。
 一つは”見えなかったものを見えるようにしたこと”、二つ目は”見せられなかったものを見せられるようにしたこと”である。

 講演では、顕微鏡を使うことで、肉眼では見つけられなかったカリエスやマイクロクラックなどが見つけられること、また今までは原因がわからなかった、疾患の診断も可能になることをビデオを供覧しながら説明されました。
 CR充填、再根管治療、窩洞形成から抜歯まで、開業医であれば誰もが日常的に行う治療も顕微鏡を使うことで、その精度と完成度が高まることを自身の症例から証明されました。

 顕微鏡は治療技術の向上だけでなく、今まで見せられなかったものを患者に見せられるようになったことによって、自費診療導入へも理解を得やすくなると述べられました。
 最後に、顕微鏡で治療できる時代に、現役歯科医である我々は本当に幸せである。やがて来る顕微鏡治療が当たり前の時代に向けて喜びを感じて治療ができるように、ぜひ顕微鏡を導入し、明るい未来を感じて欲しいと締めくくられました。

 顕微鏡を使った先生の診療技術も素晴らしいと感じましたが、先生の歯科治療に対する、そして患者に対する考え方に共感したのは私だけではないと思います。
会員発表

座長:山野総一郎先生

発表者:白井敏彦先生 堺市開業

演題:実体顕微鏡による感染根管治療について

 マイクロスコープを臨床に取り入れて9年目になる白井先生に、実体顕微鏡による感染根管治療について発表頂きました。自身の診療所の立地条件や患者数なども考慮し、現在どのような症例に顕微鏡を使用しているのかを話されました。根管治療を中心に臨床例を供覧いただき、歯根端切除術の術式や最近の考え方などもビデオで説明されました。どの症例も仕上がりの優れた症例ばかりでした。
 また自身が苦労した臨床症例なども提示いただき、顕微鏡が身近に感じられるわかりやすい発表でした。
会員発表

座長:山野総一郎先生

発表者:高田光彦先生 神戸市開業

演題:拡大治療について

 拡大治療について”の演題でCR充填を中心に発表頂きました。
 マイクロスコープと高倍率拡大鏡をどのように使い分けているのかを自身の臨床から話されました。審美的要求が高い前歯部のCR充填では、マイクロスコープよりも高倍率の拡大鏡の方がライトの入射角度で、色調合わせが容易であることなども説明されました。
 また臼歯部2級窩洞へのポーセレンインレー症例やCR充填の際の隣接部コンタクト部への遮蔽方法についても自身が考案されたテクニックを紹介されました。
第104回 第104回研究例会報告
日時:平成23年11月13日(日)
場所:大阪国際会議場
招待講演

座長:山田屋孝太郎先生

講師:高 永和先生 大阪市開業

演題:金属アレルギーをちゃんと考える
 高 永和先生をお招きして「金属アレルギーをちゃんと考える」と題して講演頂きました。
私も講演をお聞きして、初めてすべての歯科材料はチタンも含めて、金属アレルギーを起こす可能性がある事を知りました。そして歯科金属アレルギーは口腔内で溶解した「金属イオンアレルギー」であることも教えて頂きました。
 歯科金属アレルギーの治療の現状は、整備されたガイドラインは未だなく、さまざまな治療方法が提示されているが、それらはエビデンスに乏しく不適切な方法も多く、先頭に立つべき各大学の歯科金属アレルギー外来もその情報発信の役割を十分に果たせていない現状です。
 金属アレルギーを診断する基本的な検査にはパッチテスト(PTやリンパ球幼若化試験(LST)がありますが、歯科医院で診察する前に皮膚科など専門医を受診してもらい、そこでで改善しない事を確認してから行う必要があります。歯科金属アレルギーは、口腔内の金属が原因であるにもかかわらず、その症状は口腔内には発症せず、口腔内から遠隔の皮膚に発症することがきわめて多いのが特徴です。その事もよく知っておく必要があります。
 高先生は歯科金属アレルギーの治療のフローチャートを作成し、各方面で執筆、報告されています。今回の講演では多くの症例と具体的な治療の流れを説明頂く中で、それらのフローチャートでは記載できない治療の“勘どころ”や“注意すべきポイント”を教えて頂きました。対象金属を口腔内から除去することで、一時的な悪化症状を呈するが、それはまさに歯科金属アレルギーと判定できる決め手となる事など、我々には初めて知る事ばかりでした。
講演の最後に、歯科金属アレルギーの問題をこのまま我々歯科医が放置すれば、「歯科金属アレルギーは歯科医がつくったもの」との誹りを免れないとの言葉は大変重く、会員の胸に突き刺さりました。大変有意義な講演会でした。
会員発表

座長:白井敏彦先生

発表者:西川和章先生 大阪市開業

演題:マイクロスコープの基礎と臨床

会員発表では、会員の西川和章先生が「マイクロスコープの基礎と臨床」というテーマで発表されました。自身の医院での治療にマイクロスコープを取り入れている利点を症例を呈示しながら発表されました。また、マイクロスコープをこれから導入することを考えている会員向けにもマイクロスコープの基礎的な構造や各種機種の違いなども説明頂きました。
マイクロスコープの普及は今後も広まると思います。今後導入する先生が増えると思いますが、マイクロスコープは術野をより明示することができ、より高度な治療を目指す事はできますが、治療技術がそれで向上するものではないという事を知っておいて頂きたいと思います。
第103回 第103回研究例会報告
日時:平成23年9月4日(日)
場所:新梅田研修センター 4F会議室
招待講演

座長:阪本貴司先生

講師:細川隆司先生 九州歯科大学歯学部 口腔再建リハビリテーション学分野教授

演題:インプラント治療を行う前に重要なこと、変わりつつある歯科医療の方向性を探る
 細川隆司先生を北九州市からお招きしました。台風の影響で交通機関も一部ストップし、 天候も悪い中、当会の招待講演に足を運んで頂きました。
細川先生は、当会の大阪口腔インプラント研修セミナーの講師でもあります。

 今回は 「インプラント治療を行う前に重要なこと、変わりつつある歯科医療の方向性を探る」 というテーマで講演頂きました。インプラント治療は一旦始めると後戻りが出来ません。そのため 患者さんとトラブルにならないように、治療を開始する前に必要な検査や注意すべきポイントを 臨床例から、わかりやすく説明いただきました。また、2006年度以降、人口減少時代を迎えた 日本における今後の歯科医療が目指す方向性についても話していただきました。

 大学病院に来院されるインプラント患者が、ここ10年で大きく変り、今までのように 「術者が最良と考えるインプラント治療」が必ずしも正当化される時代ではなく、「患者が満足する 治療」、すなわち患者のQOLを考慮した「患者主導型」のコンセプトが重要であると話されました。
そして「患者主導型」の中心をなすトレンドが、治療期間の短縮と大がかりな骨造成外科手術の 回避であること、そのための即時荷重の術式が、今後は重要視されること、その一方で、即時荷重の 臨床ガイドラインはまだ確立されているとは言い難く、慎重に進めなければならないことを自身の研究 データを交えて説明いただきました。

 即時荷重については、臨床研究が少ない面もあり、会員からも多くの質問が飛び出しました。 即時埋入に適した骨の診断方法、初期固定の評価基準、適用するインプラントの本数やサイズなど 一つ一つの質問に対しても丁寧にお答え頂きました。
 当研究会の特徴でもある活発な議論が交わされ、細川先生にも、エキサイティングで楽しかったですと 言って頂きました。細川先生の人柄にも多くの会員が感銘させられた講演会でした。
会員発表

座長:阪本貴司先生

発表者:高田 剛先生

演題:下顎両側臼歯遊離端欠損部にインプラント治療を行った1症例

会員発表では、高田 剛先生が”下顎下顎両側臼歯遊離端欠損部にインプラント治療を行った1症例”について症例報告 をされました。公益社団法人 日本口腔インプラント学会の認証医取得のためにケースプレゼンテーション試験に提出される 症例でもあり、試験のアドバイスをも兼ねた厳しい質問もあり、意義のある発表、そして試験準備ともなりました。

例会の最後には施設長の阪本貴司先生から公益社団法人 日本口腔インプラント学会専門医制度の更新の 変更点などが説明されました。
第102回 第102回研究例会・特別講演会報告
日時:平成23年5月22日(日)
場所:大阪国際会議場 12F 特別会議室
招待講演

座長:佐藤文夫先生

講師:堀内克啓先生 大阪大学歯学部臨床教授 中谷歯科医院院長

演題:骨造成とサイナスリフトを成功させるための基礎知識と術式のポイント
大阪大学歯学部臨床教授の堀内克啓先生に”骨造成とサイナスリフトを成功させるための基礎知識と術式のポイント”をテーマに講演いただきました。

講演の前半部では、骨造成の基本となるブロック骨による骨移植や歯槽骨延長術についての基礎知識と術式のポイントについて、部位別および欠損様式別による歯槽堤造成術のガイドラインを提示し、どのような症例にはどの術式を単独あるいは併用するのが最適であるかを、また併用する場合はどの順番で行うのがよいかを、自験例を供覧しながら解説していただきました。

また手術ビデオも多数供覧いただき、外科手術の基本となる切開、剥離、止血から減張切開、縫合まで使用器具の選択も含め詳しく解説頂きました。 
後半部では、サイナスリフトの術式の基礎から症例の診断と術式の選択について解説頂きました。

特に側壁開窓の際の上顎洞粘膜のPerforationへの対応について破損の大きさによって各種の対応方法を示して頂きました。

かなり熟練した口腔外科医であっても、多様な要因により症例の約20%で上顎洞粘膜Perforationが起こると言われていますが、それらは隔壁部や難症例で高度な術式を併用した際に起こることであり、単純に側壁を開窓中に洞粘膜を破るような未熟な技術であればサイナスリフトをすべきでないとの考え方には、共感しました。
それだけサイナスリフトや歯槽堤造成術は難しい処置であり、そのために基本手技をしっかりと学ぶべきであると考えています。



骨造成術は、インプラント治療を行う臨床医にとってとても感心の高いテーマであり、当日は150名分準備した会場もほぼ満席となりました。

本研究会も若手の先生が増えてきました。
そのような中で外科術式の基礎について聴講できたことは大変有意義な講演会であったと思います。
第101回 第101回例会報告
日時:平成23年2月20日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演

座長:山田屋孝太郎先生

講師:医療法人寿会 富永病院 神経内科部長、頭痛センター長、竹島多賀夫先生

演題:片頭痛、群発頭痛、三叉神経自律神経性頭痛
   歯科領域の先生方に知って頂きたい新しい一次性頭痛の考え
招待講演に、富永病院の神経内科部長、頭痛センター長の竹島多賀夫先生をお招きしました。
我々歯科医の日常臨床において原因不明の疼痛に出くわすことがあります。
いろいろな検査をしても歯科領域に原因が見あたらなく、患者への説明に苦慮することもあります。
実際口腔内にいろいろな症状が表れ、歯に痛みを覚える頭痛もあります。

今回、竹島先生の講演では、そのような歯や口腔内に症状が現れる頭痛について解説いただきました。
頭痛の分類も1962年に米国NIHのAdhoc委員会で作成された頭痛分類から、1988年の国際頭痛分類と診断基準、2004年の国際頭痛分類第二版(ICHD-II)と改訂されており、現在ICHD-IIIに向けて国際的な作業チームが結成されているとのことです。

顎関節症が原因と考えられる頭痛や口腔内にプレートを装着することで治癒する疼痛など頭痛との関連を疑う歯科領域の疾患も多くあると思われますが、現在の所はエビデンスが不足しているため頭痛学会での分類や症状には組み込まれていないようです。
今後は歯科医とも連携し、口腔内に出現する症状についてさらに診断や分類がなされるべきと話されました。
今後の臨床において有用な話を聞くことができました。
教育講演

座長:佐藤 文夫先生

講師:木村 正先生

演題:臨床医が見落としやすいCT画像の盲点
CTの普及には目覚ましいものがあります。
今後もますます広まることが確実ですが、すべての画像診断がCTで可能と考えるような傾向もあるように思います。

今回の講師の木村正先生は、CTが広まりだした10数年前から、現在のCT画像の問題点を指摘してこられた数少ない放射線科の先生です。
CTは画像診断のひとつの装置であり、デンタルエックス線写真やパノラマエックス線写真などの昔からある画像診断や他の臨床検査と併用して用いる事が大切です。

講演では、多くの臨床医が勘違いしているCT画像の読み方を臨床症例のさまざまな画像から説明いただきました。
また撮影された生のデータから、CT画像がどのように構築されているのか、その基本的なしくみや機種による特徴も解説いただきました。

実際には存在するインプラントの周囲骨がデジタルエックス線写真では吸収像のように見える理由や複数のインプラント体の間の骨がCT画像で吸収して見えることなど、目から鱗の話をたくさん聞くことが出来ました。
会員の先生も日常の臨床に直結する身近な話題だけに、質問も数多く飛び出し、第2弾の講演を期待するような熱気の中で講演を終えました。
第100回 第100回例会(25周年記念例会)・第10回日韓学術交流会
日時:平成22年11月7日(日)
場所:大阪国際会議場12F
司会 長田 卓央先生
コーディネーター 山野総一郎先生
日本側講演者 阪本 貴司先生
勝  喜久先生
高田 勝彦先生
韓国側講演者 Kim, Tae Young DDS, PhD
Park, Won Hee DDS, MSD, PhD
Kim, Hyoun Chull DDS, MSD, PhD
テーマ インプラントと天然歯との長期安定を求めて
当会が発足して25年を迎え、第100回例会(25周年記念例会)が第10回日韓学術交流会と合わせて開催されました。


25周年・第100回記念例会と第10回日韓学術交流会が開催されました

“インプラントと天然歯との長期安定を求めて”をテーマに日本と韓国から6名の先生が発表されました。
日韓の同時通訳ブースも設置され、講演内容はすべて3名の通訳者から専用のレシーバーにて会場の先生に配信されました。

まずインプラントの立場から阪本貴司先生が自院のインプラント補綴後の近接天然歯の喪失状況を8年間に渡って統計的に検討した結果を報告されました。

またKim, Tae Young先生もインプラントの立場からアバットメントとフィクスチャー接合部の様式からそれぞれのインプラントの特徴を臨床的に比較検討した結果を発表されました。

補綴の立場からは、勝喜久先生が安定した咬合を妨げる原因は大きく分けて炎症と咬合であり、炎症の抑制と咬合の安定こそが歯科治療の根幹をなすものであるという考えを話されました。
そして材料・形態・操作術などチェアーサイドとラボサイドにおける多くの考慮すべき点が挙げて、咬合の安定を得るためにどういう点に注意をして臨床を進めればよいのか、それらの指標について発表されました。

Park, Won Hee先生も補綴の立場からインプラント支台のデンチャーやインプラントの残存率などについての研究成果を発表されました。
歯周病の立場からは高田勝彦先生が天然歯を保護するための考え方について症例や病理組織像などを提示し説明されました。

Kim, Hyoun Chull先生は、最新のレーザー治療が機械的スケーリングおよびルートプレーニングの代替法として有効な治療となりえることなどを中心に話をされました。


日韓の講演者、左から阪本貴司先生、Kim, Tae Young 先生、勝 喜久先生、
Park, Won Hee、高田勝彦先生、Kim, Hyoun Chull先生


講演後は6名の先生が登壇し、コーディネーターの山野総一郎先生の進行によってシンポジウムが行われました。講演者と会場の先生との激しい議論が当会の特徴でありますが、1時間のシンポジウムも時間がオーバーするほど議論が途絶えず、白熱した有意義なディスカッションが行われました。


コーディネーターの山野総一郎先生

インプラントおよび天然歯の咬合、周囲組織の状態、レーザー治療効果、パラファンクションやナイトガードの有効性など、さまざまな疑問が議題になりました。

我々臨床歯科医にとって日々進歩する技術や材料は無視できません。
今回のディスカッションでも、まだまだ解決できない疑問が多く残りました。
これらを次の課題として、今後も研究と探求を続けて行かねばなりません。
そして、インプラントや天然歯が長期に渡って安定することが、患者さんの真の満足につながらなければなりません。
第99回 日時:平成22年9月5日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演

座長:佐藤 文夫先生

講師:大阪歯科大学歯科麻酔学教室 教授 小谷順一郎先生

演題:口腔インプラント手術と全身管理
招待講演には大阪歯科大学歯科麻酔学教室の小谷順一郎教授をお招きしました。

小谷先生は、日本口腔インプラント学会認定の研修施設である
大阪口腔インプラント研修セミナーの講師も務めて頂き、専門医を目指す受講生の指導も行って頂いています。

今回は我々開業医がインプラント手術を行う際の考え方、また日頃の疑問点を中心に話して頂きました。

まず、難抜歯や抜髄処置と違ってインプラント埋入手術が特異的な処置であること、そしてインプラント手術は骨に対する外科処置である”という認識を持って欲しいと述べられました。

骨を切削する際には、患者さんは意識をしていないが、実は大きな負荷が加わっていること、そのために他の歯科処置と違って術中に鎮静法を行うことが大変有効である事を説明されました。

また、鎮静に使用するモニターについて、血圧、SpO2、心電図などのデータの意味や読むポイントについてもわかりやすく解説頂きました。

数多くのインプラント手術を現場で管理されている経験から、大学的な大まかな話ではなく、臨床現場をよく知っておられる麻酔医として、適切な手術時間や使用する麻酔量、術中の気道の確保など具体的な話を聞かせて頂きました。

講演後の質問の多さからも、術中の管理への感心と全身管理の重要度が高いことを痛感させられました。
教育講演

座長:山野総一郎先生

講師:大阪市 開業 阪本貴司先生

演題:インプラント周囲炎とリカバリー
教育講演には会員の阪本貴司先生に”インプラント周囲炎とリカバリー”について講演頂きました。

講演では当会で行った「症例検討シンポジウム」で提示された過去の症例について先生が治療された経過も含めてお話頂きました。

提示症例は5年前の平成17年の「第1回症例検討シンポジウム」と平成21年の「第4回症例検討シンポジウム」の症例について供覧頂きました。

講演ではインプラント治療後のメインテナンス時に行う検査としてエックス線検査、動揺、排膿などの診査に加えてプローべによるBOPとPPDの検査の意義と重要性について話されました。

またインプラント周囲炎によって汚染されたインプラント体へのβ-TCP溶射によるエアーアブレーション処理の実際の手術ビデオなどを供覧頂きました。

インプラント周囲炎の処置はそのインプラントが術後10年未満、10年以上経過、20年以上経過によって対処や患者さんへの説明も変わってくること、患者さんの環境や年齢なども考慮して撤去やデブライドメンドなどの処置を考える必要があると述べられました。

若い先生が増えた当研究会ですが、当会の例会らしい皆でディスカッションし、共に学ぶという雰囲気の講演会であったと思います。
第98回 日時:平成22年5月23日(日)
場所:大阪国際会議場
特別講演

座長:佐藤 文夫先生

講師:船登彰芳先生
     5-D Japanファウンダー
     石川県金沢市開業      

   石川知弘先生
     5-D Japanファウンダー
     静岡県浜松市開業

演題:4D Concept Implant Therapy

船登彰芳先生と石川知弘先生に講演いただきました。両先生は開業医であると共に、スタディグループ5-D Japanのファウンダー(創設者)でもあります。
講演では審美的インプラント治療において、それらの審美性を獲得するためには、健全な天然歯周囲と遜色のない組織をインプラント上部構造周囲に温存もしくは再建することの必要性を述べられました。
特に重要視されているのは、初診からメインテナンスの一連の治療のなかで、適切なタイミングで適切な処置を行うことであり、この概念を従来から提唱されている3Dimensional Implant PlacementにTiming を加えて4D Concept Implant Therapyと総称し、単独歯欠損のみならず、組織の再建を必要とする多数歯欠損においても審美性を獲得することを目標として治療を進められていました。

4時間の長い講演と満員の会場の熱気で、外の大雨の荒れた天気を忘れるような 充実した講演会でした。両先生のすばらしい臨床例にも驚きの連続でした。
講演後の懇親会にも忙しい中、出席いただきました。
帰りの列車のぎりぎりの時刻まで会員との懇親や質疑に答えていただき、両先生のお人柄にも感嘆いたしました。
会員にとって大変意義のある講演会でありました。

第97回 日時:平成22年2月21日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演

座長:高田勝彦先生

講師:信籐孝博先生
   医療法人 のぶとう歯科医院 理事長
   日本歯周病学会認定指導医、評議員

演題:インプラント治療のためのBlood Supply
講師の信籐孝博先生は臨床医であるとともに、大学の歯周病科で歯周組織の血液供給について様々な実験と研究をされた異色な経歴をお持ちの先生です。
講演では臨床におけるGBRや抜歯即時埋入、歯肉遊離組織移植などの術式の説明と共に、動物実験の研究結果からそれらの術式の治癒課程において血液の供給がどのように進行しているのかを話されました。

アクリル樹脂を動物の血管に流し込み、硬化後に走査電子顕微鏡にて観察した動物実験の様々な組織像を供覧されました。
臨床現場のの疑問からスタートし、その疑問を基礎実験から検証し、その結果を臨床に生かすという、我々臨床医にとっては、大変うらやましく理想的な研究を進めてこられたと思いました。
自身の体験から率直に語って頂いた臨床手技や研究結果は会員にとって大変有意義な講演でありました。
第4回症例検討シンポジウム

座  長:長田卓央先生

症例提示:阪本貴司先生

シンポジスト:英保 裕和先生

シンポジスト:山野総一郎先生
症例検討シンポジウムは提示症例に対して、シンポジストが診断し”私だったらこのように治療する”という治療計画を発表して、聴講している会員と共にディスカッションする当会でも好評を得ている例会企画です。

治療計画は担当する歯科医の数だけ存在します。治療計画に正解はありません。
しかし、自身が進めた治療計画がどのような診断と基準の下に判断されたかは、説明できなければなりません。
今回は”インプラント周囲炎”症例を中心に、当会でも臨床経験20年を超える英保裕和先生と山野総一郎先生にシンポジストとして発表頂きました。
症例呈示は臨床経験豊富な阪本貴司先生にお願いしました。

周囲炎に侵されたインプラントの診断と事後処置、また骨が不足している上顎臼歯部へのインプラント埋入、オーバーデンチャーの選択、天然歯との連結など様々な議論が展開しました。
参加した会員先生には、有意義でさまざまな治療方針が聞けたのではないかと思います。
第96回 日時:平成21年11月8日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演

座長:久保茂正先生

講師:若松陽子先生
   弁護士・関西大学法務研究科教授

演題:最近のインプラント訴訟の現状と紛争予防
最近のインプラント訴訟の現状と紛争予防について、弁護士で関西大学法務研究科の教授であります若松陽子先生に講演頂きました。

さまざまな医療訴訟の具体例から法律の改正点、歯科医療における医療紛争の特徴などについてお話いただきました。
医師側の立場から物事を判断してしまう我々にとっては、まさに目から鱗の連続でした。
患者主導主義のブームの中で、義務とサービスを混同している患者さんも多く、普通に診療していても知らない間に訴訟を受ける事があること、そしてそのためには普段から準備をしておくことの大切さを教えて頂きました。
具体的な同意書の書き方から訴訟に至った際の注意事項まで大変わかりやすく講演いただきました。
講演後の質問も途絶えず、時間の都合で割愛しなければならないほどの盛況でした。
関西出身の先生だけあって、時には厳しく、そしてユーモアもたっぷりのあっという間の3時間で、大変興味深い講演でした。
会員発表

座長:阪本貴司先生

発表1:宇野一雄先生

演題:下顎両側遊離端欠損にインプラントも用いて機能回復を行った1症例

発表2:森川充康先生

演題:下顎右側臼歯部遊離端欠損部にインプラント治療を行った1例
会員発表では当研究会入会1年目の宇野一雄先生と森川充康先生が発表されました。

入会1年目と言っても両先生とも臨床歴は長く、長い経験の中からインプラント治療の症例を発表されました。
当会の例会らしく、活発な議論の中、時には演者そっちのけで激しい議論が行われることもあり、臨床医にとって治療方法や考え方は多種あることがよくわかりました。
インプラントの埋入方法や材料の議論が多い中、残存天然歯をいかに残すことができるか、それらの議論が活発になされたことは大変有意義あったと思います。
第95回 日時:平成21年8月30日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
会員発表

座 長:阪本貴司 先生

発表1:英保 裕和 先生
演題:口腔外科の知識と技術を活用した MI インプラント

発表2:藤本 佳之 先生
演題:下顎遊離端欠損にインプラント治療を行った1症例

発表3:高田 光彦 先生
演題:Minimal Intervention

発表4:樋口 春彦 先生
演題:上顎埋伏犬歯を抜歯してインプラント補綴を行った1例

発表5:小室 暁 先生
演題:下顎遊離端欠損にショートインプラントを利用した1症例
会員5名の先生に発表いただきました。

英保裕和先生には抜歯即時埋入やAll-on-4症例など難易度の高い症例を供覧していただき、それらの治療のリスクについて、多種の文献を提示し解説していただきました。

藤本佳之先生には、日本口腔インプラント学会でのケースプレゼンテーション試験に準じた発表を行っていただきました。
発表形式や用語、準備する資料などについての質問が多く、今後試験を受ける先生にとって大変有意義な発表でありました。

高田光彦先生には、難易度の高い根管治療について、CTでの3次元的診断の重要性からマイクロスコープでの治療の実際まで発表いただきました。
CTはインプラントの診断だけでなく日常の歯科治療でも用いられることが増えてきましたが、会員からも多くの質問がありました。特に被ばく線量や日常の歯科治療での活用方法について
活発な議論がなされました。

樋口春彦先生には、上顎の埋伏犬歯を抜歯した部位への自家骨移植を併用したインプラント症例を提示いただきました。
インプラント周囲の残存天然歯の咬合など術後の経過での注意点などについても議論が交わされました。

小室暁先生には、長さが7mm以下のいわゆるショートインプラントを使用した症例を発表いただきました。
ショートインプラントの利点や使用における意義などさまざまなディスカッションがなされました。

会員発表とそれに伴う意見交換は当研究例会の伝統であり、講演による一方通行の知識の伝達では得れないメリットがあります。
今回は5名の会員に発表いただきましたが、それぞれの先生方の臨床への取り組みの熱意が感じられました。

1つの症例についてその診断から治療、術後管理までを確実に行い、それらを発表することは簡単なことではありません。
口腔内写真やエックス線写真など資料の整理や各種検査などは日常的に行っていないとすぐにできるものではありません。

5名の先生の発表から改めて日常の診療の大切さを再認識させられました。
会場も満員となり大変有意義な議論ができた例会でありました。
第94回 日時:平成21年5月10日(日)
場所:大阪国際会議場2F会議室
特別講演

座長:佐藤文夫先生

講師:菅井敏郎先生
   東京医科歯科大学 臨床教授
   銀座UCデンタルインプラントセンター所長

演題:
安全で確実なインプラント治療
-失敗しないインプラント治療のポイント-
第94回例会・特別講演会が開催された。
講師には海外でもご活躍されている菅井敏郎先生をお招きしました。
当会も若手の会員もたくさん入会し、インプラントをこれから初める先生も増えてきました。
そのような中、インプラント治療の診断からハイレベルな治療までをわかりやすく講演頂きました。
以下に事前抄録を記載します。



オッセオインテグレーションの概念に基づいたインプラントの臨床応用が開始されて40年以上が経過し、その臨床成績の高いことからインプラント治療は歯科治療の一分野として確立されてきた。
そのインプラント治療も、毎年のように発表される新たな製品や技術、さらには患者の要求の高まりから、時代とともに大きな変遷を遂げている。

インプラントの開発当初は、治療の目標として咀嚼機能を中心とした口腔機能回復に主眼がおかれていた。
しかしながら今日では、患者のニーズから、より審美性の回復に重点がおかれる傾向にある。
審美性と機能性の両面の回復には、トップダウントリートメントプラニングに基づき、補綴物の形態を予め設計したうえで理想的な位置へのインプラント埋入が求められる。
その理想的なインプラントポジショニングのためには既存の骨への埋入では限界があり、埋入部位確保のためにサイナスリフトやベニアグラフト等の様々な骨造成法が行われている。
近年では、このようなインプラント治療のための骨造成に、再生医療,ティッシュエンジニアリングという新たな医療技術の応用が試みられている。

また、インプラント治療期間の短縮化、即時荷重も、オッセオインテグレーションのために厳守されてきた原則を破る大きな変化である。さらには、最新のデジタル技術を利用したインプラント用シミュレーションソフトや手術支援ツール、コンピュータガイディングシステム等も続々と開発され、インプラント治療をより安全で確実なものへと導く一助となっている。

インプラント治療は、患者の要望の高まりと共に、現在最も発展し続けている歯科医療分野の一つといえるであろう。

今回の講演では、インプラント治療をより安全で確実に行うための診断と手法に関して、最新の知見を網羅しながら解説する。
第93回 日時:平成21年2月22日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演

座長:中島 康先生

講師:勝山英明先生

演題:
Single tooth replacement in esthetic zone
Sinus augmentation
ITIのコンセプトからインプラントの種類や各種術式の変遷について、過去から現在までの考え方を当時の背景を示しながら分かりやすく説明いただきました。

後半は審美領域へのインプラント埋入の注意点をDVDでの実際の手術風景を供覧しながら解説いただきました。審美領域へのインプラント治療を安易に行なう臨床医が少なからず居られるが、過去の臨床例や多くの研究からも審美領域へのインプラントは難症例であり、術前の十分な検査と慎重な治療計画の下に行なわれるべき治療であることを解説いただきました。

臨床現場の最前線で活躍されている先生らしく、常に”患者様”への配慮を重視し、具体的にまた科学的根拠をもとにお話いただきました。
現在”ITI Treatment Guide”の執筆に携わっておられ、そのガイド本の内容の紹介もしていただきました。
若手会員を中心に会場は満員となり有意義な例会でした。
”他の臨床医の出来ないを高度な治療を目指すよりも、多くの若手歯科医が安全で確実なインプラント臨床を行なえるように尽力し、役立ちたい”との言葉が大変印象深く共感を覚えました。
第92回 日時:平成20年11月9日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
第3回症例検討シンポジウム
座長:高田勝彦先生
症例提示: 大阪市開業 阪本 貴司先生
シンポジスト: 宝塚市開業 山野総一郎先生
神戸市開業 長田 卓央先生
招待講演
座長: 久保茂正先生
“耳鼻科医から見たサイナスリフト手術、注意点や考えられる予後などについて”
深澤啓二郎先生 耳鼻咽喉科学会 専門医
インプラントの広がりと共に、他の医院で行われたインプラント構造物を診る事も増えてきました。
今回は過去に行われたインプラント補綴への対処をテーマにディスカッションしました。
臨床歴20年を越えベテラン領域に入られた山野総一郎先生と若手中堅の長田卓央先生にシンポジストとして発表頂きました。

当会らしい白熱した議論が交わされ、診断および治療計画の難しさを再認識させられた検討会でした。

招待講演では耳鼻咽喉科学会専門医の深沢啓二郎先生に耳鼻科医から見たサイナスリフトについて講演頂きました。
上顎洞の基礎的な解剖や生理学的機能、そしてサイナスリフトの術式や使用する補填剤などについて隣接医学的な観点から意見を頂きました。
会員からは質問が途絶えず、サイナスリフトの手技や長期予後がまだまだ明らかにされていない事を認識させられました。
臨床でサイナスリフトを行っている先生にとっては、強い味方が出来たように思える講演会でした。
第91回 日時:平成20年9月7日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演

座長:山田屋孝太郎先生

“ビスフォスフォネートの顎骨壊死について”
米田俊之 大阪大学大学院歯学研究科長 生化学講座教授

招待講演

座長:木村 正先生

“ビスフォスフォネート関連顎骨壊死の臨床像と治療経験について”
田中徳昭先生 兵庫医科大学 歯科口腔外科
日常的に顎骨の手術を行う我々臨床医にとって、BRONJ(bisphosphonate related osteonecrosis of the Jaw)は知っておかねばならない内容であります。
米田先生には臨床家にとっては苦手な基礎的な内容を大変わかりやすく講演頂きました。
まさに目から鱗でした。
また田中先生には実際の臨床におけるエックス線画像や治療方法などについて自身の臨床経験から講演頂きました。

理解して知っていれば、臨床現場でもある程度の対応が可能な事が分かり、大変有意義な講演会でした。
第90回 日時:平成20年5月25日(日) 13:00~15:00
場所:大阪国際会議場 グランキューブ大阪
特別講演 15:00~17:30
座長:佐藤文夫先生
講師:小宮山彌太郎先生
内容:「インプラント療法を再考する」

特別講演には、オッセオインテグレーションの基本理念を日本に初めて導入された小宮山彌太郎先生をお招きし”インプラント治療を再考する”と題して講演いただきました。

講演の中で小宮山先生は、最近の業者主導のインプラントの広まりに対しての問題点を指摘されました。
また新しい術式として紹介されている、ショートインプラントや傾斜埋入などは、30年以上も前にブローネマルク教授らによって試みられている事なども当時の症例のレントゲン写真を供覧して話されました。

術者の自己満足を満たすような発表が最近多く見られるが、インプラント治療は患者主導で進められねばならず、過去においても、これからも基礎研究の基で行われなければならないと述べられました。

本研究会も、業者主導の講演や研修については22年前の発足当時から否定してきました。
インプラント治療は医療であり、医療従事者ではない業者の主導で行なわれるインプラントは、 医療現場ではあってはならないものです。

30年の臨床経験から話された小宮山先生の講演には会場も満席となり、会員にとっても有意義な講演会でありました。
懇親会
場所: 大阪国際会議場12F レストラン“グラントック”
18:00~20:00
第89回 日時:平成20年1月27日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演
座長:佐藤文夫先生
講師:山内六男先生
   “社団法人日本口腔インプラント学会専門医制度について

招待講演
座長:吉田春陽先生
講師:舘村 卓先生
   “摂食燕下障害の実際”

会員発表
座長:阪本貴司先生
演者:寺本修久先生
   “長期経過症例とそれに伴う問題”
第88回 日時:平成19年11月11日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
教育講演
座長:山野総一郎先生
講師:高田勝彦先生
   “インプラントを用いた全顎再構築”

会員発表
座長:阪本貴司先生
演者:佐藤琢也先生
   “Staged Approachにて対応した前歯部一歯欠損症例”

演者:白井敏彦先生
   “上顎中切歯部におけるインプラント治療について”

報告事項
解説者:阪本貴司先生
    “社団法人日本口腔インプラント学会専門医制度の概略”
第87回 日時:平成19年9月2日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演
座長: 藤本佳之先生
講師: 橋口清光先生
“静脈内鎮静について”
会員発表
座長: 阪本貴司先生
演者: 栗本慎治先生
“臼歯部欠損にインプラントを用い咀嚼運動を改善した症例”
演者: 勝 喜久先生
“抜歯後インプラント埋入までの待機期間の差による支持組織の変化に関する考察 ”
演者: 高田勝彦先生
“インプラント(fixture-abutment)接合部間隙のSealing効果についての一考察”
第86回 日時:平成19年5月27日(日)
場所:大阪国際会議場
特別講演
座長: 阿保幸雄先生
講師: 森 克栄先生
“エックス線上の緻密生骨炎の消長について、臨床歯科一般における治療効果からの検討”
第85回 日時:平成19年2月18日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演
座長: 山田屋孝太郎先生
講師: 井川雅子先生
“因不明の歯痛・顔面痛をどう診断するか、歯科大学では教わらなかった「歯痛の原因」
レントゲンで異常がないのになぜ歯に痛みを訴えるのか?”
会員発表
座長: 山田屋孝太郎先生
演者: 阿保淳一先生
木村  正先生
“サイナスリフト時に問題となる上顎洞形態について”
第84回 日時:平成18年11月26日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
第2回 症例検討シンポジウム
座長: 藤本佳之先生
症例提示: 阪本貴司先生
シンポジスト: 白井敏彦先生
西川和章先生
会員発表
演者: 栗本武俊先生
“私がインプラントに期待する機能と健康”
演者: 高田勝彦先生
“上皮下結合組織を用いた根面被覆について”
第83回 日時:平成18年9月3日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
会員発表
座長: 長田卓央先生
演者: 山田屋孝太郎先生
“外傷性歯牙脱臼の1例について”
演者: 吉田春陽先生
“オトガイ部からの自家骨移植をともなった上顎前歯部欠損症例”
演者: 黒田収平先生
“顎大臼歯1歯欠損(中間欠損)にインプラント治療を施した1症例”
演者: 樋口裕一先生
“バーアタッチメントを用いたインプラントによって咀嚼・嚥下が改善した症例”
演者: 西川和章先生
“下顎4前歯欠損部にインプラントを用いて咬合及び審美性の回復を行った1症例”
演者: 中島康雄先生
“Perforation into the Maxillary Antrum from the Alveolar Ridge case report”
第82回 日時:平成18年5月27~28日(日)
場所:ホテルアウィーナ大阪
第82回例会・創立20周年記念例会・第6回日韓学術交流会
特別講演 第1部 第6回日韓学術交流会
講師: 金 鴻基先生
“各種インプラントの臨床的評価及び抜歯即時Flaplessインプラントの実際”
特別講演 第2部 第82回例会・20周年記念例会
講師: 宮本泰和先生
“歯周・審美・インプラント治療における再生療法の応用”
講師: 内藤正裕先生
“前歯修復のポイントと全体像の見方”
第81回 日時:平成18年2月5日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
会員発表
座長: 木村正先生
演者: 川植康史先生
“コーンビームCTの問題点、寸法再現法とMPR(多平面再構築)ソフトの問題点を含めて”
各種CTソフトの紹介
紹介会社:横河マテリアル
“歯科インプラント&外科矯正治療診断支援システム+ナビゲーションシステム、SimPiant+SurgiGuide”
紹介会社:iCAT(アイキャット)、十河基文先生
“大学の研究成果の「社会還元」と「世界への挑戦」、iCATナビゲーションシステムのご紹介”
第80回 日時:平成17年11月6日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
会員発表
座長: 山田屋孝太郎先生
演者: 英保裕和先生
“当院におけるインプラント補綴症例の臨床的検討”
第1回 症例検討シンポジウム
座長: 山田屋孝太郎先生
症例提示1: 阪本貴司先生
シンポジスト: 阿保幸雄先生
症例提示2: 阪本貴司先生
シンポジスト: 高田勝彦先生
症例提示3: 阪本貴司先生
参加会員によるグループディスカッション
各グループ代表者発表
第79回 日時:平成17年9月11日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
歯科用CT各社比較
座長: 木村 正先生
業者発表1: 朝日レントゲン工業
講師: 富永尚宏先生
“包括治療における「歯科用CT装置PRN9000N」の臨床応用”
業者発表2: 日立メディコ株式会社
講師: 江原雄二先生
“歯顎顔面用CT装置の臨床応用”
業者発表3: 株式会社モリタ
講師: 新井嘉則先生
“世界初!歯科用小型X線CT(3DX)開発コンセプト”
業者発表4: 3Dプロダクト
講師: 郷上 勲氏
“CTの三次元画像構築によって得られるRapid Prototyping技術による石膏模型の可能性”
第78回 日時:平成17年5月29日(日)
場所:大阪歯科大学 講義室
特別講演会
座長: 阿保幸雄先生
講師: 船越栄次先生
“最近の歯周治療とインプラント治療の傾向について”
第77回 日時:平成17年3月13日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
招待講演
座長: 阿保幸雄先生
講師: 武田孝之先生
“三次元的診断の効果とリスクについて”
第76回 日時:平成16年11月26日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
会員発表
座長: 高田勝彦先生
演者: 川植康史先生
“歯根膜再生型インプラントの実験的研究”
演者: 西川和章先生
“左右に二回法及び一回法インプラントを埋入した症例の経過とその評価”
演者: 前場一輝先生
“私の臨床”
演者: 岩本浩先生
“インプラントを用いた矯正治療”
第75回 日時:平成16年9月5日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
教育講演
座長: 高田勝彦先生
講師: 山田屋孝太郎先生
“歯周治療にエムドゲインを使用した症例報告”
講師: 阪本貴司先生
“GTRおよびGBRテクニックの基礎と臨床”
会員発表
座長: 高田勝彦先生
演者: 藤森靖史先生
“広汎性早期発症型歯周炎を疑った1症例”
演者: 白井敏彦先生
“上顎におけるインプラント補綴症例”
第74回 日時:平成16年5月23日(日)
場所:ホテルアウィーナ大阪
第4回日韓学術交流会・特別講演会
学術交流会1
座長: 阪本貴司先生
演者: 山野総一郎先生
“部分欠損症例におけるインプラント臨床”
演者: 黒田収平先生
“6種類の金属粉末が骨芽細胞に洋細胞に及ぼす影響”
学術交流会2
座長: 金 鴻基先生
演者: 黄 炅均先生
“予知性の高い外科的インプラント術式の再考”
特別講演1
座長: 西村敏治先生
講師: 坪井陽一先生
“インプラント成功のための治療戦略”
特別講演2
座長: 金 鴻基先生
講師: 金 賢哲先生
“The clinical application of β-TCP in implant surgery”
第73回 日時:平成16年2月8日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
教育講演
座長: 阪本貴司先生
講師: 久保茂正先生
“東洋医学のインプラントへの応用”
会員発表
座長: 阪本貴司先生
演者: 長田卓央先生
“包括的歯科治療を目指して、開業3年目の私日常臨床”
演者: 織辺秀也先生
“私の日常臨床”
演者: 阿保淳一先生
“高齢者の審美領域におけるインプラント埋入症例”
演者: 山野総一郎先生
“部分欠損症例に対するインプラント”
第72回 日時:平成15年11月16日(日)
場所:大阪厚生年金病院2F会議室
教育講演
座長: 山野総一郎先生
講師: 阪本貴司先生
“インプラント埋入後の下歯槽神経麻痺について”
会員発表
座長: 山野総一郎先生
演者: 高田勝彦先生
“だれにでもできるサイナスリフト”
演者: 西村 望先生
“新しいソケットリフト法、Dr.Cosciのドリルシステムの使用経験”
大阪口腔インプラント研究会 記念公演・特別講演
■1986年~2005年
※ドクター敬称略
“インプラントの失敗例から考えられること”
大阪市開業 阪本義樹先生 
第1回研究例会 設立記念講演 S61年5月18日 パーマリー・インホテル
“各種インプラントに関する組織構造組織構造、特に形態材料方面からのアプローチ”
松本歯科大学口腔解剖学第2講座教授 鈴木和夫先生 
特別講演 S61年8月30日 大阪厚生年金病院会議室
“国内外の学会を通じてみたインプラントの現状”
研究会会長 阪本義樹先生
特別講演 S62年5月9日 ホテルサンホワイト
“ハイドロキシアパタイトの理工学的考察と今後の臨床応用”
朝日大学歯学部歯科理工学教室 教授 森脇 豊先生
特別講演 S62年5月9日 ホテルサンホワイト
“歯科医療紛争の実態と予防 ―特にインプラントをめぐって-”
八尾歯科医師会顧問 岡本欣司先生
特別講演 S62年11月29日 大阪厚生年金病院会議室
“骨形成および骨粗鬆症”
大阪大学医学部整形外科講師 高岡邦夫先生
特別講演 S63年2月28日 大阪厚生年金病院会議室
“歯科医インプラントを成功に導くファクター”
岡山大学歯学部口腔病理学講座 教授 永井教之先生
特別講演 S63年5月28日 大阪第一ホテル
“インプラント患者の心理”
立命館大学心理学講座 教授 斉藤稔正先生
特別講演 S63年9月24日 大阪厚生年金病院会議室
“全身状態を知る上での基礎的な臨床検査”
大阪大学歯学部口腔外科第1講座 井上一男先生
特別講演 . S64年3月5日 大阪厚生年金病院会議室
“医療用チタン材料の現状”
株式会社神戸製鋼所技術開発本部主任研究員・工学博士 伊藤喜昌先生
特別講演 平成元年5月28日 大阪梅田レストランパレス
“歯根膜誘導の可能性を求めて”
東京歯科大学病理学第2講座 講師 井上 孝先生
特別講演 平成2年2月25日 大阪厚生年金病院会議室
“補綴から見たインプラントの流れ”
九州大学歯学部補綴学第2講座 教授 末次恒夫先生
特別講演 平成2年6月10日 大阪第一ホテル
“骨膜下インプラントの実際”
大阪開業 阪本義樹先生
特別講演 平成2年9月2日 大阪厚生年金病院会議室
“スミシコン周囲組織の反応について”
松本歯科大学 口腔解剖学教室 教授 鈴木和夫先生
招待講演 平成2年11月25日 大阪厚生年金病院看護学校講義室
“バイオマテリアルとしてのコラーゲン”
株式会社高研・バイオサイエンス研究所所長・北里大学医学部講師 宮田暉夫先生
招待講演 平成3年2月17日 大阪厚生年金病院会議室
“咬合の生理”
大阪大学歯学部口腔生理学講座 森本俊文先生
特別講演 平成4年5月24日 大阪厚生年金病院会議室
“UCLAにおけるOsseointegrated Implant療法の概要”
Advanced Surjical Techniques (Sinus Lift)
顎顔面領域へのインプラントの応用
UCLA歯学部口腔顎顔面インプラントセンター・外科フェロー 菅井敏郎先生
特別講演 平成5年3月14日 大阪厚生年金病院 看護学校講義室
“新しいサイエンスとしての硬組織再建の原理”
北海道大学歯学部生化学教室教授 久保木芳徳先生
特別講演 平成5年5月23日 大阪梅田新阪急ビル12階スカイルーム
“広島大学におけるインプラントの研究と臨床の現状”
広島大学歯学部歯科補綴学第一講座教授 赤川安正先生
特別講演 平成6年5月29日 大阪厚生年金病院会議室
“サイナスリフトについて、種々の材料を用いての臨床成績”
京都大学医学部口腔外科学教室 別所和久先生
特別講演 平成6年12月4日 大阪厚生年金病院会議室
“インプラントにおけるデンタルCTの役割”
(新開発CTスキャナ・ソフトによるインプラント・サイトの輪切り)
昭和大学歯学部歯科放射線学講座教授 岡野友宏先生
特別講演 平成7年2月26日 大阪厚生年金病院会議室
“骨形成、骨再成の制御”
大阪大学医学部整形外科助教授 高岡邦夫先生
特別講演 平成7年5月28日 大阪梅田新阪急ビル12階スカイルーム会議室
“研究会10年を振り返りみて”
大阪口腔インプラント研究会・会長 阪本義樹先生
10周年記念特別講演 平成8年5月18日 大阪国際交流センター
“部分欠損症例におけるペリオ処置とインプラント”
千里ペリオ・インプラントセンター所長 小野善弘先生
10周年記念特別講演 平成8年5月18日 大阪国際交流センター
“インプラントと天然歯との共存、インプラント周囲のミクロコスモス”
東京歯科大学病理学講座助教授 井上 孝先生
10周年記念特別講演 平成8年5月18日 大阪国際交流センター
“部分欠損症例におけるインプラントの効果”
熊本県本渡市開業 中村社綱先生
10周年記念特別講演 平成8年5月18日 大阪国際交流センター
”感染源としてのデンタルプラーク、意義あるデンタルプラークコントロールのために“
大阪大学歯学部保存学教室教授 恵比寿繁之先生
特別講演 平成8年12月8日 大阪厚生年金病院会議室
“インプラントかトランスプラントかの選択基準”
愛知県海部群開業 月星光博先生
特別講演 平成9年5月11日 大阪梅田新阪急ビル
“口腔インプラントの成功の鍵を握る骨の細胞生物学”
大阪大学歯学部生化学講座教授 米田俊之先生
特別講演 平成10年6月28日 大阪梅田新阪急ビル
“インプラントの上部構造”
特にネジの締め付けと弛みについて
大阪大学歯学部付属病院口腔総合診療部 前田芳信先生
招待講演 平成11年2月21日 大阪厚生年金病院会議室
“顎骨をめぐる微小循環”
神奈川歯科大学口腔解剖学教室教授 高橋和人先生
特別講演 平成11年5月16日 大阪厚生年金病院 看護学校講義室
“インプラントにおけるティッシュエンジニアリング材料の応用”
名古屋大学大学院医学研究科 頭頚部・感覚器外科学、顎顔面外科・咀嚼障害制御学教授 上田 実先生
特別講演 平成12年5月14日 大阪梅田新阪急ビル
“インプラント植立のために骨延長を利用したRidge Augmentation”
香川県立中央病院歯科口腔外科 主任部長 三次正春先生
特別講演 平成13年5月27日 大阪梅田新阪急ビル
“塩素生繊維芽細胞増殖因子を用いた歯周組織再生療法について”
大阪大学大学院教授 口腔治療学 村上伸也先生
第2回日韓学術交流会 特別講演? 平成14年5月19日 ホテルアウィーナ大阪 葛城の間
“上下顎骨欠損症例治療及びインプラントの選択”
韓国国際口腔インプラント学士会会長 金 鴻基先生
第2回日韓学術交流会 特別講演? 平成14年5月19日 ホテルアウィーナ大阪 葛城の間
“インプラント治療、歯周再生療法と関連する臨床検査”
大阪大学歯学部付属病院口腔病理診断部 助教授 石田 武先生
招待講演 平成14年9月1日 大阪厚生年金病院会議室
“サイナスリフトの臨床“
藤枝市立総合病院 歯科口腔外科科長 澤 裕一郎先生
招待講演 平成14年12月1日 大阪厚生年金病院会議室
“インプラント植立後の生着固定と上部構造の装着時期(骨と血液の新生からみたアーリーローディング)”
大阪歯科大学解剖学教授 諏訪文彦先生
特別講演 平成15年5月25日 大阪梅田新阪急ビル
“最先端歯周組織再生医療(自己骨髄間葉系幹細胞移植による再生医療)”
広島大学大学院医歯薬学総合研究科 先進医療開発科学講座 歯周病態分野教授 栗原英見先生
招待講演 平成14年9月7日 大阪厚生年金病院会議室